香港はなぜ闘うのか1

 香港情勢を先月30日から取材して、きのう5日早朝に帰国しました。
 8日(日)夜10時からの「Mr.サンデー」(フジTV)で取材成果の一部を紹介しますので、ぜひご覧ください。
 私の問題意識は、「なぜ香港人はあんなにがんばって闘うのか?」でした。かつて私は、香港人はお金に最大の関心があって政治などには興味のない人々というイメージを持っていました。(香港人に謝ります。すみません!)
 日本のメディアでは、香港人の怒りや恐れ、闘うエートスがほとんど報じられていないと思うので、そのあたりにリアルに迫るべくいま編集中です。

 きょうから少しづつ香港取材の顛末を連載していきます。
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 香港では毎日どこかで集会・デモが行われているが、土曜日は大きなイベントがあるので、31日(土)の前日、30日(金)の早朝、香港に入った。宿泊費を節約して夜行便で行くが、5時間のフライトで睡眠時間は2~3時間なので私のような高齢者にはちょっとつらい。
 今回はカメラマンのSさん(女性だからカメラパースンか)と二人で取材した。
5年前の雨傘運動のリーダー、周庭さん(https://takase.hatenablog.jp/entry/2019/06/13/参照)を取材するアレンジができて、その日の夕方5時半に会うことになっていた。三脚はじめ撮影機材があるから荷物が重いが、やはり経費節約でバスに乗ってホテルに辿りつき、コーヒーを飲みながらほっと一息ついていた。
 すると、協力者からスマホのLINEに「ジョシュア・ウォン(黄之鋒)が逮捕された」との連絡が入った。黄之鋒さんといえば周庭さんの盟友だ。まだ22歳と若いが、2012年の「国民教育」反対運動のころからのリーダーで周庭さんとともに香港の自決権を掲げる「香港衆志(デモシスト)」という団体を立ち上げリーダーとなった。
 あす31日の大集会を控えた弾圧だろうとSさんと話し合っていると、さらにLINEに連絡が。「周庭も逮捕された」!!
 この時点で、想定していた取材予定がすべて狂ってしまった。実は私は周庭さんに独占密着取材をし、それを特集の柱の一つにするつもりだったのだ。

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ワンチャイ警察本部前

 おっとり刀で彼女が連行された警察へ。香港は何度か来ているが、さほど土地鑑はないのでスマホの地図アプリで探していく。このあたりの取材態勢は大企業メディアとは全く違う。午前10時半、ワンチャイ警察本部前に着くと30人ほどの取材者がたむろしている。あとで分かったのだが、周庭さんが自宅で逮捕されたのが9時だったそうだから、警察にはかなり早く着いたわけだ。
 とりあえず、その辺の記者連中から情報を仕入れ、立ちレポを何パターンか撮影。ここから裁判所に移送されるはずなので出口で警察車両をチェックするが、動きのないまま午後4時になる。ここでほぼ半日を浪費してしまった。食事をとっていなかったので、いったん警察を離れ食堂へ。そこに、周庭さんはすでに裁判所の中にいるとの情報。すわ、と裁判所へ急ぐ。

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100人超の取材陣がぎゅうぎゅう詰めで待ち受ける。私も場所を確保しようとむりやり体を押し込んだ

 裁判所の正面入り口は、100人を優に超す報道陣が密集して二人を待ち受けていた。夕方5時半ごろ、二人が出てきて即席の記者会見となった。

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二人は裁判所前で声明を発表した

 二人は、警察当局の許可を得ていない6月の集会への参加を扇動した罪などで起訴され、夕保釈された。明日の大集会も「違法集会」であり、政府は、参加者は厳しくとりしまるぞ、という強いメッセージを発したとみることができる。
 周庭さんは今回が3回目の逮捕だが、起訴されたのは初めて。夜11時から朝7時までの夜間外出と出国が禁止された。

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日本人記者たちに囲まれる周庭さん。彼女は日本への広報を自らに課しているようだ。


 これからも闘い続ける、我々の意志をくじくことはできないとたくさんのカメラの前で、周庭さんは語った。会見のあと彼女に近づいて、「ご連絡した高世です、なんとか取材させてください」と頼み込んだ。「はい、わかりました」と彼女はいうが、どうなるかわからない。
 到着直後から波乱の展開となった。