ストを敵視する、メマイがするニュース

 処暑(しょしょ)になった。「処」とは止まる、留まるという意味で、暑さも収まるころ。本来の七夕はこの時期だそうで、天の川もきれいに見えるはずだが、台風が続々やってきてすっきりしない空がつづく。
 23日から初候の「綿柎開」(わたのはなしべ、ひらく)。次候「天地始粛」(てんち、はじめてさむし)が28日から。末候「禾乃登」(こくのもの、すなわちみのる)が9月3日から。
 9月1日は二百十日立春から数えて210日目で、このころが台風の多い時期。稲が熟してくるときにあたるから要警戒ということだ。今年はすでに大雨被害が相次いだ。これ以上、災害がないよう祈りたい。

 明日、遅すぎる墓参りに山形に帰省しよう。この夏は長い休みがとれなかったな。
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 17日、ロバート・キャンベルさんが「こういう報道は初めて見た」とテレビのニュースに疑問を呈していた。

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 問題にしたのは《お盆のUターンラッシュの混雑が続くなか、従業員のストライキで営業を停止していた東北自動車道上り線の佐野サービスエリアで営業が再開されました》というニュース。
 まるで、スト破りを肯定するかのような報じ方だ。
 メディアでニュースを発する人たち自身が、権利意識が希薄なのだが、寄らば大樹、精神的に萎れた日本人の姿を浮き彫りにしてもいる。

 これについてもう一人、正論をぶっているのが斎藤美奈子さん。

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 《今般の日本では「ストライキ」という言葉すら禁句なのか。東北自動車上り線・佐野サービスエリア(SA)で14日から続いている従業員のストを伝える報道はメマイがしそうだった。
 営業休止、店舗休止、就業拒否などの漠然とした表現。「通常ならお盆で混雑する時期の出来事に利用客に戸惑いや落胆が広がっている」(朝日新聞・15日)などの迷惑そうな語り口。
 この件を比較的しっかり報じていた日刊スポーツによると、発端は運営会社のケイセイ・フーズの経営危機と、それを糾弾した従業員の不当解雇だったらしい。詳細は不明ながら、経営者視点、消費者視点の報道ばかりなのが気になる。
 もう一件、メマイがしそうだったのは17日に放送されたNHKの朝ドラ「なつぞら」である。妊娠した主人公を産休明けに契約社員にするとの通達に怒り、社長室を訪れたアニメ制作会社の従業員たち。ところが「まるで組合のデモじゃないですか」という社長に対し、現場の責任者は「これは組合を超えたわれわれ一人一人の個人的な支援」と答えるのだ。何それ。労働組合の団体交渉ではないと?主人公のモデルとなった奥山玲子は東映動画の組合活動も頑張った人なのに?
 こうして曖昧にされる労働者の権利。ニュースといいドラマといい、何を気にしているのか知りたいよ。(文藝評論家)》(東京新聞8月21日)
 日本の若者たちの中には、デモ、集会、ストなどというものは、本来やってはいけないことだと思っている人も多い。そうなると、香港で人口の4分の1、5分の1という広範な大衆がデモ行進をする事態は全く理解できないだろう。
 斎藤美奈子さんが「メマイがする」のは正常な感覚の持ち主だからであるが、その違和感をぜひ発信し続けてほしい。

    ごくまともなこと言っている斎藤さんが「左翼」に見えてしまうのはご時世か。当たり前のことを言うのに勇気がいる時代に入ったようだ。