李明博大統領の毅然

李明博大統領の演説はとてもよかった。
ネットで全文を読んだが、内容が冷静かつ毅然としたものだったし、戦争記念館という舞台を選んだのも効果的だった。
《我々は哨戒艦事件を通じてもう1度、つらい教訓を得た。世界で最も好戦的な集団と対峙している現実を忘れていた。我々の軍も間違いがあったということを認めざるをえない。
 政府は今回の事態を契機に安保体制を確実に構築する。軍の紀綱を再確立し、軍の改革の速度を上げる。軍の戦力を画期的に強化する。韓米同盟に基づいて、韓米連合防衛体制をなお一層固める。
 我々国民の安保意識もよりしっかりさせるべきだ。北朝鮮のどんな脅威と挑発、そして絶え間ない分裂の画策にも我々は決して揺れてはいけない。国家安保の前で我々は1つになるべきだ》
軍艦を潜水艦で魚雷攻撃し、沈没させて46名を殺したという公然たる戦争行為である。韓国だけでなく、我が日本もこの「世界で最も好戦的な集団」と対峙しているということを改めて自覚したい。安全保障とは、軍事力や防衛スキームの問題の前に、国民の覚悟に依拠するものだと思う。
毎日新聞(21日)の一面の大見出しは《「瀬戸際」過激化》だった。しかし、今回の事件は、いわゆる「瀬戸際外交」によって、外の世界から何かを得るために北朝鮮がしでかしたのではない。
一方で、金正日は権力の座をキープすることを目的にしているとか、ロイヤルファミリーが贅沢三昧できることを目指していると見る向きがいまだにある。
もしそうなら、飴でも与えてしゃぶらせておけば大人しくしているだろうと思い、北朝鮮の危険な体質に警戒することを忘れてしまう。
韓国が自軍がたるんでいたことを反省しているが、この教訓は日本にとって他人事ではない。
李大統領は北朝鮮をこう表現した。
《60年前と今と少しも変わっていない。依然として対南赤化統一の夢に縛られ、脅迫とテロを行いながら、分裂と葛藤を絶え間なく助長している》
さすがに韓国の大統領は、北朝鮮の体制が「赤化統一」を本気で追及していることをわきまえている。先日の繰り返しになるが、北朝鮮のこの本質を見誤ってはならない。
調査結果が発表された後の21日(金)の新聞社説をあらためて読んでみる。結論部分だけ抜き出すと;
毎日:6カ国協議の進展が一時困難になろうとも、まず確固たる共同対処で北朝鮮の行動を変えさせる必要がある
産経:6カ国協議の再開よりも事件への対応を優先する必要がある。北に見返りを与える形で復帰を促すべきではない
日経:責任をあいまいにしたまま、何事もなかったように6カ国協議の再開努力を続けるのは無理がある
以上は順当なところだが、
朝日:朝鮮半島の緊張をいたずらに高めない
読売:日本としては、6か国協議の早期再開の道を探る必要がある
となると、首をかしげてしまう。「緊張をいたずらに高め」ているのは北朝鮮ではないのか。また、戦争行為の責任を取らせないで6カ国協議を開くことにどんな意味があるのか。
北朝鮮のどんな脅威と挑発にも決して揺れてはいけない》という大統領の言葉は日本人こそがよく咀嚼しなければならないようだ。