「平和」が「人権」を押さえこまないように


 公園の小川のそばにシャガが咲いている。
 これは日本に古くからあるが、中国から入ってきた帰化植物だそうだ。でも学名はIris japonica。アヤメの仲間だという。薄暗いところに生えているので地味な印象だが、花をよく見ると、華麗である。

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 あさっての南北首脳会談、つづく米朝首脳会談が世界の注目を集めている。
 いずれも「歴史的な」と形容していい。南北では、金正恩から韓国への敵対をやめる確約、米朝では、「核放棄」のしっかりした言質をとり、具体的な措置を引き出すのは意味のあることだ。ただ、いくつか押さえておきたいことがある。
 まず、アメリカ側だが、経験ある実務者の支えがないまま、トランプが思いつきで変な「合意」をしてしまわないか。米朝戦争の寸前まで行った1994年危機における当事者の一人、ロバート・ガルーチ元米国務次官補が、今のトランプの性急なやり方を警戒している。
 《南北首脳会談で緊張は緩和し、続く米朝首脳会談では破滅的な結果は避けられるかもしれません。ただ、枠組み合意やイラン核合意がどれほど準備期間をかけたか。短時間でできるものではありません。トランプ大統領には、専門家による事務レベルの準備をすることを切に願っています》(朝日24日)
 ガルーチには私もインタビューしたことがあるが、対北朝鮮交渉の経験のあるバランスのとれた人物だと思う。彼は1993年、北朝鮮が核不拡散条約(NPT)からの脱退を通告した後、北朝鮮と外交で向き合った。彼は北朝鮮との交渉をこうふりかえる。
 1994年、北朝鮮IAEAに提供した情報と査察結果が異なることが発覚。北朝鮮IAEAによる査察を拒否し、プルトニウムの抽出につながる実験用原子炉の核燃料棒交換に着手し、核開発の疑惑が高まった。
 米国は北朝鮮との協議を打ち切り、制裁の検討にはいる。北朝鮮に「軍事行動も辞さない」と警告し、朝鮮半島への米軍の増派の検討を始めた。クリントン大統領は、北朝鮮の核開発を阻止するために寧辺(ヨンビョン)の核施設への空爆準備をするよう命じた。戦争になりうる最も危険な状況だった。
 大統領や高官と作戦について協議していたら、訪朝していたカーター元大統領から金日成主席が、核開発を凍結する意向があるとの電話が入る。クリントン北朝鮮が新たな燃料棒交換などをしないことを条件に高官協議の再開を決定。北朝鮮が核開発を凍結する代わりに軽水炉を供与する枠組み合意につながった。
 ところが、2002年、北朝鮮が新たな核開発(ウラン型)をしていることが発覚し、枠組み合意は崩壊。我々を騙したのだった。ガルーチは「私は北朝鮮を信じたことはありません。核開発計画の放棄に同意することはありえないと思ったからです」という。

 金正恩は、核実験場を廃棄することと中長距離弾は発射しないことを言っているだけで、核兵器の廃棄や日本を射程におくノドンなどすでに実戦配備されたミサイルには言及していない。トランプはもともとアメリカ・ファーストだから、これで十分と思うかもしれない。
 そして、何よりも北朝鮮が人民の自由を全く顧みない全体主義体制のままであることを忘れないようにしたい。今も20万人ともいわれる人びとが人権のひとかけらもない「管理所」(政治犯収容所)に入れられ、その劣悪な環境から毎年1万人が死亡しているという。北朝鮮との戦争がなければそれでいい、というわけにはいかない。我われが進める道は、今の体制を温存することになってはならない。
 融和ムードを演出する一方で、『労働新聞』は「資本主義社会の小説、映画、音楽、舞踏、美術は、腐り果てたブルジョア生活様式を流布させる」(4月1日)、また「自主意識、闘争精神をまひさせる帝国主義の思想・文化的浸透は、軍事的攻撃よりも危険だ」(6日)と論評し、国内での締め付けを一段と強めている。