統一協会によるスラップ訴訟との闘い

 きょう午後、東京地裁で「旧統一教会スラップ訴訟・有田芳生事件」の第1回口頭弁
論があった。傍聴席68は満席。

東京地裁

 この訴訟は、去年8月19日の日本テレビ「スッキリ」にゲストとして出演した有田さんの以下の発言が名誉棄損だとして、世界平和統一家庭連合(旧統一協会)が有田芳生さんと日本テレビ放送網に損害賠償を求めて起こしたものだ。

「一時期距離を置いていた国会議員たちも、もう一度あの今のような関係を作ってしまったっていう、その二つの問題があるというふうに思うんですが、どうすればいいかっていうのは、やはりあのもう霊感商法をやってきた反社会的集団だってのは警察庁ももう認めているわけですから、そういう団体とは今回の問題をきっかけに、一切関係を持たないと、そういうことをあのスッキリ言わなきゃだめだと思うんですけどね。」

 統一協会側は、この発言が原告(統一協会)の「社会的評価を著しく低下させ、その名誉を棄損する」として慰謝料2200万円と謝罪広告の掲載を求めて10月27日に提訴している。

 有田さんは意見陳述の最後を以下のように締めくくった。

統一教会は私の発言を名誉棄損としました。『霊感商法統一教会』とは、日本社会ですでに40年以上も前から広く知られている事実です。警察庁による監視もまた事実です。いまさら私の小さな発言で教団の名誉がさらに低下するでしょうか。

 ましてや私が統一教会から訴えられたのは、自民党幹部は教団との関係を断つべきだとの長い発言の文脈から離れた短い意見についてでした。それから私のテレビでの仕事は一切なくなりました。メディアも様変わりで、統一教会の狙い通りです。教団や信者弁護士はさぞかしうれしかったことでしょう。教団は根源的な批判的言論から一時的に逃げることができたとしても、事実と真実を隠すことはできません。

 私は今回訴えられたことを誇りに思っています。私はこの裁判を通じて、統一教会の反社会性を徹底的に明らかにしていきます。

 闘争宣言である。私を含め何人かが拍手したら、裁判長から「拍手はしないように」とたしなめられた。(笑)

 教団は去年9月29日、以下の3件の訴訟を提起している。

①    紀藤正樹弁護士と読売テレビ(「文鮮明死後の分派の一つが、信者に売春させたという事件まである。お金を集めるためには何でもするという発想」という「ミヤネ屋」7.20OAでの発言)、

②    八代英輝弁護士とTBS(「かずかずの消費者被害を生んだカルト団体。外形的犯罪行為に着目している」との「ひるおび」9.1OAの発言)、

③    木村健太郎弁護士と読売テレビ(「司法の判断として、布教活動自体が違法で、違法な組織と裁判所が認定済み」との「ミヤネ屋」9.2OAでの発言)

 さらに有田芳生裁判提訴と同日、10月27日には以下を訴えた。

④     紀藤正樹弁護士とTBSラジオ(「統一教会暴力団を使って信者を偽装脱会させて問題となった時期がある」との「おはよう一直線」9.9OAでの発言)

 これらはみなスラップ訴訟と見られている。

 口頭弁論のあと、日比谷図書館で報告集会があり、世耕弘成経済産業大臣から2019年にtwitter上の発言で名誉棄損訴訟を提起された中野昌宏青山学院大教授から連帯の挨拶が届いた。やはりこれもスラップ訴訟だった。

「スラップというのは基本的に言論事件です。事実を争うというよりは、自分を追求してくる『敵』を消耗させ疲弊させることが目的です。そのためなら、少々お金がかかっても、裁判自体に負けてもいいのです。相手が『そんな面倒なことになるなら、黙っておこう』となればしめたものなのです。

 そうしたコストを余裕で払える強者―とくに組織―が、もの言う個人を押さえ込む。このような、裁判制度の悪用がスラップ訴訟の本質だろうと思います。統一教会が有田さんや紀藤弁護士などを訴えたのも、有田さんや紀藤弁護士が弱者というわけでは必ずしもなくても、統一教会追求者の力を少しでも削ぎ、足止めするとともに、有田さんたち以外の人々も同時に萎縮させることが目的でしょう。

 したがって、私たちは萎縮してはなりません。いま攻撃されているのは有田さんたちだけでなく、おかしいことはおかしいと口にする、私たち全員なのですから。(略)

 組織に対抗するには、こちら側も束になる必要があるでしょう。連帯してがんばりましょう。」

 私も名誉棄損で訴えられたことがあるが、裁判はものすごい労力、費用、時間がかかり疲れることを実体験している。もう裁判なんかいやだと思ってしまう。訴訟を提起する方は、それが狙いだ。同時に他の人たちに「あの組織に盾つくとえらい目にあう」ことを見せつけて批判を封じようとする。

 実際、今回の訴訟が起こされると、テレビ局はじめマスコミが有田さんを出さなくなった。スラップ訴訟は大きな効果を発揮したわけで、この限りでは教団側の「勝ち」である。

報告集会はおよそ150人が集って熱気があった。島薗進東大名誉教授の記念講演「統一教会問題の特異性」もあった(有田さんのツイートより)

報告集会で発言する東京新聞の望月衣塑子記者。他に佐高信さん、鈴木エイトさんらが発言。

 報告集会で応援の発言に立った評論家の佐高信さんは、マスコミはまた統一教会のことを報じなくなっていて「再び空白の30年か」と思わせると懸念する

 この裁判に勝利するのが大事なのはもちろん、私たち自身が萎縮しないぞという姿勢を保ち続けることが肝要だ。

報告集会が終った夕方の日比谷公園。緑が美しい。

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 12日、日本維新の会の梅村みずほ参院議員入管難民法改正案の審議で、入管施設に収容された外国人の支援について「支援者の助言は、かえって収容者にとって見なければよかった夢、すがってはいけない『わら』になる可能性もある」と述べ、一昨年に名古屋入管で亡くなったスリランカ人のウィシュマ・サンダマリさんの事例を取り上げ、長期収容を避けるため、難民申請中の送還を可能とする改正案に賛成した。

 梅村氏は「資料と映像を総合的に見ると、よかれと思った支援者の一言が、ウィシュマさんに『病気になれば仮釈放してもらえる』という淡い期待を抱かせ、医師から詐病の可能性を指摘される状況へつながったおそれも否定できない」と主張。面識のない収容者に次々と面会する支援者がいることを批判した。

 つまり、支援者が「病気になれば仮釈放されるよ」と入れ知恵したのでウィシュマさんが病気のふりをした可能性があるという意味だろう。長期収容者の実態を知る人たちを激怒させる発言だ。梅村議員は維新を代表して質問しているわけで、この党の見識が問われる。

 梅村議員はツイッターで「本日、参議院本会議にて初登壇させていただきました。少しばかり、波乱の初陣となってしまいましたが、Twitterにも新しくフォロワーさんが増えてありがたいことです!」と得意げな様子。恥知らずとはこのことだ。

 梅村議員の発言について、入管への長期収容問題を長く取材してきた友人のジャーナリスト、樫田秀樹さんが、冷静に事実関係の無知を指摘した。

「被収容者は病気になったからといって即仮放免されない。私も収容施設で多数の被入所者と面会したが、病気になる→即仮放免との事例は一例も知らない」と。

 入管は被収容者が「体調が悪い」と訴えても、仮放免をするどころか、そもそもちゃんとした治療や入院の手配をしない。それがウィシュマさんの死を招いたのだった。前提となる状況認識が間違っていれば、結論がおかしくなるのは当たり前だが、そもそも事実を見ようとしていないのだろう。
 
 自民党の谷川とむ衆院議員「ウィシュマさんのビデオを見るまで、入管職員がウィシュマさんを邪険にしているのではないかと思っていたが、よく声をかけたり、よく話を聞いたり、献身的に対応していた」。マジ?

「入管職員の対応を見ると、ウィシュマさんによく声をかけたり、よく話を聞いたり、介助や身の回りの世話を献身的に対応していたと感じました・・・」と谷川議員。これには絶句する


 入管の冷酷で残酷な対応はウィシュマさんの妹を号泣させたのだが、谷川議員、どれほど偏見に満ちた目で、あの映像を見たのか。こうやって事実は捻じ曲げられていく。