サッカー選手が内戦を止めた国

takase222014-06-15

きょうは「父の日」ということで、久しぶりにかみさんと二人の娘とそろって夕食をとる。
娘にもらったのが、写真の花(ヒマワリとバラ)と好物のカリントウ。ありがたい。誕生日を含めてこういうお祝いがあると、これで最後かなといつも思う。一日一日を大事にしたい。
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ワールドカップの第一試合で日本は負けてしまった。
かつて象牙海岸と呼ばれていたコートジボワールのサッカーがこんなに強いとは知らなかった。
ある番組で、この国のサッカーの選手(ドログバ)が内戦をやめて選挙をしようと訴えている映像を観て興味をもち、ネット検索したら、こんな情報があった。

コートジボワールでは2002年、与野党政治家や軍部が入り乱れる権力争いから内戦が勃発し、政府派の南部と反政府派の北部に分裂。北部の住民は真の国民(Ivoirité=イヴォワリテ)ではないなどという南部の政府派がまき散らす分断の思想に反発して、南部出身のドログバが、みんな同じ「Drogbacité=ドログバシテ」なのだと主張する運動を開始。「Elephants(象たち)」と呼ばれる代表チームとチームカラーのオレンジは、南部出身者も北部出身者もひとつになって戦う国民融和のシンボルとなりました。そして2005年10月、06年ドイツ大会の本大会進出を決めた試合の後、マイクを手にしたドログバは、更衣室でチーム全員と一緒に、生中継のテレビカメラに向かってひざまずき、内戦をやめるよう訴えたのです。
カメラに向かってドログバは、「コートジボワール市民の皆さん、北部出身の、南部の、中部の、そして西部出身の皆さん、私たちはこうやってひざまずき皆さんに懇願します。許し合ってください。コートジボワールほどの偉大な国がいつまでも混乱し続けるわけにはいきません。武器を置いて、選挙を実施してください。そうすれば全てが良くなります」と訴えた。そして(もちろんこれだけが理由ではありませんが)これが大きなきっかけとなって、1週間以内に戦闘が止まったのです。
さらに2007年6月、アフリカ選手権予選の対マダガスカル戦は当初、南部アビジャンで予定されていたが、ドログバ自らが大統領に直訴し、北部にある反政府軍の拠点ブアケでの開催に変更。南部出身者でしめられていた政府首脳も、敵対する北部の街を訪れ、出身地に関係なく「コートジボワール」を応援し、そしてドログバたちはマダガスカルを5-0で下した。
『インディペンデント』紙に、反政府軍「新勢力」(FN)の元指揮官は「ドログバにそんなことができるとは思ってもいなかった。しかし彼の行動のおかげで、国は再統一への道を前に進んだんだ」と話しています。》http://news.goo.ne.jp/article/gooeditor/sports/gooeditor-20100610-01.html
 このエピソードがどこまで本当かわからないが、この国でのサッカー選手の影響力は大変なものらしい。
 Wikipediaの「ディディエ・ドログバ」には、
《2011年6月に、2010年コートジボワール危機以降混迷が続くコートジボワールの和平を進める11人の特別委員の1人として政府に選出された》とある。

こういう事情を知ると、コートジボワールに勝たせたくなった。
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さて、きのうの続き。

集団的自衛権の行使容認に賛成の人々は、条件付きを含めれば多数派となる。
賛成の理由として、北朝鮮や中国との関係で「いざ」というときに、アメリカにしっかり後ろ盾になってくれるから、というのがあると思う。

南シナ海の島々を有無を言わさずに争奪する中国の仕業を見れば、すでに危ない事態が日常化している尖閣周辺でも「何か」が起きる現実的可能性がある。
だとすれば、集団的自衛権行使容認は、アメリカとのギブアンドテイクの日本側の「ギブ」として、あるいはアメリカの後ろ盾の「担保」として仕方がないだろうと。

安倍首相も、日米同盟関係を強くするためにこの問題を提起しているという姿勢をしきりに強調している。
しかし、本当にそうなのだろうか。

安倍首相は4月のオバマとの東京での首脳会談を最大限利用し、盟友関係を演出したが、オバマはむしろ安倍首相の一連の言動に不信感を持っており「同床異夢」ではないかとこの日記で書いた。
http://d.hatena.ne.jp/takase22/20140429
そして、日米安保尖閣諸島をカバーするとオバマが会見で表明し、日米共同声明に「米国は、集団的自衛権の行使に関する事項について日本が検討を行っていることを歓迎し、支持する」と書かれたことが、今後の議論に影響を与えそうだと危惧した。
実際、このあと、安倍首相はお墨付きを得たとばかりに、集団的自衛権行使容認へと突き進んできたのだった。オバマの「尖閣発言」がセットになって世論にアピールしたことは間違いない。
しかし、オバマがそもそも今の安倍首相の政治姿勢と手法を歓迎しているのか、はたして集団的自衛権行使容認をすぐに進めるべきだと考えているのか、疑問に思う。

去年2月に安倍首相が訪米しての首脳会談では、オバマはこの問題に難色を示していた。
《日本の集団的自衛権行使容認へのオバマ米大統領の支持表明は「中国を刺激する懸念がある」として難色を示していることが1日、分かった。複数の日米関係筋が明らかにした。会談で大統領の支持を得て、同盟強化を内外にアピールしたい安倍晋三首相が会談に向けた戦略練り直しを迫られるのは必至の情勢だ。
 関係筋によると、日本政府は同日までに、東京とワシントンの外交ルートを通じ、集団的自衛権の行使を可能とするため憲法解釈見直しを目指す首相の姿勢への理解と協力を米側に打診。》(2013年2月2日共同)
http://www.47news.jp/CN/201302/CN2013020101002316.html
集団的自衛権行使容認は、安倍首相がやりたいので支持してくださいと米側に頼み込んだがオバマはやめといたほうがいいよと言ったというのだ。
アメリカが日本に要請しているかのようにイメージしている人も多いが、そうではなさそうなのだ。
では、今回の首脳会談では、なぜオバマは「歓迎し支持する」と表明したのか。
(つづく)