聖火リレー通るところは復興し 

 馬酔木(アセビ)の花を見かけるようになった。

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 食べると馬が酔っ払う木。毒があるので、野生の獣はこれを食べないという。早春の可愛らしい花である。
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 きょうは東日本大震災から9年。
 「死者・行方不明者、関連死を含め2万2167人が犠牲となった東日本大震災から11日で9年となる。全国に散らばる避難者はなお4万7737人。岩手、宮城、福島3県のプレハブ仮設住宅には今も709人が暮らす。沿岸部の人口減少に歯止めがかからず、3県の人口は震災前から30万人以上減った。国が定めた「復興・創生期間」は最後の1年を迎えるが、復興はまだ途上にある。」(朝日新聞1面リード)
 原発事故以来、全町避難が続く双葉町では、JR常磐線の全線開通を前に駅周辺を行き来できるようになった。
 「聖火は列車で町に入り、駅前の真新しい広場を1周半する。少し先には電器店や薬局、学校もある。しかし店員や客、生徒はいない。映画のセットのように建物がたたずむだけだ。」
 町では2年後の住民帰還をめざすが、昨秋の調査では6割超の世帯が「戻らない」と答えたという。
 汚染土などを詰め込んだ保管袋が積み上がる光景は、聖火リレーのコースからは目にはいりづらいという。

 朝日川柳から。

聖火リレー通るところは復興し (東京都 三神玲子)


 パフォーマンスだけの復興に終わらせてはならない。
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 新型コロナウイルス報道で、テレ朝の「モーニングショー」がダントツにがんばっていることはこのブログで指摘したが、この番組に官邸、厚労省自民党ツイッターいちゃもんをつけるという異例の対応をしている。

 《厚生労働省は3月5日、マスクの供給について、感染症指定医療機関などに「優先供給を行った」ことをTwitterで公表した。
 「医療機関におけるマスク不足」について取り上げた3月4日放送の『羽鳥慎一モーニングショー』(テレビ朝日系)で、コメンテーターを務めた岡田晴恵氏が発言したコメントの内容に反応したものとみられる。
 厚生労働省は5日午前、医療機関へのマスクの供給について、情報をTwitterで公表。
同省は「感染症指定医療機関への医療用マスクの優先供給を行ったほか、都道府県の備蓄用マスクの活用や日本医師会日本歯科医師会のルートを活用した優先配布の仕組みをお知らせしています」と説明した。
 その上で、「最終的に全ての医療機関に十分なマスクが届くことが必要であり、引き続き、マスクの増産や全ての医療機関を対象とした優先供給を進めてまいります」と綴っている。
 岡田氏は番組で、「医療機関におけるマスク不足」について取り上げたVTRの後、「まずは医療機関に配らなきゃダメです。ですから皆さん、マスクが欲しいのはごもっともなんですけれど、医療を守らなければ治療ができないから、医療機関、特に呼吸器関係をやっている人に重点的に配っていく(必要がある)」とコメントしていた。
 厚生労働省が、具体的な番組名を挙げて放送内容に言及するのは異例だ。》
https://www.huffingtonpost.jp/entry/story_jp_5e604cffc5b69d641c0a5a4d?ncid=other_huffpostre_pqylmel2bk8&utm_campaign=related_articles

 
 ところが、この「反論」自体が事実と異なっていることが判明した。
 厚労省からの反論を受けて、《「モーニングショー」が全国の感染症指定医療機関に取材したところ、「国からおととい1万枚納入された。十分ではないがありがたい」答えたのは北海道のある機関だけで、「国からマスクは届いていない」(神奈川)、「今のところ優先されている感じはしない。今後支給するという通知もない」(東海地方)と届いていないところがほとんどだった。
 「モーニングショー」がこの取材結果を厚労省にぶつけると、「(ツイッターの)『マスクの優先供給を行った』については言い過ぎた表現。『行っている』『開始した』が正しい」と担当者が釈明した。実際は、マスク配布は一部で始まっただけだったのだ。
 さらに、厚労省は「都道府県の備蓄用マスクの活用や日本医師会日本歯科医師会のルートを活用した優先配布の仕組みをお知らせしています」としていたが、これにも「訂正したい。そんなことは国会でも言ってない。日本医師会などに協力してもらって仕組みを知ってもらいたいという意味で書いた」と回答した。
 玉川徹(テレビ朝日コメンテーター)「『優先供給を行った』は過去形ですから、日本語として普通に読めば、配りましたよということ。これは訂正せざるを得ない。それと、なぜ番組を名指しして、この時期に事実関係を確認もせずにツイッターを出したのか」
 厚労省の担当者が、この重大な時期にこんな言い間違いを連発するとは考えにくい。むしろ、意識的にミスリードしてるのではないか。そうだとしたら、ネットのデマ情報と同じである。
 吉永みち子(エッセイエスト)「厚生労働省の名前で出しているツイッターなのだから、責任ある発信をしなければ信用されなくなりますよ」
 司会の羽鳥慎一「すごく混乱してるんだな、というのは伝わってきますね」》
https://www.j-cast.com/tv/2020/03/06381514.html

 さらに翌日は、法改正の問題でも、モーニングショーへの「反論」がなされた。
内閣官房国際感染症対策調整室は、テレビ朝日系で5日に放送された情報番組「羽鳥慎一モーニングショー」に反論する連続ツイートをした。
立憲民主党などの野党が、現行の新型インフル特措法のままで新型コロナウイルスを適用対象にできると主張。これに対して、安倍首相は現行法では適用できず、法改正が必要だとする立場だ。
 安倍首相が法改正にこだわる理由について、この番組では政治アナリストの伊藤惇夫さんの「“後手後手”批判を払しょくするため総理主導で進んでいるとアピールしたい」という分析を紹介していた。
 この分析に対して、内閣官房では番組を名指しして「法律改正をする理由はそうではありません」と反論した。(略)

 自民党広報の公式Twitterもやはり、5日の「羽鳥慎一モーニングショー」を名指しした上で、ほぼ同じ内容のツイートをした。》


 これに対して『ハフィントンポスト』は、「政府広報の範を完全に逸して、言論弾圧だ」とする弁護士などの意見を紹介したうえで、
 《内閣官房自民党新型コロナウイルスについて「ウイルスとしては未知のものではない」と投稿したが、安倍首相は2月29日の記者会見の中で、新型コロナウイルスについて「未知の部分がたくさんあります」「未知のウイルス」という言葉で説明していた。》と、「反論」には根拠がないとしている。
https://www.huffingtonpost.jp/entry/unknown-virus_jp_5e61eff0c5b691b525f03c1c


 そもそも、法改正には、モーニングショーだけでなく、多くのメディアが疑問を呈していた。
 「政府・自民党内には「現行の特措法でも適用できる」「特措法を使うほどの非常事態ではない」との声もあるが、厚労省関係者は「官邸が法改正したいというので仕方ない」と話す。」(毎日新聞3月5日)
 《旧民主党政権で成立した特措法には対象疾病として「新感染症」も規定されていた。これではなぜダメなのか。以前から言われていたことである。するとこんな「証言」が。
 「与党内からは「いまさら適用するとは言えない。『なぜもっと早く適用しなかったのか』と批判される」(公明党ベテラン)との声も漏れる。」(朝日3月5日)
 こういう証言があるから、次の見立ても出てくる。
 「首相が野党党首に直接、法改正への協力を求めたのは、政権批判をかわす狙いもある。」
 「特措法の改正後、政府は緊急事態を宣言することも視野に入れる。私権制限を含む対応を国民に求めても、野党の協力を得た法律となれば批判を分散できると見ている。」
 上の2つは朝日の論評(5日)だが、こちらも読んでいただきたい。
 「公明党幹部は「実態よりも対策のアピールがねらいだろう」。自民党中堅も「首相が『これをやりました』と言いたいためのもの」と話す。」(朝日3月5日)》
https://bunshun.jp/articles/-/36531

 

 多くのメディアや識者が指摘していることなのに、政府、自民党がことさらにテレ朝の『モーニングショー』に矛先を向けるのはなぜか。
 先日、『報ステ』問題の緊急集会について書いたが、この自民党参院幹事長の世耕氏が『報ステ』にクレームをつけると、テレ朝は簡単に屈し、報道局長が幹事長室に謝罪に訪れ、11日の放送で「お詫び」をするという対応をした。
https://takase.hatenablog.jp/entry/20200213
 「テレ朝では、政権やそれに近いところからクレームが入ると、すぐに平謝りしてしまうということが、このところ常態化している。」
https://lite-ra.com/2019/12/post-5140_2.html

 こういう事情をふまえると、モーニングショーへのイチャモンは気になる動きである。
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 安倍首相は、3月9日から3月末までの中国と韓国からの入国制限を打ち出したが、いくらなんでも遅すぎだろう。


 中国ではもう新型コロナウイルス感染は収まりを見せている。
 中国の保健当局は10日、新たに24人の感染を確認したと発表。中国国内での1日当たりの新たな感染者は、4日連続で50人を下回っている。

 一方、日本では10日、新たに59人の感染者が見つかっている。
 新たな感染者の数で、中国が日本を下回るようになっている。この段階で、今さら「水際作戦」を始めるとは、「後手後手」の見本ではないか。
 早くに中国への入国制限を出せなかったのは、4月上旬に中国の習近平国家主席国賓来日を控えていたから。
 安部首相が、習近平への忖度で防疫対策をないがしろにしたことは記憶しておかねば。