オバマ訪日の報道に違和感

takase222014-04-29

 24日(木)から2泊で富山、石川に行ってきた。
 かみさんの両親が富山出身で北陸に親戚が多い。今回は母を連れて、十数年ぶりに親戚挨拶と墓参りをしてきた。
素晴らしい晴天で、羽田から富山に向かう機内の窓からは、雪を被った美しい立山連峰を望むことができた。黒部ダムが見えたし、かみさんは「雪の大谷」を確認したという。
富山は海産物のうまいところだ。なにせ富山空港はいま「富山きときと空港」という名前になっているくらいだ。「きときと」というのは、富山の言葉で、海産物などが新鮮で活きがいいという意味。夜、海の幸を肴に銘酒「立山」をのんで親戚と交歓した。
いい旅だった。
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ちょうどオバマ大統領が訪日していた時期だった。
この訪日をどう評価するか。主要メディアでもかなり割れた。
例えば、オバマが最も成果を期待していたと言われるTPPについて、
読売新聞と朝日新聞の一面に《日米TPP基本合意》と《TPP大筋合意見送り》とほぼ正反対の大見出しが載った。
こういうのを見ると、メディアの責任は大きいとあらためて感じる。
共同声明や記者会見の質疑などいちいち読まない普通の忙しい人々に「要するに、こうですよ」と噛み砕いてニュースを提供するのがメディアの重要な役割だと思う。それによって人々の感想、意見が形作られ、世論ができていく。

尖閣は安保対象」とオバマが言ったことを、日本にとって最も大きな成果だと多くのメディアが報じていた。
これにはやや違和感を感じた。大統領が尖閣問題に関して明言することの意味はたしかにあるが、オバマ発言の内容はどうか。
記者会見ではこう言っている。

《日本の安全保障に対する米国の条約上のコミットメントは絶対的であり、(日米安保条約)第5条は、尖閣諸島を含む日本の施政権下にあるすべての領域を対象にしている。
米国は尖閣諸島についての最終的な主権帰属の決定に関する立場を取らないが、歴史的に尖閣諸島は日本の施政権下にあり、米国はこれが一方的に変更されるべきではないと考える。
これは新しい立場ではなく、一貫した立場である。米国の立場に変更はない。「レッドライン」(超えてはならない一線)が引かれてはいない。米国は単に条約を適用しているだけである。
同時に、私が安倍首相に直接伝えたように、この問題をめぐって、日中間で、対話や信頼醸成措置ではなく、エスカレーションが続くことは重大な誤りである。米国はこれを外交的に促進するために可能なあらゆることをするつもりである。》

日米安保は日本の施政権下にある領域をカバーするが、尖閣諸島の領有権については米国は立場を取らない。これは、米国のこれまでの公式見解を踏襲しただけではないか。
また、尖閣諸島で米国が武力行使をする「一線」は引かないという。つまり、「中国がこれをしたら許さないぞ」ということは言っていないのである。
さらに、中国に対してではなく「日中間で」緊張のエスカレーションを続けるのは重大な誤り(profound mistake)だと言っているのは、安倍首相に強くクギをさしていると読むのが自然だ。
安倍首相はしきりに「バラク」とファーストネームを連発して盟友関係をアピールしていたが、同床異夢の感がする。

ただ、メディアの報じ方もあって「アメリカが守ってくれるんだ」という依存感が国民に広がっている気配がある。また、オバマ拉致被害者家族に面会したこともオバマへの期待を高めた。
この結果、日米共同声明で、
「米国は、集団的自衛権の行使に関する事項について日本が検討を行っていることを歓迎し、支持する」とあることが、今後の「集団的自衛権論議に影響を与えそうだ。
この点が気がかりである。