きのう10日のロシア大使館への抗議行動は、「日本平和委員会」がよびかけたもので、50人ほどが集まった。
いまロシアのウクライナ侵略に対する抗議行動は、いろんなグループが毎日のように各地で行っていて、私はどれでもよかったのだが、ネットで検索したら、ちょうどタイミングが合ったのと、新宿や渋谷よりロシア大使館で抗議したかったのでこれに参加した。
11時前に飯倉交差点に横断幕をもった集団がいた。スピーカーを使って気勢を上げることができるのはここだけで、アジアアフリカ連帯委員会、原水協など共産党系の団体の幹部が発言し、シュプレヒコールを上げた。
ほとんどが高齢者の小さなデモなのに20人近い警官隊がぴったりマーク。物陰に私服も配置されていた。
交差点の集会が終わると、大使館へと向かうが、全体で一緒には行けない。5人づつの小グループで順番に行く。
この方式は十数年前に中国大使館にチベット弾圧の抗議に行ったときに初めて体験して驚いたものだが、すっかり「定着」したらしい。
前の組が終わると、私たち5人の番で、警察のエスコートで大使館前まで進む。とんがりコーンで囲んだ「抗議場所」がしつらえてあり、そこに5人並ばされ、警察に「どうぞ」とシュプレヒコールを促される。ここはスピーカーが使えないから肉声で叫ぶしかない。5人じゃ大した声量にはならない。抗議を終えると、また警察のエスコートで戻る。徹底して管理され、物足りないやら、恥ずかしいやら。
私が学生のころは、例えばアメリカ大使館へのデモなら、隊列を組んだまま門前まで行って「ヤンキー、ゴーホーム!」とやったものだ。ロシア大使館前の情けない姿が日本の「運動」のレベルなのだと思うしかない。
それから若い人がもっと加わりたくなるような努力、配慮が必要だ。特に共産党系の大衆組織は内輪の運動になりがちで、高齢化がはなはだしい。ロシアのウクライナ侵略で「何かできることをやりたい」と思う若者はたくさんいるはずなので、彼らに行動への回路を工夫して提供すべきだと思う。
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キエフ、ハリコフへの総攻撃が近いとの観測がある。
BBCは首都キエフの前線から3キロの地点で特派員がリポート。ウクライナの兵士と市民が道路にバリケードを築いて、ロシア軍を待ち受けている。今後、ロシア軍のキエフへの総攻撃の可能性があるという。
日本のメディア企業が戦場から去る一方で、友人のフリージャーナリストの遠藤正雄さんと新田義貴さんがキエフに入った。無事の帰還を祈っている。
(遠藤さん、新田さんについては以下)
遠藤正雄さんがカブールに一番乗り - 高世仁の「諸悪莫作」日記
きのう紹介したマリウポリの産院爆撃は映像が世界に回ったこともあって、大きな波紋を呼んでいる。とくに欧州からの憤激の声が高い。
これをロシアがフェイクニュースだと完全に否定。
あの産院は早くに「アゾフ連隊」(注)が占拠して医療スタッフ、子どもや妊産婦は追い出されて中にはいなかったと主張。CNNがでっち上げたウソの物語だとして、一大争点になっている。
(注)アゾフ連隊(大隊)とは、ウクライナ内務省管轄の準軍事組織である国家親衛隊の一部。ネオナチ的な傾きがあるとされる。マリウポリが本拠地。
これに対し、BBCはこのモデルはマリウポリ在住で妊娠中である事実をつきとめ、彼女が実際に爆撃に巻き込まれたと反論した。
欧米のメディアは現場での情報収集だけでなく、ファクトチェックも精力的に行っているようだ。結果はもちろん、ロシアがいつも嘘をついているのは明白。プーチンは直前案でウクライナを攻撃しないなどと明言していたはずだ。プーチンが言ってることはウソばかり。
国連も現地からの聞き取り調査で、CNNの報道が正しいと確認したが、これからロシア発のフェイクニュースが山のように出てくるだろう。注意しよう!
ウクライナでは、情報戦も戦われているのだ。
戦争が始まった直後から、市民が攻撃を受けているとされるジトーミルという町の名前が出てくる。首都キエフから西に130キロの都市だ。
ジトーミルは、私が初めてウクライナに入った1990年に取材した街だった。「チェルノブイリ救援・中部」という名古屋を中心にした支援団体と一緒に原発事故の被害などをこの街で聞き取った。今回、ミサイルが住宅地に撃ち込まれて多くの犠牲が出ているという。ご縁のある人たちはどうしているだろうか。
UNHCR(国連難民高等弁務官事務所)によれば、国外へ避難した人の数は250万人を超えた。一方、迫りくるロシア軍と戦おうと、女性も高齢者も軍に志願しているという。
今のまま、ロシア軍が総攻撃をかければ、市民にすさまじい犠牲が出るだろう。そうした事態が避けられるよう祈りたい。