周庭さん香港の闘いを語る3~香港の良さを守りたい

 ゆうべは雲に隠れて見えなかった中秋の名月。今夜はくっきりと美しい。
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 5歳児の1日の唾液生産量をユニークな実験により500mlと推定した日本人がイグ・ノーベル賞を受賞した。こういうニュースはうれしい。

 《人々を笑わせ、考えさせた研究に贈られる「イグ・ノーベル賞」の授賞式が12日(日本時間13日)、米ハーバード大であった。自身の息子の協力も得て、子どもの唾液の量を推定した明海大(千葉県浦安市)の渡部(わたなべ)茂教授(68)が化学賞に選ばれた。日本人の受賞は13年連続。》(朝日新聞

 その一方で・・
 《日本の大学の理系論文数が、政府による研究予算の抑制や競争原理拡大と軌を一にして2000年ごろから伸びが止まり、20年近く頭打ちの状態になっていることが分かった。世界では米国や中国の論文数が飛躍的に伸びており、質の高い論文数を示す国別世界ランキングで日本は00年の4位から16年は11位に低下。研究活性化策として導入した競争原理の拡大が奏功しなかった形で、政策に疑問の声も出ている。》東京新聞8日)

 日本のノーベル賞受賞者たちも、政府の学術政策が日本の研究機関や研究者をだめにしているとこぞって非難している。、科学研究の分野での日本の凋落はなんとか食い止めたい。
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 きのう紹介した部分では、周庭さんは「デモが暴力的になったことには警察と政府が責任がある」と語っていたが、それはどういうことか。

 

Q:周庭さんは、いろいろ弁護士と相談したと思いますけど、どういう風に生きていきますか?

 そうですね、すごい難しい質問がきてましたけど。私はもちろんこの運動に参加していきますし、5つの要求を私たち、私にとってもすごく重要だと思いますね。
例えば他の国、日本だったら政治に興味があったら立候補するとか色んな方法があるかもしれませんけど、私は去年立候補しようとしていたんですけれども、立候補の資格まで取り消されましたので政府に。だから今はこの香港の政治システムの中にも、私も政治参加ができる方法がもう残っていないくらいなりましたので、だからやっぱりこれからも街で香港の、私たち香港人の未来、香港の民主主義のために戦っていきたいと思います。

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催涙弾や放水よけの傘をさしながら政府本庁舎ににじり寄る若者たち

Q:集会に参加した人から聞いたんですけど、こういう運動が起きて自分がやっぱり香港人だと非常に強く意識して、自分の故郷というか「私の香港」っていう意識が強くなったと。

 はい。香港人というアイデンティティは、私にとってすごく重要だと思います。今回の運動の中にも、いろんな例えば香港人がんばれみたいなスローガンもみんな叫んでいましたし、やっぱり香港人だから、私たち香港人としての誇りを持っていますから、香港はこれからもっと良い場所になるために今一生懸命戦っていると思いますね。


Q:香港人だなって自覚は、闘ってから出てきましたか?

 そうですね、特にいろんなデモや集会の現場に行って参加してたくさんの香港人の暖かい雰囲気とか暖かい香港人たくさん会いましたので、だからやっぱりみんな同じく香港人だから、ちゃんと自分の家を守りたいという気持ちがますます強くなりました。

Q:その「自分の家」というのは、中国が入ってくると変わっちゃうってこと?
 そうですね、中国が入ってくると変わっちゃうというよりは、もともと「一国二制度」という約束がありますので。今逆に中国政府はこの約束を守っていない、そして中国はもともと民主社会ではない。法治社会とも言えないので、だから中国が香港へのコントロールが強まっていくと、香港のもともとの良さ、いわゆる自由と公平な法律制度とか安全とか全部なくなると思いますね。

 

Q:香港の良さっていうのを、だんだんみんな自覚してきている?
 そうですね、もともと香港は国際金融都市として世界中にすごく有名なんですけど、この国際金融都市なのに民主主義のないというのもそもそもおかしいかなと思いますね。

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ごく普通の女子大生の一面も(彼女のインスタグラムより)

Q:逮捕されて保釈されたとき、やっぱり怖いって気持はお持ちなんじゃないかなって、勝手に想像したんですけど?
 そうですね、「雨傘運動」の時に逮捕されることは怖いなとか、収監されることは怖いなとか、考えたことはありましたけど、今は逆に逮捕されることに対しても、収監されることに対してもあんまり怖くないです。
 私にとって、そしてたくさんのデモに参加している人にとって一番怖いというのは、殺されることですね。だから今警察の暴力もエスカレートしていて、銃も脚に向けるでなく頭に向けて銃を使うことになりましたので、目を失った子もいましたし、だからいつか命が失ったんじゃないかなとか、そういう恐怖が確かにありますね。
 そしてまあ私は逮捕されたときは大丈夫だったんですけども、たくさんのデモ隊の人たちが逮捕されてから、例えば警察署で、そして警察の車の中に警察にそういう暴力的な対応をされたり、あとセクハラされたり、そういうことがありましたので、やっぱりそうですね、恐怖感があります。でもそういう恐怖感がますます強まっているからこそ私たちは戦わないといけないと思いますね。

Q:香港ではすでに何人の若い人が自ら命を絶ったそうですが、それを知ったときに、どういう気持ちだったんですか?。
 そうですね、悲しいですね。6月からも少なくとも6人の仲間たちが自殺という方法で命を失ったんですけれども、なぜ香港はこんなに絶望的な場所になったのかって香港人としてはすごく悲しいです。

Q:命を絶った、自殺をした人たちの気持ち、どうして彼らは自殺したのか
 そうですね、やっぱりすごく絶望だったんじゃないかなと思います。香港政府はなかなか私たち香港人の意見を聞かないし、どんだけ頑張っても。キャリーラムも北京政府もすごくはっきり言いました。5つの要求は聞こえないじゃなく納得しないということもはっきり、キャリーラムが言いましたので、なぜ香港人はこんなに頑張って戦っているのに政府は、そして良くないことをしている人たち、警察を含めて、なぜまだこういう権力乱用や、民意を尊重しないことはできるなんだろって色んな絶望的な気持ちがあります。

Q:抗議して自殺した?
 はい。

Q:そこまで追い詰められる、よほど強い意思があった?
 そうですね、やはり自殺した仲間がいるからこそ、そしてたくさん怪我をした仲間がいっぱいいたからこそ、私たちにとってもっと強い意志を持ってそういう人たちの代わりに、もっと頑張らなきゃいけないという気持ちがますます強くなりました。

Q:今回逮捕されたということは、あなたに対する最大の暴力だと思いませんか?
 私にとって最大の暴力はもちろん警察の暴力も大きいなんですけど、最大の暴力というのは香港のシステム、そして香港政府の姿の見えない暴力だと思います。
 例えば香港は民主主義じゃないとさっきも言いましたけど、実はこの20年間香港人は一生懸命、民主主義のためにいろいろ戦っていきましたけど、なかなか民意が尊重されていなくて、そしてそういう政党、システム的な弾圧がすごく多かったと思います。例えば私たちの政治システムはすごく不民主なので、だから政治システムもともと本当の民意を代表するができない。なので、こういうシステム的な弾圧、システムの暴力は一番大きいだと思います。

周庭さん香港の闘いを語る2(暴力の責任は)

 トランプ大統領は10日、「狂犬」と言われたボルトン大統領補佐官(国家安全保障問題担当)をクビにし、翌11日、ボルトン氏について、北朝鮮政策で大きな失策があったと批判した。(ロイター)
 金正恩をやたらと持ち上げているこ最近のトランプ大統領を見ていると、北朝鮮に対して無原則な妥協を重ねないか心配になる。ボルトン氏を私はインタビューしたことがあり、すぐに武力行使を(とくにイランに)口にする強硬派ぶりには辟易したが、今の米国の戦略なき外交のストッパーになっていた。トランプ氏が暴走しないといいが。


日韓を嗤(わら)うが如く飛翔体 (兵庫県 横山閲治郎)
ひたすらに祈りの中の拉致家族 (福岡県 河原公輔) 朝日川柳11日


 今の朝鮮半島情勢のなかで、拉致問題は忘れ去られてしまったかのようだ。
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 周庭さんは、15歳の若さで愛国教育に反対する運動に飛び込んだ。そして・・

周庭さん:私たち愛国教育に反対する運動は、集会もデモも何回もやりました。最大12万人の抗議デモがありました。そのあとで、政府が愛国教育はしばらくやらないという決定がありました。

Q:勝利したんですか。
 完全な勝利と言えないと思いますが、今政府も色んな他の方法で愛国教育の内容をやろうとしていましたが、確かに結果のある運動だったと思います。

Q:やはり戦うとちゃんと結果があるんだなと体験したという感じ?
 そうですね。やはり、私が初めて参加した社会運動は愛国教育に反対する運動なので、愛国教育の運動もちゃんと結果を残す運動なので。だから、もちろん社会運動を成功させることはすごく難しいことだと分かっていますが、ちゃんと戦わないとダメだなと、反抗しないとダメだなとわかりました。

Q:あなたが15歳でそういう運動始めた時に、周りのお友達は?
 そうですね。周りの友達そんなに政治に興味がない子も多かったんですが、愛国教育運動一番ピークの時期の時に、私のクラスメイトとかも、黒いリボン、あの時運動の象徴の一つは黒いリボンなんですが、黒色のカバンにつけたりしましたので、だから社会運動は人の心を変える力があるんだってすごい感じられました。

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レノンウォールに立つ周庭さん

Q:今ちょっと思い出したんですが、皆さん黒いシャツ着てるのそこからきてるんですか?
 いえいえ。色んな運動がありましたけど、一つ一つの運動も象徴するものや色とかロゴとかあります。

Q:そうすると色んな人達、グループがいるってことなんですね?一つじゃなくて。

 そうですね。色んな組織や団体もいました。

Q:周庭さんだけじゃなくて、こんなに長いこと、たくさんの人が戦うのはどうしてなんでしょう?
 そうですね。まずは香港はもちろん社会問題もおおいし、そして民主主義がないんですね。でも香港は民主主義の制度がないんですけど、システムはないんですけど、香港市民は民主の重要さがすごく分かっていると思います。
 だから、一生懸命戦っていると思いますし、特にもともと香港には一国二制度という北京の約束があります。その一国二制度を私たちの基本法というミニ憲法の中に書いてありましたので。今、北京政府はその約束を守らず、自ら香港の自治一国二制度のシステムを破壊しようとしていましたので、私たち香港人がもともと持っている権利や自由もどんどん弾圧されていますし、民主主義もなかなかこないし、だからたくさんの市民が私たちの権利、私たちの未来、私たちの次の世代の人たちのためにちゃんと街に出て戦わないといけないなとそういう思いがありましたね。

Q:「自由」というスローガンをたくさん見るんですけど
 自由と民主主義と人権は私たちにとってもすごく大事だなと思います。

Q:いま自由とか人権が危ないなと思うような具体的な事例ありますか?
 たくさんあると思いますね。まずは例えば、中国は全人代というものがありますが、全人代もともと香港のシステムにあるものではなく、中国のもの、中国の国会みたいなものなんですけれども、でも全人代が、例えば法解釈、私たちの基本法を再解釈する権力をよく使って、私たちの基本法の内容を変えようとしていました。法解釈も何回も何回も行ったことがありまして、例えば2016年の時に法解釈から私たち6名の立法会議員が資格を取り消されたというものがあります。(注)
 日本には民主主義のある国なので、例えば、国会議員の資格が政府に取り消されたということは、なかなかたぶん日本人は想像できないと思いますけど、香港はまさにこんなおかしなことが起きているので、しかも毎日起きているので、だからみんな怒りますね。
(注)2016年の立法会選挙で当選した議員のうち、反中国色の強い6人が議員資格を剥奪された。また、去年3月の立法会補欠選挙への周庭さんの立候補は無効とされた。このインタビューの翌日の9月2日、香港の高等法院(高裁に相当)は周庭さんの立法会補選への立候補を無効とした選挙管理委員会の手続きについて「不適切」とする判断を下している。

Q:ある本屋さんで問題が起きた事件もありました。
 そうですね、2015年の時に中国共産党を評論する、批判する本を売っている本屋さん銅鑼湾書店の人たちが、香港含めていろんな場所から中国大陸に捕まえられました。それはすごくおかしいですね。
 もともと中国の警察や中国共産党の人が香港や違う国で直接人を捕まる権力を持っていないので、だからそのことに関してもやっぱり香港市民はもちろん怒っていましたし、そして恐怖感がすごくありましたね、2015年の時に。いつか私たち中国が好きじゃないことやれば、いつか中国に誘拐されるんじゃないかなとか、こういう恐怖感があの時すごいありました。
(注)この銅鑼湾書店事件については後日特集します。

Q:それは今回の逃亡犯条例にも関係していますか?
 今回もともと逃亡犯条例の改正をみんな反対していた、改正が可決されたら銅鑼湾書店みたいな事件が合法的になってしまうということになるかと思いますね。でも今この運動も単純に改正案に反対する運動じゃなく、私たち5つの要求というのを求めています。

Q:じゃあ運動が逃亡犯条例から始まってるけども、もっと大きな要求になっている?
 はい、もともとは単純に改正案に反対する運動だったんですけども、でも運動の中で警察からの暴力はますますエスカレートしていて、だから警察の暴力、警察の行為に対して外部調査を行う必要があるという要求もあるし、今香港政府側が外部調査を行う要求はすごくはっきり断りましたけど、私たちにとってすごく重要だと思いますね。今の警察の行為はすごく問題的だと思いますし、ルール違反の弾圧とかもたくさんありました。そして5つの要求の中に1番重要な要求というのは、普通選挙。いわゆる民主主義を求めています。

Q:昔の香港警察はもっと優しかったって聞いたんですけど。
 確かに今回の運動の中で警察がすごく狂っていたと思いますね。昔の警察はもちろん権力乱用とかもたくさんありましたけど、今回の運動は特にひどくなって、警察で権力どんどんどんどん大きくなって、やりたい放題になってしまったというのはすごくひどいだし、もともと警察の責任というのは市民を守るということなんですけれども、今警察は完全に市民を守ることはできなくて、逆に市民を攻撃しようといつもしていました。

Q;昨日(31日、インタビューしたのが9月1日)の集会には周庭さんは行かなかったんですか?
 そう昨日参加してないんですけれども、でもやっぱり色んな国際メディアの取材をしたりしました。やっぱり一昨日逮捕されましたので、だから今保釈の条件というのもあって、今そういう、法律違反の活動に参加することはもっと気を付けないといけないですね。

Q:保釈の条件というのは?
 保釈の条件はまずは、1万香港ドル。あとは夜の11時から朝の7時まで家にいないとダメ。そして警察本部、警察本部の近くの町に行っちゃダメ。そして外国に行けない。ということです。

Q:そうすると、あんまり政府を刺激するようなことをするとまた問題になっちゃう?
 えっとね、法律違反や申し込みを入れてないデモに参加することはちょっともっと考えなきゃいけない状況になってしまいました。

Q:昨日の集会の後も、朝までずっと取材してたんですけど、デモ隊がかなりバイオレンスというか暴力的な感じになっていきました。その原因はなんですか?
 私にとってまずは、一番暴力を使っていたのは警察だと思います。昨日だけではなく、6月から銃を撃ったり、催涙弾を使ったり、人を逮捕したり、警棒で人を殴ったり、本当にいろんな暴力、様々な暴力を使いました。私にとって1番危険というのは、警察はどんだけ暴力を使っても法律的な責任がないんですよ。いわゆる警察は合法的にいろんな暴力を使うことができる。合法的に銃を撃つこと、人々たちの頭に向けて銃を撃つことができる。それはすごく危険だと思います。本当に人を殺しても合法的なんだとか、法律違反ではなかったので、なのでそれはすごく危険だと思います。だから香港市民も警察の暴力、そして権力乱用について怒りの気持ちがますます増えてました。


Q:じゃあデモが暴力的になったのは警察に責任がある?
 そう、まずは警察に責任もありますし、もちろん香港政府も責任をとらないといけないと思います。香港政府は、私たち香港人は6月から5つの要求を出していましたけど、今香港政府はまだ1つの要求も聞いていない。尊重していない。もともと政府の責任は市民の意見を尊重することで、今その政府キャリーラム(行政長官)は全然政府としての責任をとっていないので、だからみんなもそういうデモに参加する人数もどんどんどんどん増えました。
(つづく)

周庭さん香港の闘いを語る1~運動に飛び込んだ15歳

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 朝、うちを出たら白い花が目に入った。韮(にら)だ。私にいってらっしゃいとでもいっているようだ。かわいらしい。韮の花は夏の季語だそうだ。
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 さて香港の取材。
 周庭さんの日常を密着取材をしようと思っていたら、香港到着直後に逮捕されてしまった。保釈されたが、夜間外出は禁止され、内外の記者たちからインタビュー取材依頼が殺到して「日常」どころではない。でも、香港の若者がなぜ闘うのかを彼女に聞きたいのでインタビューを申しこんだ。
 逮捕翌々日の9月1日(日)、彼女の自宅近くの大埔(タイポ)で取材することができた。インタビュー場所は駅近くの団地の公園。台風が近づいていてときおり強い風が吹いていたが幸いにも撮影中は雨に降られずにすんだ。

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大埔のレノンウォールにて

 周庭さんはなんと15歳で「活動家」になり、雨傘運動ではリーダーの一人になった。ごく普通の学生に見える彼女なのに、いったいどのようにして「運動」に飛び込んだのか。(周庭さんの日本語はすばらしいが、一部読みやすくするため修正した)

Q:30日に起きたことを教えてください。
 8月30日(金)の朝9時半くらいに、警察がうちにきて、私の部屋の前に待っていた。私は起きてからドアを開けて、警察を見ました。そして逮捕されました。逮捕された理由というのは、6月21日、警察本部であったデモに参加すること、そして扇動したことの二つの罪で逮捕されて、そしてそのあと、起訴されました。

Q:あなたとジョシュア・ウォン(周庭さんの同志)を逮捕した理由・狙いって何ですか?
 私たちが逮捕されたのは一昨日の8月30日なんですけれども、8月31日に大規模なデモを行う予定がありましたので、だからそういう重要なタイミングを狙って、知名度のある人たちを逮捕しようとしていましたね。

Q:デモへの牽制なんですね 。:逮捕されたとき、おうちにはだれがいたんですか?
 そうですね、うちはお父さんと私がいました。


Q:お父さんびっくりされたでしょう。
 そうですね、二人ともびっくりしましたけど、私は今回3回目、逮捕は3回目なんですけども、でも警察がうちに来て逮捕されるのは初めてだったので、だからびっくりしましたし、すごい眠い状態で、逮捕されので、結構びっくりしましたし、起訴されたのも初めてですね。


Q:いつもは朝9時半だと起きていない?
 そうですね、いま一応夏休みなので、大学生としては、9時はまだ起きてないですね。


Q:じゃあ、大学にもずっと通っている?
 いま夏休みですけども、もともと9月から、学校が再開するつもりだったんですけれども、でもいま授業ボイコットが明日からあるので、まだ学校は行かない状況で、明日とかもボイコットの集会に参加しに行きます。(翌日の9月2日は香港の全教育機関で授業ボイコットが呼びかけられていた)


Q:休みの日はどんなことを?
 この夏休みの話だったら、あまり休んでないですね。香港でいろいろおきて、まあデモも週1回ということではなく、ほぼ毎日いろいろ起きていますよ。政治的なこととか、逮捕された人がいるとか、デモがあるとか、そういう毎日いろんなこと起きるので、あまり休んでないですし、体が休んでいるとしても、心が本当にニュースとかスマホをチェックしたら全然休めない状況でした。


Q:ご家族は何人?
 お母さんとお父さんと私ですね、一人っ子です。


Q:ご家族は、あなたが運動していることを心配している?
 そうですね、もちろん心配の気持ちがあると思います。私は2012年から社会運動に参加し始めて、15歳から参加して、いま22歳になりましたけど、初めて15歳の時に社会運動に参加したときに、家族は反対しました。
 理由というのは、もともと私は政治に無関心な子なので、あまりそういう集会やデモに参加する印象がない。そして学生、中学生(香港は中学6年制なので日本で言う高校生)だから、なんだろう、学校に忠実的みたいな感じで、家族は反対しましたけど、私はけっこういい子ではないから、反抗しながら参加していって、そしていろいろやっていって、やっぱり両親に、私も、自分がやりたいからやっているというのを証明しましたので、お父さんお母さんも、尊重、私の参加に尊重という態度です。

Q:15歳のころの周庭さんって、どんな女の子だったんですか?
 そうですね、15歳は高校1年生だったんですけれども、あの時そうですね…アニメがすごく好きで、日本の文化もすごく好きで、あまりもちろん学校に行くこともあまり好きじゃないし、宿題とかも好きじゃないし、勉強とかもあまり好きじゃないし、すごく普通な子だったんです。


Q:そういう普通の女の子が、どうして戦おうと?
 私は、ある日フェイスブックをみて、「愛国教育」という学科が、あの時香港政府やろうとしてましたけど、愛国教育に関する情報とかニュースとかを見ました。で、たまたまですね、もともと政治に無関心なので、新聞紙とかもよまないし、SNSで、そういう愛国教育の話が出てきて、そして昔の学生組織「学民思潮」という学生団体にページを見つけて「あ、そういう中学生たちは私と同い年なのに、全然違うことやっているね」とか思って、だから色々調べて、愛国教育はすごい問題的なんだって気づいて、だから学生団体に加入しました。


Q:その「愛国教育」については、大きな疑問があったんですか?
 そうですね。愛国教育は、まず本当にやるのなら、私か私の年下の子たちも愛国教育を勉強しないとダメですね。愛国教育の内容はすごく問題的な部分だと思います。愛国教育の中にまずは、「中国はどれくらい強い国なのか」、「共産党はどれくらいいい政権なのか」を教える学科なので、だからあんまり私にとって教育というのは人を学生や子供たちをもっと自分の意見を考えるために教育をするということで、ある意見、あるはっきりした立場を教えるではなく、どうやって考えるかを教えることが教育だと思います。
 でも愛国教育はその反対で、自分で考えるのではなく、もう「中国はいい国だ」、「中国共産党政党はいい政党だ」ということを教える学科なので、すごく問題的だと思います。
(つづく)

参照:愛国教育については当ブログhttps://takase.hatenablog.jp/entry/20120917

香港はなぜ闘うのか2

 長月、節気は白露(はくろ)。昼夜の気温差が大きくなって朝夕に降りる露のことを白露という。そろそろ残暑も終わりのはずが、台風のあとのきのう東京は35℃を超え、9月としては6年ぶりの猛暑日。きょうもまた猛暑日だった。
 8日から初候「草露白」(くさのつゆ、しろし)。次候「鶺鴒鳴」(せきれい、なく)が13日から。18日からが末候「玄鳥去」(つばめ、さる)。卯月(4月)のはじめ「玄鳥至」(つばめ、きたる)から半年、ツバメが温かい南の土地に帰っていく。
 子どものころ、かやぶきの実家の軒先に、何組ものつがいが巣を作り、ヒナが大きな口をあけてチイチイ鳴いていた。最近ツバメをあまり見ないなと思っていたら、はやり激減しているらしい。(「ツバメが消えた、50年で4分の1 1万人の小6が調査」https://www.asahi.com/articles/ASM5F7J3PM5FPJLB00K.html
 田畑の減少などの自然環境と、巣作りに適した日本家屋が少なくなったなどの変化のせいだというが、それだけなのか。気になってもっと知りたくなる。
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 8日(日)は超強力台風の関東直撃で、フジTV「Mr.サンデー」は台風特集を予定していた。夕方、香港特集を編集しているところに「台風被害が大きくなると、香港特集は放送が来週に延びる可能性がある」との連絡がくる。結局放送されたのだが、画面左と下に台風情報のテロップが出っ放しだった。

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台風情報のテロップで覆われた画面。でも災害情報の方が大事ですから・・


 台風情報もあって、Mr.サンデーの視聴率は非常に高く、ここ1週間のフジテレビの全番組のなかで最高だったという。香港特集のピークは13%を超えた。たくさんの人に観てもらえて、よかった。

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                      (報道ステーションより)

 

 私が帰国する間際の4日、林鄭月娥(りんていげつが)行政長官が「逃亡犯条例改正案」の正式撤回を発表した。いわゆる民主派側の大きな勝利であり、これで沈静化するかと思いきや、反政府抗議活動は今も続いている。これから本格的な混迷の時期を迎える予感がする。というのは現在の「運動」は、もともとの「逃亡犯条例改正案」反対からその要求を大きく変化させ、普通選挙など実現のきわめて困難な「5大要求」を掲げるにいたっているからだ。敗北に向かって運動が突っ走っているのではとさえ思えてくる。

 《撤回表明後、初の週末となった7、8の両日もこれまでと変わらずデモが行われた。ただ、デモ隊の行動や訴えはいずれも「本筋」からは外れていた。
 7日のデモでは、8月31日の大規模デモの際、地下鉄駅構内で警察の取り締まりによって3人が死亡したというインターネット上で拡散したうわさをもとに、地下鉄駅が攻撃対象になった。警察や病院は「死亡者はいない」と再三否定しているが、デモ隊側の疑念は晴れない。
 8日は、米国での香港関連法の早期成立を訴えるため、米総領事館を目指して行進。「香港の自由のため戦おう」と英語で叫び、星条旗を振って香港政府や中国政府への圧力を求めた。
 デモ隊の一部の行動は激しさを増しているが、怒りの矛先は鉄道会社や防犯カメラなどに広がり、かえって運動の争点が見えにくくなっている。
 デモ隊が掲げてきた改正案撤回以外の要求実現の見通しはなお厳しい。現在、市民が最も強く求めているのは、警察の実力行使の是非を問う独立調査委員会の設置で、それに続いて普通選挙実施への要求も強い。
 しかし、調査委に関して政府は、既存の調査機関があることを理由に拒否し続けている。普通選挙に関しては、従来型のデモの繰り返しで実現する可能性はほぼない。
 デモ隊側が明確な指針を定められずにいる一方、政府側も取り締まりを強化することしかできず、混乱収束の道筋は描けていない。香港政府の背後に控える中国本土について、ロイター通信は2日、「中国側は解決の期限を設けていない」と語る林鄭長官の音声記録を報じた。抗議活動、香港政府、習近平政権がにらみ合う「持久戦」がしばらく続きそうだ。》(香港時事)https://www.jiji.com/jc/article?k=2019090900940&g=int

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旺角(モンコック)警察署前で集会規制に出てきた警官隊(9月3日未明)

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警察の暴力への抗議が高まっている。高校生や勤め帰りのOLなどごく普通の人が顔をマスクで隠しながら抗議に加わる。

 香港情勢を理解するために、今回の運動の端緒から見ていこう。
(つづく)

香港はなぜ闘うのか1

 香港情勢を先月30日から取材して、きのう5日早朝に帰国しました。
 8日(日)夜10時からの「Mr.サンデー」(フジTV)で取材成果の一部を紹介しますので、ぜひご覧ください。
 私の問題意識は、「なぜ香港人はあんなにがんばって闘うのか?」でした。かつて私は、香港人はお金に最大の関心があって政治などには興味のない人々というイメージを持っていました。(香港人に謝ります。すみません!)
 日本のメディアでは、香港人の怒りや恐れ、闘うエートスがほとんど報じられていないと思うので、そのあたりにリアルに迫るべくいま編集中です。

 きょうから少しづつ香港取材の顛末を連載していきます。
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 香港では毎日どこかで集会・デモが行われているが、土曜日は大きなイベントがあるので、31日(土)の前日、30日(金)の早朝、香港に入った。宿泊費を節約して夜行便で行くが、5時間のフライトで睡眠時間は2~3時間なので私のような高齢者にはちょっとつらい。
 今回はカメラマンのSさん(女性だからカメラパースンか)と二人で取材した。
5年前の雨傘運動のリーダー、周庭さん(https://takase.hatenablog.jp/entry/2019/06/13/参照)を取材するアレンジができて、その日の夕方5時半に会うことになっていた。三脚はじめ撮影機材があるから荷物が重いが、やはり経費節約でバスに乗ってホテルに辿りつき、コーヒーを飲みながらほっと一息ついていた。
 すると、協力者からスマホのLINEに「ジョシュア・ウォン(黄之鋒)が逮捕された」との連絡が入った。黄之鋒さんといえば周庭さんの盟友だ。まだ22歳と若いが、2012年の「国民教育」反対運動のころからのリーダーで周庭さんとともに香港の自決権を掲げる「香港衆志(デモシスト)」という団体を立ち上げリーダーとなった。
 あす31日の大集会を控えた弾圧だろうとSさんと話し合っていると、さらにLINEに連絡が。「周庭も逮捕された」!!
 この時点で、想定していた取材予定がすべて狂ってしまった。実は私は周庭さんに独占密着取材をし、それを特集の柱の一つにするつもりだったのだ。

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ワンチャイ警察本部前

 おっとり刀で彼女が連行された警察へ。香港は何度か来ているが、さほど土地鑑はないのでスマホの地図アプリで探していく。このあたりの取材態勢は大企業メディアとは全く違う。午前10時半、ワンチャイ警察本部前に着くと30人ほどの取材者がたむろしている。あとで分かったのだが、周庭さんが自宅で逮捕されたのが9時だったそうだから、警察にはかなり早く着いたわけだ。
 とりあえず、その辺の記者連中から情報を仕入れ、立ちレポを何パターンか撮影。ここから裁判所に移送されるはずなので出口で警察車両をチェックするが、動きのないまま午後4時になる。ここでほぼ半日を浪費してしまった。食事をとっていなかったので、いったん警察を離れ食堂へ。そこに、周庭さんはすでに裁判所の中にいるとの情報。すわ、と裁判所へ急ぐ。

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100人超の取材陣がぎゅうぎゅう詰めで待ち受ける。私も場所を確保しようとむりやり体を押し込んだ

 裁判所の正面入り口は、100人を優に超す報道陣が密集して二人を待ち受けていた。夕方5時半ごろ、二人が出てきて即席の記者会見となった。

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二人は裁判所前で声明を発表した

 二人は、警察当局の許可を得ていない6月の集会への参加を扇動した罪などで起訴され、夕保釈された。明日の大集会も「違法集会」であり、政府は、参加者は厳しくとりしまるぞ、という強いメッセージを発したとみることができる。
 周庭さんは今回が3回目の逮捕だが、起訴されたのは初めて。夜11時から朝7時までの夜間外出と出国が禁止された。

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日本人記者たちに囲まれる周庭さん。彼女は日本への広報を自らに課しているようだ。


 これからも闘い続ける、我々の意志をくじくことはできないとたくさんのカメラの前で、周庭さんは語った。会見のあと彼女に近づいて、「ご連絡した高世です、なんとか取材させてください」と頼み込んだ。「はい、わかりました」と彼女はいうが、どうなるかわからない。
 到着直後から波乱の展開となった。

こんどはトウモロコシ爆買いで尻尾をふる安倍外交

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 栗の実が大きくなってきた。いよいよ夏も終わりに向かっている。夜、草むらからさかんに虫の音が聞こえる。コオロギか。
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 トランプ大統領は、デンマークからグリーンランドを買うだの、ハリケーンが米国に上陸する前に核爆弾で破壊することを提案するだの、ますますその「地」をあらわにして世界中を呆れさせている。そのトランプ氏にあくまでも忠実なポチぶりを発揮しているのが安倍首相だ。

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 米中経済戦争で中国に売れなくなった米国の農産物を、日本が引き受けて買いましょうと安倍首相が約束したそうだ。おいおい。
 「中国が約束を守らないから、米国ではトウモロコシが余っている。その全てを日本が買ってくれ、農家はとても幸せだ」
 トランプ氏は二十五日、仏ビアリッツでの日米首脳会談でこう語った。安倍首相は「日本では害虫被害に悩まされており、民間に追加購入需要がある」と応じたという。
 しかし、「害虫被害」は爆買いをとりつくろうための根拠のない言い訳に過ぎないようだ。

 《日米首脳が25日の会談で合意した米国産飼料用トウモロコシの大量輸入について、農業関係者から疑問の声が上がっている。
 菅義偉官房長官は27日午前の会見で、安倍晋三首相が表明した大量輸入について「(日本国内で)供給が不足する可能性がある」と説明した。日本では、7月からガの幼虫である「ツマジロクサヨトウ」の発生が確認されていて、九州地方を中心に11県で被害が出ている。そのため、米国から年間輸入量の3カ月分にあたる275万トン程度が輸入される見込みだという。トランプ米大統領は日本の輸入額について「数億ドル(数百億円)」と述べている。
 では、ツマジロクサヨトウの被害はどの程度なのか。275万トンを輸入するということで、すでに供給不足になっているのかと思いきや、農水省に確認したところ「現状で営農活動に影響は出ていません」(植物防疫課)と話す。発生が確認された地域では、大量発生を防ぐために防除や早期の刈り取りを促しているが、作物への影響はわずか。「現時点で被害量はまとめていません」(同)という。》(https://dot.asahi.com/dot/2019082700038.html?page=1
 さらに、米国から輸入するのは実を使用する「デントコーン」と呼ばれるトウモロコシで、日本で被害が出ている葉や茎を砕いて利用するトウモロコシ(サイレージコーン)とは性質が異なるという。
 記事はこうまとめている。
 《「害虫被害が限定的であることは調べればすぐにわかるのに、ほとんどのメディアがそのことに触れていません。安倍政権の説明を“忖度”してそのまま報道するとは、情けないとしか言いようがありません」(鈴木宣弘・東京大教授(農業経済学))
 安倍政権は、トウモロコシの大量輸入に向けて新たな補助金制度を作るという。莫大な税金を投入して得られる“国益”とは何か。ただ、トランプ大統領が上機嫌であることだけはたしかなようだ。》(AERA dot.編集部/西岡千史)

 売国外交と呼びたくなる安倍政権の外交・安全保障政策だが、これを54%もの人が「評価する」と答え、「評価しない」の31%を大きく上回っているという。(日本テレビの定例世論調査)

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https://www.ntv.co.jp/yoron/?fbclid=IwAR1MdxX2BsswazKy509TUhsl8vdJxx-YNWYEPj3NoySUg2pWlHvu3fuksjI
 愕然とする結果である。メディアの「忖度報道」の結果、人々に知らされていないからなのか。考え込んでしまう。

ストを敵視する、メマイがするニュース

 処暑(しょしょ)になった。「処」とは止まる、留まるという意味で、暑さも収まるころ。本来の七夕はこの時期だそうで、天の川もきれいに見えるはずだが、台風が続々やってきてすっきりしない空がつづく。
 23日から初候の「綿柎開」(わたのはなしべ、ひらく)。次候「天地始粛」(てんち、はじめてさむし)が28日から。末候「禾乃登」(こくのもの、すなわちみのる)が9月3日から。
 9月1日は二百十日立春から数えて210日目で、このころが台風の多い時期。稲が熟してくるときにあたるから要警戒ということだ。今年はすでに大雨被害が相次いだ。これ以上、災害がないよう祈りたい。

 明日、遅すぎる墓参りに山形に帰省しよう。この夏は長い休みがとれなかったな。
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 17日、ロバート・キャンベルさんが「こういう報道は初めて見た」とテレビのニュースに疑問を呈していた。

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 問題にしたのは《お盆のUターンラッシュの混雑が続くなか、従業員のストライキで営業を停止していた東北自動車道上り線の佐野サービスエリアで営業が再開されました》というニュース。
 まるで、スト破りを肯定するかのような報じ方だ。
 メディアでニュースを発する人たち自身が、権利意識が希薄なのだが、寄らば大樹、精神的に萎れた日本人の姿を浮き彫りにしてもいる。

 これについてもう一人、正論をぶっているのが斎藤美奈子さん。

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 《今般の日本では「ストライキ」という言葉すら禁句なのか。東北自動車上り線・佐野サービスエリア(SA)で14日から続いている従業員のストを伝える報道はメマイがしそうだった。
 営業休止、店舗休止、就業拒否などの漠然とした表現。「通常ならお盆で混雑する時期の出来事に利用客に戸惑いや落胆が広がっている」(朝日新聞・15日)などの迷惑そうな語り口。
 この件を比較的しっかり報じていた日刊スポーツによると、発端は運営会社のケイセイ・フーズの経営危機と、それを糾弾した従業員の不当解雇だったらしい。詳細は不明ながら、経営者視点、消費者視点の報道ばかりなのが気になる。
 もう一件、メマイがしそうだったのは17日に放送されたNHKの朝ドラ「なつぞら」である。妊娠した主人公を産休明けに契約社員にするとの通達に怒り、社長室を訪れたアニメ制作会社の従業員たち。ところが「まるで組合のデモじゃないですか」という社長に対し、現場の責任者は「これは組合を超えたわれわれ一人一人の個人的な支援」と答えるのだ。何それ。労働組合の団体交渉ではないと?主人公のモデルとなった奥山玲子は東映動画の組合活動も頑張った人なのに?
 こうして曖昧にされる労働者の権利。ニュースといいドラマといい、何を気にしているのか知りたいよ。(文藝評論家)》(東京新聞8月21日)
 日本の若者たちの中には、デモ、集会、ストなどというものは、本来やってはいけないことだと思っている人も多い。そうなると、香港で人口の4分の1、5分の1という広範な大衆がデモ行進をする事態は全く理解できないだろう。
 斎藤美奈子さんが「メマイがする」のは正常な感覚の持ち主だからであるが、その違和感をぜひ発信し続けてほしい。

    ごくまともなこと言っている斎藤さんが「左翼」に見えてしまうのはご時世か。当たり前のことを言うのに勇気がいる時代に入ったようだ。