雑誌『f/22』が「お金とドキュメンタリー」を特集

 一昨日、四谷から早稲田まで、雨の中、歩いて行った。散歩が好きなので、雨でも苦にならない。

 途中、弁天町(新宿区)を通りかかったら、水玉模様の特徴的な建物がある。「草間彌生美術館」だった。
 道をはさんだ向かいには〈関孝和の墓〉の案内板があり、誘われるように枝道に入って浄輪寺というお寺へ。

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 算聖と言われたそうだ。ソロバンで微分積分をやった人、くらいしか知らないが、17世紀にすごいことをやっていたものだ

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お墓のそばには、雨に濡れたキキョウが。

 歩くといろんなものに出会える。これが楽しい。
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 きょう、ドキュメンタリーの雑誌『f/22』の第3号が届いた。

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301頁のすごいボリューム。表紙はじめ、凝ったつくりになっている

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小口には"Wish You Were Here MONEY TALKS"とある。シャレてるな

 fはカメラの絞り値で22まで絞ると近景、遠景とも合うパンフォーカスになる。f/22は、私も一緒にお仕事をしたことがある満若(みつわか)さんという若いカメラマン・ディレクターが立ち上げ、彼と志あるドキュメンタリストたちが手弁当で作り続けている雑誌だ。

 みなさん忙しい中、たいへんな手間暇をかけて出版しつづける熱意に敬意を表します。よくやるよ、ほんと。

 今回の特集は「お金とドキュメンタリー」で、私のインタビュー「倒産劇の裏に見えた“報道業界の現実”」が載っている。倒産からあまり時間がたっていない時期のインタビューで、読み返すと、かなり赤裸々な内容になっている。関係者が読んだら怒鳴り込んできそうだ。
 倒産後だから話せるテレビ局批判もある。一般の人にも興味のありそうなところをちょっと紹介してみよう。
 テレビ局が「コンプライアンス」漬けになっている話。

高世
 《取材だけでなく、編集の段階でも、コンプライアンスや安全の管理が非常に強まっています。ある民放の番組で、昔なら番組のプロデューサーがプレビューすれば良かったんだけど、今は、局長から部長からおえらがたがみんな来て、プレビューするんです。このえらいさんたちは僕の知っている人で、以前は第一線でやってた人なんだよ、バリバリと。でもえらいさんになったからかな、とんでもないこと言うんだよね。主人公が道路の右側を歩いていたけど、そこが歩きにくくなって道路を渡って左側を歩きだしたシーンがあった。そしたら、「この横断は法に反していないのか?」と。ただ歩きやすいほうに行っただけなのに、それが道路交通法上どうなのかみたいな、恐ろしい話になってるの(笑)。本筋とまったく関係ないことなのに。
 それから映像のチェックではこんなこともあった。沖縄の辺野古で座り込みやってる写真を紹介したら、プレビューにきたえらいさんがね、「座り込みやってる中に顔が写ってる人がいるが、その人の許可はとってんのか?」っていうんですよ。そんなこと言ったら、デモなんか撮影できなくなるじゃないですか!さすがに僕は呆れちゃって、「この人たちはデモとして自分たちの抗議の意思をみんなに見せるためにやっているのです。周りには報道陣がたくさんいるんです。見てくださいとアピールしているんですから、許可がどうのこうのは筋違いですよ。」って言ったら黙ったけど、そういうレベル。もう、恐ろしいレベル。・・》

 この第3号のお金をめぐる特集では、フジTV「ザ・ノンフィクション」のプロデューサーを長くつとめた味谷(みたに)和哉さん、映画製作・配給会社「シグロ」代表の山上徹二郎さん、監督・プロデューサーの大島新さんなどがインタビューに答えている。

 第2特集は「撮る、という関係性について」。日本電波ニュース社の谷津賢二さんがアフガンでの中村哲先生との20年以上にわたる関係を語っているほか、映画『童貞。をプロデュース』をめぐる問題について、かつて私の会社「ジン・ネット」社員だった貴家蓉子さん(f/22編集委員)が評している。

 満若編集長による「20年目のNHK番組改変事件」は、「女性国際戦犯法廷」の番組が政治家の圧力で改変された問題を20年たって検証していて、興味深い。

 テレビ界をめぐる状況やドキュメンタリーに関心をもつ方にはお勧めです。