トランプのイラン核合意離脱は誰を益するのか

 1週間ほど前、奥歯が痛くなった。寝られないほどの痛みなのだが、連休で歯医者が閉まっている。誰かが使わずにとっておいたロキソニン(鎮痛剤)を2晩飲んでしのいだ。月曜、朝いちでいった歯医者に「歯周病ですね。このままだと歯がぐらついて次々抜けてきますよ。どれだけブラッシングするかで決まります」と脅され、毎日3回食後に懸命にブラッシングしている。
 野生動物は、老化で歯が抜けて死を迎えると聞いたことがある。とにかく歯は大事だな。
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 米国がイラン核合意から離脱し、対イラン制裁をすべて再発動させることに。トランプがとうとうやってしまった。
 
 イラン核合意から米国が離脱しても、英独仏の3カ国は、合意を維持するという。
 《英国とドイツ、フランスは8日、米国に対し他国のイラン核合意履行を妨害しないよう訴えた。トランプ米大統領の合意離脱表明を受けて3カ国の首脳が電話会談し、共同声明を発表した。

 声明では、トランプ大統領の決定を遺憾とし、核合意への継続的なコミットメントを強調。引き続き完全に履行する姿勢を維持し、責任感を持って行動するようすべての当事国に呼び掛けた。その上で、米国に対し「核合意の枠組みが維持されるよう努めるとともに、他の締結国による完全履行を妨害しないよう求める」と表明した。
 声明ではさらに、イランは核合意に基づく義務を引き続き果たし、国際原子力機関IAEA)の査察に完全に協力する必要があるとし、米国の決定に過剰反応しないよう自制を促した。》(ロイター)
 背景には支持基盤であるキリスト教福音派(親イスラエル)の強力なロビーの存在、そして前大統領オバマの成果を否定したいという強い劣等感もあるのか、それにしてもトランプはバカな決定をしたものである。米国はどんどん国際政治上の信頼を失って影響力を自ら削いでいる。そもそもイランは合意をちゃんと守っているというのが国際的には常識的な見方なのだ。
 国際原子力機関IAEA)の天野之弥事務局長は9日、米国のイラン核合意離脱表明を受け「現時点では、イランは核開発に関する合意を順守している」との声明を出した。
 声明は「IAEAは動向を注視している」と説明。その上で「イランは核合意により、世界でも最も強力な監視体制下に置かれている」として、核合意が有効に機能してきたことを強調した。IAEAは定期的に、イランの合意履行状況を査察している。》(時事)

(2015年7月核合意を喜ぶイラン国民)
 イランが北朝鮮と大きく異なるのは、「世論」が存在し、政治に大きな影響を与えることだ。だからイランには、こっちの水は甘いぞ、と政策誘導が効くのである。米国がイランを敵視する政策をとると、イラン国内では改革派の立場が悪くなり、いわゆる強硬派が力を持つ。
 ロハニ大統領とザリフ外相が、強硬派から「西側への融和姿勢は失敗だった」「アメリカを絶対に信頼してはならない」と激しい攻撃を受けるだろう。国際協調と民主化を指向する改革派の力が奪われれば、緊張がますます高まるということになる。
 
 トランプの決定に連動して、シリア領内で、イスラエルがイランに大規模攻撃を実行した。
 イスラエルリーベルマン国防相は10日、同日の対シリア攻撃を巡り「シリア国内のイランの(軍事)インフラのほぼ全てを攻撃した」と述べた。イスラエル軍によると、攻撃はイランによるロケット弾発射への報復措置。1973年の第4次中東戦争以降、イスラエルによるシリア領内への攻撃で最大規模となったもようだ。
 トランプ米政権によるイラン核合意の離脱表明を受け、離脱支持のイスラエルと反発するイランの緊張が高まっている。直接衝突に発展すれば、中東情勢はさらに不安定になる公算が大きい。》(日経)

 イスラエル米大使館を14日にエルサレムに正式移転することといい、米国の中東政策は非常に危うい事態を招く可能性があり、心配だ。北朝鮮をめぐる情勢よりも、いま中東で進行している事態の方が大きく見るとはるかに深刻である。