『北朝鮮 拉致問題』出版記念会見

 もう夏至か。

 一年で最も日が長いということは、太陽エネルギー(水素の核融合エネルギー)が一番強烈に照射してくるということだ。

 初侯「乃東枯(なつくさ、かるる)」が21日から、次候「菖蒲華(あやめ、はなさく)」が26日から、末候「半夏生(はんげ、しょうず)」が7月1日から。恵の雨が降り注ぎ、いよいよ夏に向かって暑さが増していく。
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 きょうは午後3時から永田町で『北朝鮮 拉致問題 極秘文書から見える真実』の出版記者会見。

 著者の有田芳生さん、「救う会」から除名された「救う会徳島」の陶久敏郎さん、同じく除名され「救う会神奈川」の川添友幸さんと私の4人が、拉致問題がなぜ進展しないのかを語った。マスコミだけでなく研究者や人権活動家も来て用意した30席は埋まった。

左から有田、高世、陶久、川添

田中実さんの拉致について書かれた張龍雲『朝鮮総連工作員』を手に拉致の手口を説明

 私は、田中実さんと金田龍光さんの2人の拉致被害者が8年もの長きにわたって政府に見捨てられている問題を指摘した。

 なお、本書には大きな反響があり、閣僚経験者の自民党国会議員などからも賛同の声が寄せられている。

 本書について、特定失踪者問題調査会の荒木和博代表がブログでこう述べている。

araki.way-nifty.com


《2022年6月20日
田中実さんと金田竜光さん【調査会NEWS3621】(R4.6.20)

 既に何度か指摘してきましたが、政府認定拉致被害者田中実さんと特定失踪者金田竜光さんについて、北朝鮮側からリストが提示されたにもかかわらず日本政府は黙殺してきました。

 有田芳生参議院議員立憲民主党)の著書『北朝鮮拉致問題 極秘文書から見える真実』(集英社新書)にもこのことが書かれています。私自身は有田さんとは思想的にはかなり違いがありますし、本書にも意見の異なる部分がいくつもあるのですが、田中さんと金田さんのことについてはその通りだと思います。特に気になったのは情報を隠蔽するときに安倍総理が認め、菅官房長官(当時)が猛反対したというくだりです。本件と直接関係のない情報ですが、これを裏付けるような話は私も聞いたことがあります。

 8年前のストックホルム合意のとき、様々な情報が流れました。30人くらいのリストがあるとの話もありましたし、実際に何人か名前を伝えてきたマスコミ関係者もいました。少なくともこの時点で田中さんと金田竜光さんの名前が出ていたこと、そして政府がそれを黙殺したことは間違いありません。おそらくは他の特定失踪者の名前も出ていたのでしょうし、2人についてももっと前から名前は出ていたと思います。

 前にも書きましたが田原総一郎さんは有本恵子さんのご両親に訴えられた裁判で提出した陳述書の中で次のように言っています。

「私(田原氏)は、(北朝鮮から)帰国後の平成19年11月8日、外務省にて、外務省幹部4人と拉致問題について話し合いました。(中略)私が、ソン・イルホ大使が『8人以外に複数の日本人が生存している』と話したことを伝えたところ、外務省幹部は『同じ話を聞いているが、8人以外の複数の日本人が帰国しても、北朝鮮に対する世論が好転することはないと判断したため、その話はなかったことにした。』などと話しました」

 平成19年、つまり2007年ですからストックホルム合意よりさらに7年前です。私はこの頃から田中さんと金田さんの名前は出ていた、あるいは名前は出なくても北朝鮮が明らかにする可能性はあったと思っています。二人の場合は北朝鮮からすれば自分の意志で行ったという言い逃れがしやすいからです。私自身田中実さんの友人という人物と外国で会ったこともあります(事実確認はできず、その後連絡もできなくなってしまいましたが)。

 「全拉致被害者の即自一括帰国」というのが逆に政府の隠蔽・責任放棄の口実になっているのではないか、正直なところ懸念を払拭することができません。

 おそらく党派を問わず、田中実さん、金田龍光さんの2人を救出する手立てを政府はすぐに取るべきだという点で一致できると思う。

 田中実さん、金田龍光さんの2人の「生存情報」を北朝鮮が非公式に日本政府に伝えた際、政府高官が「(2人の情報だけでは内容が少なく)国民の理解を得るのは難しい」として非公表にすると決めていたと共同通信が報じている。

takase.hatenablog.jp

 横田めぐみさん、有本恵子さん、田口八重子さんら、名前が知られ、拉致問題のシンボルになっている拉致被害者とそれ以外の「小物」で、政府は明らかに扱いを違えている。2人の情報だけでは「国民の理解を得られない」というのだから。

 田中さん、金田さんは児童養護施設で育って身寄りがないから、家族会には誰も加わっていない。田中さんは政府認定の拉致被害者なのだが、あまり知られていない。
 北朝鮮からもたらされた情報がこの2人だけで、2002年の「8人死亡」がひっくり返っていなければ、北朝鮮側の調査「報告書」など受け取るべきではないと判断したのだ。

 これは政府が同じ拉致被害者の間に優先順位をつけていることを意味する。露骨な差別である。

 もっとも、「全拉致被害者の即自一括帰国」を徹底させると、北朝鮮がかりに「8人死亡」とされたうちの一人(例えば有本恵子さん)が生存していると(田中実さんのケースのように)日本側に伝えてきたとしても、「全員即時一括帰国」でないと突っ返すべきだということになるはずだ。

 こうなると、拉致問題は1ミリも動かないことになる。

 「全拉致被害者の即自一括帰国」の呪縛から一刻も早く脱するべきだ。

 

うちのアサガオ。毎日元気に咲いている