中国の人権抑圧は、娘の葬儀に親が出ることすら阻むところまできている。
中国の人権派弁護士、唐吉田氏の一人娘、正琪さんが20日午後、留学先の日本で27歳で死去した。中国当局は唐氏の出国を阻止し続け、意識不明の重体となっていた娘を見舞うことも叶わず、3月2日にいとなまれた告別式にも参列できなかった。
支援してきた東京大学の阿古智子教授によると、正琪さんは大学進学を目指して2019年から東京に留学していたが、21年4月に自宅で倒れ、髄膜炎と診断。以降、意識が戻らない状態が続き、20日夕、肺炎のために亡くなった。
唐氏は正琪さんに会うために複数回出国を試みたが、当局は「国家の安全」などを理由に妨害した。唐氏は10年に弁護士資格を剝奪され、出国を禁じられている。空港で使えない搭乗券を手に「娘に会うのがなぜ国家の安全を害することになるのか」と涙する唐氏の映像が流れたが、親の情を思うとやりきれない。
正琪さん死亡の知らせには唐氏から返信があったが、現在は日本から連絡が取れない状態だという。
阿古教授は「娘に会いたい、葬儀に参加したいという親の素朴な願いも聴き入れられないのは理解しがたい。『(出国禁止の理由になった)国家の安全』は政権の論理で、国民のことを考えたものではない」と中国当局の対応を非難した。
ここまでやるのか中国。
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2014年3月の横田夫妻とめぐみさんの娘で夫妻の孫にあたるキム・ウンギョンさんとの面会から10年。共同通信が実現にいたる舞台裏を記事にした。情報源は「政府関係者が明かした」としている。
日本政府は当初、北朝鮮にスイスを打診したが、北朝鮮はウンギョンさんに娘が生まれ長距離移動が困難として断った。中国も候補地に上ったが当局の監視を警戒し見送られたという。
「北朝鮮は当時、日本に歩み寄りを見せ、面会から2カ月後の5月、拉致被害者の再調査で合意した。いずれも神戸市出身の拉致被害者田中実さん=失踪時(28)=と、拉致の可能性を排除できない金田龍光さん=同(26)=の入国情報も伝達。だが他の被害者の新たな情報は得られず、協議は頓挫した。」
横田夫妻の孫との面会実現の過程で北朝鮮が「歩み寄り」を見せて、5月には北朝鮮が日本人についての調査をし直すとするストックホルム合意が成立した。その結果、田中実さんと金田龍光さんについての情報が寄せられた。これは北朝鮮がもう誰も拉致被害者はいないと言ってきたのをくつがえして、実は2人いると認めた点で画期的だった。
しかし、日本政府は「他の被害者の新たな情報」が得られないとして、この情報自体を握りつぶしたのである。つまり、日本側は、一挙に拉致被害者全員(何人なのかもはっきりしないが)の情報を出さない限り対応しないという方針だった。その結果、拉致問題進展の得難いチャンスをつぶし、田中さん、金田さんに日本政府は面会も追加の調査もせず完全に見捨てたのである。
救う会・家族会はいまだに「全拉致被害者の即時一括帰国」を交渉の入り口に置いている。
家族の方々の気持ちは痛いほど分るが、この方針を政府が共有するなら今後の展開については残念ながら悲観的にならざるを得ない。少しづつでも、一人づつでも実態解明と救出を進め、膠着した事態を打開するしかないと思うのだが。