「代理戦争」論そして第三次世界大戦の懸念

 ロシアとウクライナとの戦争について「代理戦争」論をめぐる論戦が激しくなってきた。

 「ロシア=悪玉」VS「ウクライナ=善玉」で日本(または世界)全体が一色になるのはファシズムみたいで不健全だという意見があるが、今のウクライナの人々の抵抗を見れば、そうなって当然ではないかと思う。

 私の友人のフリーランスたちの取材でも、国民が心を一つにして家族と祖国を守るために進んで戦っている様子が伝えられている。誰かにそそのかされて、あるいは強制されて戦っているわけではない。

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(こうした発言が多くの人から聞かれるが、言わされているのではないことは明らか)


 自らはっきり「代理戦争」と明言する伊勢崎健治氏、徹底した「どっちもどっち」論の鮫島浩氏のツイートをここに挙げてみた。

 

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(「ウクライナ人に戦わせてる人たち」って? ウクライナ人が誰かに「戦わされている」とは失礼では? もっと言うと、ロシアの侵略によって戦わされているのでは)

 

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(一方的に侵略されたウクライナが抵抗を始めると「戦争当事国」になり、それを支持すると「戦争を肯定」することになるらしい)

 

 黒井文太郎氏がばっさり一言で切っている。

 

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(シリア内戦のときも「代理戦争」論が有害な役割を果たした)


 戦うウクライナの人たち―その中には息子を殺され、娘をレイプされた親もいる―の前で、「代理戦争」やら「どっちもどっち」なんて恥ずかしくて言えないと思うが・・・。

 

 以下、この間の報道から印象に残った情報。

 アゾフ海に面した要衝、マリウポリ防衛隊がロシアの兵糧攻めで風前の灯だが、ここにチェチェン人部隊が投入されている。プーチンのポチのカディロフ首長のもと、同胞のチェチェン人を残虐に統治してきた部隊が、マリウポリでさぞや酷い行為をしているだろうと思うと、たまらない。製鉄所に立て籠もる2500人といわれるウクライナ兵士らもなぶり殺しになるのではと憂慮する。

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(荒くれもの集団だと評判のチェチェン人部隊。フランスメディアの取材班がロシア側からも取材している。日本のメディアも見習ってほしい)

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(最前線の町の警察官。「私は普通の人間です。警察ですが、父や母、家族がいる普通の人間です。普通の人と同じように恐怖を感じています。」と言ったあとの言葉。自分がこんなふうに考えられるかと思うと、尊敬の念をおぼえる)

 

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(ドイツはロシアへのエネルギー依存をどうするか大きな岐路に立たされているが、ベアボック外相は武器支援を打ち出す。彼女は「緑の党」の幹部(元代表)だが、欧州では社民勢力もしっかりした安全保障政策をもつ)

 ゼレンスキー大統領はじめウクライナ要人は声をそろえて「支援してほしいのは武器だ」という。日本は国是があるから武器の供与は(残念ながら)できないが、食料や医薬品もありがたいけれど(それらを最も必要としているのは前線だが)まずは武器をくれというウクライナの要求は早く叶えてほしい。それももっと攻撃用の武器を。

 きのうのTBS「サンデーモーニング」で印象に残ったコメント。

 この戦争、どうなれば終わるんですか?とMCの関口宏に聞かれたゲストの高橋杉雄氏防衛省防衛研究所)。

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「終わるのは簡単で、ロシアがちゃんと国境線まで戻ればいいんです。

 (ロシアが)攻め込んだことを前提に、この後どうするかということではなくて、攻め込んだこと自体が国際法ではやってはいけないことですから、原点は2月24日の前に戻ることなんです。

 2月24日以降の状況を前提にして、そこから「落としどころ」をさがすのではないと私は思うんですね。」

 まさに正論だと思う。原則はそれでいいとして、ロシアにそうさせるにはどうするか・・。
 
 田中優子
「前の戦争のこと、第二次大戦や満州事変だとかをいろいろ考えるようになっている。

 アレクシエーヴィチさんというノーベル文学賞をロシアでお取りになった方が、『戦争は女の顔をしていない』という本をお書きになったことがあって、これは女性のソ連兵にインタビューしたノンフィクションなんですよ。ソ連の中に入っていたウクライナがすいぶん戦地になっているんです。で、ナチドイツと戦っていたわけです。

 いま、ロシアがナチという言葉をよく使いますよね。あれ、すごく気になっていて、当時「大祖国戦争」という名前をつけて、ロシアはナチと壮絶な争いをしていて、史上最大の戦死者を出したと言われているんです。そういうようなことをもし今ロシアが思い出しているのだとすると、この戦争ってほんとに終わらないんじゃないかっていう懸念を今持ち始めています。他の国を巻き込みながら大きくなっていって、第三次世界大戦ということになりはしないかということ。

 戦争の歴史を思い出しながら、どうやって終結したらいいのかということを私たちもっと真剣にかんがえなきゃいけないと思います。」

 かつてのソ連対ナチが今、ロシア対「ナチ」+(後ろで操る)NATOの文脈でロシアがイメージしているのは確かだろう。これは「代理戦争」論そのものだが、一般のロシア人にも浸透しやすい「イデオロギー」だ。「新大祖国戦争」・・なるほど。

 田中氏の歴史家ならではの発想に考えさせられる。