時差ぼけのち天安門

takase222009-06-02

今回、はじめて世界一周チケットというものを使った。日本−(ドイツ)−テヘラン−(ドイツ)−米国東海岸−日本とぐるりと地球を回り、かなり値段を下げられる。
遠いところの出張から帰ってくると、かならず「時差ぼけで大変でしょう」と気づかわれる。「ええ、まあ」などとあいまいに答えているが、実は私は「時差ぼけ」というのが今だによく分らない。眠たくなるらしいのだが、私は普通のときでも、年がら年中眠たい。いつもボーっとしているので、どこからが時差ぼけなのか判然としないのだ。
これと関係あるのかどうか知らないが、私はカフェインというものの効果が分らない。知り合いに、夜、眠れなくなるので、昼すぎからはコーヒーもお茶も一切飲まないという人がいる。寝る直前にコーヒーをがぶ飲みしても眠ってしまう私には羨ましい。「さあ、コーヒー飲んで眼をさまして、もうひとがんばりするか!」という掛け声を聞くと、疎外感さえ感じる。
外界からの刺激に体がきちんと対応していないというのは、動物として失格なのかもしれない。
さて、出張取材から帰ると、どういう番組にするのかという打ち合わせになる。こんどの日曜の放送にむけ、テレビ局で徹夜だった。こうなると、普段の眠気+時差ぼけ+徹夜の眠気となって、ますます時差ぼけなどどこにあるのか分らなくなる。
早朝、テレビ局から会社に帰って何か食べるものを買いにコンビニへ。コンビニの品揃えには世の中の流行り廃りが出ていて面白い。ラーメンのカップ麺がここ数年「濃厚」「こってり」系の脂ぎったものに席巻されていて困っていたが、スープ春雨やフォー(ベトナムビーフン)の種類がどんどん増えて助かっている。ヌードルが「こってり」と「あっさり」に二極分化している印象がある。きょうは、エースコックの「はるさめヌードル・シーフード」にする。
ガムのコーナーが、出張前とは一変しているのに気がついた。突然、果物味の戦争になっているではないか。
シークワサー、グレープフルーツ、グレープと華やかな色合いで目立つのは明治製菓。市場を圧倒するロッテもフルーツガムをそろえた。面白いのはグリコ。「スクイーズ」の商品名で「搾り果汁ガム」を出している。ガムに果汁を19%入れて、しかもキシリトールだ。レモン味を買ってみた。うまい。味もそこそこ持続する。合格。
日本ほど激しい商品競争を繰り広げる国はないと思う。一ヶ月経つと、おにぎりのコーナでも確実に変化が起きている。
朝刊が来たのでながめると、どこもGMの話。天安門事件(6月4日)30周年関連記事がちらほら出ている。面白いのは「産経新聞」で、解禁された米国の秘密文書の概要を紹介している。これはスクープと言っていいだろう。
現地語のできる米国大使館員が事件を目撃した証言を本国に送ったものだ。
《目撃した報告者はとくに長安街での2度にわたる軍による銃撃を「大虐殺」あるいは「2回の虐殺」と特徴づけ、流血の惨事はすべて人民解放軍による非武装の学生や一般民衆、民主主義活動家の一方的な殺害行為だと総括している。目撃証言は同じ6月4日に公電としてまとめられ、リリー大使の名により秘密扱いで本国に送られた。》(ワシントン=古森義久
当時の米国大使はジェームズ・リリー氏で、私は彼に北朝鮮問題でインタビューしたことがある。文書の概要にはこうある。
《装甲車の車輪に向け、群集は大きなコンクリート片を投げつけ、停止させた。怒った群集は装甲車を取り囲み、古い木材を積み重ねて火を放った。数分後、車の扉が開き、兵士が1人、飛び出した。群集は彼を捕まえて殴り、殺してしまった。(略)
 2時9分。毛沢東主席の肖像画の前に並んだ将兵と装甲車隊は長安街の大群衆に対し発砲した。群集は東の北京飯店の方向へと、どっと避難した。多数の人間が銃弾を浴びて倒れ、苦痛の悲鳴が起きた。報告者に向かって「なんとかしてくれ! あなたがた外国人に助けて欲しい!」と叫んだ男は次の瞬間、額の真ん中に銃弾を受けて倒れた。》
この政権はその後、どこがどう変わったのか、変わらないのか、我々はこれを見きわめて中国とつきあわなければならない。