岸田内閣で拉致問題の進展はあるのか

 また11月15日が来た。今から44年前の1977年のこの日に、横田めぐみさんが新潟市で行方不明になった。 

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TBSニュースより

 13日、拉致被害者の早期帰国を求める集会が都内で開かれ、岸田首相は「私の手で必ず拉致問題を解決しなければならない」と決意を語った。

 一方、めぐみさんの母、早紀江さんは「なぜもっとたくさんの人たちと一緒に心を合わせて、よい知恵を出していただくことができなかったのでしょうか」と政府にいらだちをぶつけた。

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 これまで政府は、拉致問題は最重要課題と繰り返してきたが、何も動かせていない。岸田内閣はこの問題を進展させられるのだろうか。

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 政府の拉致問題への取り組みを振り返ると、本気でこの問題を解決しようとしているのか疑問になる。例えば、北朝鮮側からの「中間報告書」の受け取り拒否の問題だ。

 2014年、横田夫妻の孫ウンギョンさん一家との面会をきっかけに、ストックホルム合意が結ばれ、北朝鮮拉致被害者を含む日本人行方不明者の再調査などを行い、日本が独自制裁の一部を解除することになった。

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 ところが、北朝鮮側から合意にもとづく調査の「中間報告書」の提示の申し出があったが、日本側はこれを受け取らなかったといわれている。そうこうしているうち、16年1月に北朝鮮が核実験。翌月、日本が新たな独自制裁に踏み切り、北朝鮮が再調査を中止して合意は崩壊した。

 問題は、「中間報告書を提出しようとしたのに、安倍が受け取りを拒んだ」とする北朝鮮側の説明の方が事実らしいということだ。

 ストックホルム合意の中間報告書をめぐるやりとりの中で、北朝鮮側から、田中実さん(78年6月ごろ行方不明になった飲食店店員で当時28歳)と金田龍光さん(79年11月ごろ行方不明になった。当時26歳)の2人が北朝鮮で生存しているとの情報が日本側に知らされていたとされる。これは共同通信がスクープとして伝えていた。

 田中実さんは日本政府認定の拉致被害者17人に含まれる。北朝鮮は2002年の小泉訪朝の際、田中実さんについては「入境を確認できない」として拉致を否定していた。

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abemaTVより

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兵庫県警のHPより

 彼ら二人の拉致と生存を北朝鮮が認めたことが事実とすれば、小泉訪朝以来、初めて大きな進展にできる可能性があったはずだ。

 二人の生命にかかわる重大情報であって、政府はすぐにその真偽を確認し、二人に面会するなどするのが責務だろう。

 だが、日本政府はこの情報を北朝鮮側から知らされたこと自体を認めず、「中間報告書」の受け取りを拒否したことを今なお伏せている。

 それはなぜか?
(つづく)

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 お知らせです。
 明日、アナザーストーリーズ「めぐみさん拉致事件 横田家の闘い」のアンコール放送があります。ご覧ください。
 NHKBSプレミアム 11月16日(火)午後9:00~午後10:00(60分)
《ある日突然、愛する娘の姿が消えた。13歳の少女が北朝鮮に拉致された「横田めぐみさん拉致事件」。家族は絶望の中、めぐみさんを探し続けた。北朝鮮の犯行とわかったのは事件から20年も経ってから。今年6月には娘を取り戻そうと戦い続けた父・滋さんが亡くなった。双子の弟、拓也さんと哲也さんは拉致被害者救出の最前線に立つことを決意する。そして母・早紀江さんを励まし続けた友人たち…。横田家の闘いの日々に迫る。》(初回放送日: 2020年12月1日)

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番組では、拉致問題を取材した一人として私も登場します