今こそコロナ対策の総括を

 小暑(しょうしょ)になった。梅雨が明け、いよいよ暑い夏が始まる。

 7日から初候「温風至(あつかぜ、いたる)」。12日から次候「蓮始開(はす、はじめてひらく)」。17日からが末候「鷹乃学習(たか、すなわちわざをならう)」

畑のインゲン。おひたしにした

 インゲンが旬だ。
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 古い新聞記事の切り抜きを整理していたら、作家の中島京子さんの「衆院選に想う」という去年11月2日の寄稿が目に止まった。

 中島京子さんは『小さいおうち』(山田洋二監督が映画化した)で直木賞をとった人気作家。去年秋の衆議院選挙結果を受けての中島さんの思いを読み、ほんとにその通りだ、優れた作家はちゃんと世の中を見ているなと思って切り抜いていたのだった。読み返すと、今回の参議院選挙にもそのまま通じる。一部を抜粋する。

朝日新聞21年11月2日付朝刊より

 《今回の選挙で問うべきだったのは、「人が生まれてきた以上誰でも持っている、生きる権利」だったと思っている。
(新型コロナ禍で)《人々が苦しむ中、オリンピック・パラリンピックが開催された。選挙戦の中、オリパラの総括を問うことはほとんどなく、たった2ヶ月、3ヶ月前のことなのに、みな忘れたように静かだった。一日に2万人もの新規感染者を出す中で強行されたことを問わないのは理解できない。巨額の費用も問題にされた、コロナ禍の中で、職を失い、家を失った人がおおぜいいた。入院できず、たらいまわしにされて亡くなった方もあった。救える命が救われない恐怖に、多くの人が震えた。まさに、基本的人権生存権が脅かされる事態が表出した。3月には、スリランカ人女性が入管施設で医療につないでもらえずに亡くなった。この国では、外国人には人権がないのかと、愕然とした。
 この選挙は、長く続く自公政権への評価を行うものでもあったはずだ。行政文書の破壊や改ざん、黒塗りによる開示拒否など、民主主義がないがしろにされるのを見てきた。なにより、政権与党は臨時国会の招集を求められても応じなかったのだ。選挙だけではない、この国では、政治そのものが大切にされていないと感じる。仕事しない政治家に政権をあずけるのかを問う選挙だった。結果を見て、暗澹たる気持ちになっている。》
 そして、《悲観している余裕はない。私たちは、自分たちの基本的な権利をもっと大切にしなければならないし、そのための努力を、今日、この日から始めなければならないと思う。》と結んでいる。
 
 今回の参議院選挙では、物価高にどう手当てするかが争点のようになっているが、多くの大事な問題が忘れられているように思う。

 例えばいま再びコロナ感染が急拡大し第7波が到来したもようだが、いまだ政府のコロナ対策はまともに総括されていない。以下、朝日新聞社説から。

 「投じた補助金交付金が期待された効果をあげたかも含め、今後の対策を論じるうえで、この2年半のコロナ対策の徹底検証が不可欠だ。ところが政府が設けた有識者会議は、表面をなでただけで散会した
 立憲は国会に調査委員会を設けることを提唱する。行政監視の責務を負う立法府にとって、与野党の立場を超えて避けて通れないテーマのはずだ。」(7日)

 PCR検査はしない方がいいという政府内「スンナ派」の妨害、アベノマスクやGoToキャンペーン強行など常識外れの愚策の数々はもちろんのこと、国家財政が厳しいおりから、コロナ対策の費用と効果については必ず総括すべきだ。それは直面する第7波だけでなく、今後ありうる次のパンデミックへの教訓としても必要だろう

 20年度のコロナ対策予算77兆円をベースにして、『コロナ対策の費用対効果』(ちくま新書)の著者、原田泰(ゆたか)名古屋商科大ビジネススクール教授の分析を紹介する。

原田泰氏(もと財務省官僚だったそうだ)

 まず、基本的な認識として、日本のコロナ対策は決して成功ではなかった

 参院選選挙戦で自民党は日本の感染者数がG7では「優等生」だったというが、「アジア太平洋の島国民主主義先進国」で比べるとたちまち劣等生に転落する

日本はダントツの劣等生(ビッグイシュー7/1より)

 初期段階の感染数の低さに日本特有の「ファクターX」がうんぬんされたが、原田氏は「国境検疫に有利な島国という環境こそが”ファクターX”だったのではないか」という。ところが国境検疫自体がザルだったので、20年後半からの感染増を招いてしまった。

 さてお金の話。20年度に限っても、日本政府は、通常の予算に加えて、所得保障17兆円、一律10万円の特別低額給付金13兆円、融資14兆円、医療提供体制の整備12兆円、GoToキャンペーン3兆円など合わせて77兆円ものコロナ対策予算を支出している。
「台湾、韓国、オーストラリア、ニュージーランドなどのアジア太平洋の島国の先進国と比べても、日本は政府支出が多い割に経済成長率が低い。77兆円(使い残し20兆円を含む)も使って、GDPが22兆円も減少したことを考えると、使い方に問題があったと言わざるを得ません。先が見えない状況で、政府がいくら支出を増やしたところで、人々は安心して消費できない。政府に必要なのは安心感を与えること。コロナ禍によって所得が著しく低下した人には、所得の補填をする政策も必要なのではないでしょうか」(原田氏 The Big Issue7月1日号から引用)

 お金の使い方も劣等生だったというのだ。

 では具体的には・・?
(つづく)