周庭さん香港の闘いを語る1~運動に飛び込んだ15歳

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 朝、うちを出たら白い花が目に入った。韮(にら)だ。私にいってらっしゃいとでもいっているようだ。かわいらしい。韮の花は夏の季語だそうだ。
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 さて香港の取材。
 周庭さんの日常を密着取材をしようと思っていたら、香港到着直後に逮捕されてしまった。保釈されたが、夜間外出は禁止され、内外の記者たちからインタビュー取材依頼が殺到して「日常」どころではない。でも、香港の若者がなぜ闘うのかを彼女に聞きたいのでインタビューを申しこんだ。
 逮捕翌々日の9月1日(日)、彼女の自宅近くの大埔(タイポ)で取材することができた。インタビュー場所は駅近くの団地の公園。台風が近づいていてときおり強い風が吹いていたが幸いにも撮影中は雨に降られずにすんだ。

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大埔のレノンウォールにて

 周庭さんはなんと15歳で「活動家」になり、雨傘運動ではリーダーの一人になった。ごく普通の学生に見える彼女なのに、いったいどのようにして「運動」に飛び込んだのか。(周庭さんの日本語はすばらしいが、一部読みやすくするため修正した)

Q:30日に起きたことを教えてください。
 8月30日(金)の朝9時半くらいに、警察がうちにきて、私の部屋の前に待っていた。私は起きてからドアを開けて、警察を見ました。そして逮捕されました。逮捕された理由というのは、6月21日、警察本部であったデモに参加すること、そして扇動したことの二つの罪で逮捕されて、そしてそのあと、起訴されました。

Q:あなたとジョシュア・ウォン(周庭さんの同志)を逮捕した理由・狙いって何ですか?
 私たちが逮捕されたのは一昨日の8月30日なんですけれども、8月31日に大規模なデモを行う予定がありましたので、だからそういう重要なタイミングを狙って、知名度のある人たちを逮捕しようとしていましたね。

Q:デモへの牽制なんですね 。:逮捕されたとき、おうちにはだれがいたんですか?
 そうですね、うちはお父さんと私がいました。


Q:お父さんびっくりされたでしょう。
 そうですね、二人ともびっくりしましたけど、私は今回3回目、逮捕は3回目なんですけども、でも警察がうちに来て逮捕されるのは初めてだったので、だからびっくりしましたし、すごい眠い状態で、逮捕されので、結構びっくりしましたし、起訴されたのも初めてですね。


Q:いつもは朝9時半だと起きていない?
 そうですね、いま一応夏休みなので、大学生としては、9時はまだ起きてないですね。


Q:じゃあ、大学にもずっと通っている?
 いま夏休みですけども、もともと9月から、学校が再開するつもりだったんですけれども、でもいま授業ボイコットが明日からあるので、まだ学校は行かない状況で、明日とかもボイコットの集会に参加しに行きます。(翌日の9月2日は香港の全教育機関で授業ボイコットが呼びかけられていた)


Q:休みの日はどんなことを?
 この夏休みの話だったら、あまり休んでないですね。香港でいろいろおきて、まあデモも週1回ということではなく、ほぼ毎日いろいろ起きていますよ。政治的なこととか、逮捕された人がいるとか、デモがあるとか、そういう毎日いろんなこと起きるので、あまり休んでないですし、体が休んでいるとしても、心が本当にニュースとかスマホをチェックしたら全然休めない状況でした。


Q:ご家族は何人?
 お母さんとお父さんと私ですね、一人っ子です。


Q:ご家族は、あなたが運動していることを心配している?
 そうですね、もちろん心配の気持ちがあると思います。私は2012年から社会運動に参加し始めて、15歳から参加して、いま22歳になりましたけど、初めて15歳の時に社会運動に参加したときに、家族は反対しました。
 理由というのは、もともと私は政治に無関心な子なので、あまりそういう集会やデモに参加する印象がない。そして学生、中学生(香港は中学6年制なので日本で言う高校生)だから、なんだろう、学校に忠実的みたいな感じで、家族は反対しましたけど、私はけっこういい子ではないから、反抗しながら参加していって、そしていろいろやっていって、やっぱり両親に、私も、自分がやりたいからやっているというのを証明しましたので、お父さんお母さんも、尊重、私の参加に尊重という態度です。

Q:15歳のころの周庭さんって、どんな女の子だったんですか?
 そうですね、15歳は高校1年生だったんですけれども、あの時そうですね…アニメがすごく好きで、日本の文化もすごく好きで、あまりもちろん学校に行くこともあまり好きじゃないし、宿題とかも好きじゃないし、勉強とかもあまり好きじゃないし、すごく普通な子だったんです。


Q:そういう普通の女の子が、どうして戦おうと?
 私は、ある日フェイスブックをみて、「愛国教育」という学科が、あの時香港政府やろうとしてましたけど、愛国教育に関する情報とかニュースとかを見ました。で、たまたまですね、もともと政治に無関心なので、新聞紙とかもよまないし、SNSで、そういう愛国教育の話が出てきて、そして昔の学生組織「学民思潮」という学生団体にページを見つけて「あ、そういう中学生たちは私と同い年なのに、全然違うことやっているね」とか思って、だから色々調べて、愛国教育はすごい問題的なんだって気づいて、だから学生団体に加入しました。


Q:その「愛国教育」については、大きな疑問があったんですか?
 そうですね。愛国教育は、まず本当にやるのなら、私か私の年下の子たちも愛国教育を勉強しないとダメですね。愛国教育の内容はすごく問題的な部分だと思います。愛国教育の中にまずは、「中国はどれくらい強い国なのか」、「共産党はどれくらいいい政権なのか」を教える学科なので、だからあんまり私にとって教育というのは人を学生や子供たちをもっと自分の意見を考えるために教育をするということで、ある意見、あるはっきりした立場を教えるではなく、どうやって考えるかを教えることが教育だと思います。
 でも愛国教育はその反対で、自分で考えるのではなく、もう「中国はいい国だ」、「中国共産党政党はいい政党だ」ということを教える学科なので、すごく問題的だと思います。
(つづく)

参照:愛国教育については当ブログhttps://takase.hatenablog.jp/entry/20120917