「コロナ危険地」を取材できるか

 暖かく陽気のいい日だった。
 昼、自転車で玉川上水へ。八重桜が強い風で水面に散っていた。まぶしいほどの川沿いの新緑がすばらしい。

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西部砂川駅近くの新家(しんや)橋にて

 玉川上水は、多摩地方に残る貴重な緑地帯である。
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 はじめに23日のブログに訂正。
 東京五輪の延期に伴う追加費用につき、延期の追加費用を、国際オリンピック委員会IOC)が「安倍晋三首相が、現行の契約条件に沿って引き続き日本が負担することに同意した」と明らかにしたとの共同電を紹介し、「安倍首相が『うちが払います』と安請け合いしたという」と書いた。
 ところが、菅官房長官や橋本五輪相が21日、「合意の事実はない」と否定。国際オリンピック委員会(IOC)は21日、公式サイトで「安倍首相が、割り当てられた費用を日本が負担することに合意した」という文言を削除、「IOCと、大会組織委員会を含む日本側が共同で、延期によって生じる影響について評価と議論を進めていく」との考えを示した。
 IOCがサイトで削除している以上、日本側が了承したわけではないと訂正します。
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 26日12時公表の《新型コロナウイルス陽性者数(チャーター便帰国者を除く)とPCR検査実施人数(都道府県別)【1/15~4/25】》https://www.mhlw.go.jp/content/10906000/000625317.pdf

 東京の陽性者2 3,850  検査人数9,827 陽性率 39.2%(なお、医療機関による保険適用での検査人数、チャーター機帰国者、クルーズ船乗客等は含まれていない)
 この東京の統計に、保険適用での検査つまり民間検査機関の検査を加えれば、多少陽性率は落ちるだろうが、それでも世界の他の地域に例のない陽性率だ。
 大阪も陽性率19.6%と非常に高い。陽性者の一日の増加数は横ばいから下降気味だが、分母の検査数が少ないのだから、全く安心できない。
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 今回の新型コロナ禍の最前線、深部を日本のマスメディアは取材していないではないか、との批判を目にする。海外ではもっと突っ込んだ取材をしているというのだ。

 私はテレビ番組制作を廃業した身だが、いろんなところから断片的な情報は入ってくる。
 某民放テレビ局の情報番組のディレクターによると、医療機関はもちろん保健所、患者家族など普通ならメインになる取材対象には接触しないよう指示されており、識者インタビューすらお宅を訪問するのではなくスカイプでやっているので、そもそもカメラを持って外に取材に行く機会が非常に少ないという。

 安全管理、リスク管理から、少なくともテレビ局社員またはテレビ局から番組を受注する制作会社のスタッフは、感染リスクのあるところへの取材は慎むべしということになっている。
 もっとも、岡江久美子さんの遺骨が自宅に戻った時には、明らかに取材班が玄関前に“密集”して取材していたようだが。

 日本のテレビ局は、90年代に入ってから、安全管理を強化して社員または長期契約スタッフを危険地に行かせないようになった。ttps://takase.hatenablog.jp/entry/20150401
 その結果、アフガン戦争、イラク戦争で、スタッフを送っていないテレビ局がフリーランスに立ちレポを依頼するようになり、「戦場ジャーナリスト」を肩書にする人が出てきた。

 日本のメディアの安全管理が国内で問題になったのが東日本大震災で、福島第一原発の近くでフリーランスと海外の取材班が取材しているのに、日本のマスメディアは遠くに避難していたという恥ずかしいことまで起きた。

 だから今回、危ないところには近づくなという指示が出るのは当然に思える。
 たしかに、テレビで病院内にカメラが入っているように見えても、新型コロナの病床などはほとんどないか、病院スタッフがスマホで撮影したものがチラッと出てくるくらいだ。
 
 だからこそ、先週の「情熱大陸」で、本来使い捨てのマスクを再利用のため、紙袋に入れ名前を書いているシーンなどが、リアルな現場の映像として印象に残ったのだ。

 だとすると、イラク戦争のときのように、フリーランスがテレビ局員の代りに危ない現場に突っ込んで活躍する、いまはいいチャンスではないか。

 ところが、そうはなっていないようだ。

 4月18日の「Nスペ」に、フォトジャーナリストの渋谷敦志さんが撮影した病院内の動画が使われていた。病院内映像が他になかったのだろう、同一番組内で何回もリピートされていた。クレジットに「日本赤十字社」とあったので、渋谷さんは日赤チームの記録として病院に入ったのかもしれない。私が目にしたフリーの映像はこれだけだ。

 今難しいのは、中東の戦闘地域や311後の放射能汚染地域の取材とは事情が違っていることだ。津田大介さんがこう指摘している。

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 「オレはコロナに感染してもかまわない」と思っても、放射能やケガは他人に移らないけどコロナは移してしまうのだ。

 それにしても、もっと深いところをえぐる取材はないものか。何か工夫できるような気がするのだが。
 それとも誰か潜行して取材中なのか。おお!と驚くような取材が見たい。
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 誰かに会って取材したり、チームを組んで撮影したりできないとなって、テレビ業界は七転八倒している。名だたる人気番組(サラメシ、ポツンと一軒家、鶴瓶の家族に乾杯などなど)はみな通常の制作ができない。再放送でしのいでいる状態だ。

 そんななか、テレ東の看板番組の一つ、「家、ついて行ってイイですか?」が、《おうちで「家、ついて行ってイイですか?」ごっこ》ができるマニュアルを公開した。
 これは「・・と見せかけて、皆様からVTRを投稿してもらおうという魂胆の企画です」と断っているように、視聴者自身に番組用に撮影してもらおうというのだ。

 このマニュアルがよくできている。

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インタビューのやり方など内容的なマニュアルもプロ向けだ

 そのままプロのディレクターが参考にして取材できる。 

https://www.tv-tokyo.co.jp/home_ii/manual.pdf

 この先、テレビ番組はどうなっていくのだろうか。考えさせられる。