チェルノブイリ原発事故から35年

 節季はもう穀雨(こくう)になってた! 穀物の成長のための雨の時節。種蒔きがはじまる。

 20日から初候「葭始生」(あし、はじめてしょうず)。
 次候「霜止出苗」(しもやみて、なえいずる)が25日から。
 末候「牡丹華」(ぼたん、はなさく)が30日から。

 穀雨がすぎると次は「立夏」だ。はやいな。
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 どこにいってもこのオレンジの花を見かける。ナガミヒナゲシ

 「地中海沿岸地域の外来種で、1961年に初めて東京都世田谷区で確認」されたというが、いまや日本列島のすみずみにまで広がったようだ。

 繁殖力が強く、ほかの植物の成長を妨げる成分を放出することから「生態系に影響を与える植物」とみなされ、国の駆除対象となる「特定外来生物」や「生態系被害防止外来種(要注意外来生物)」には指定されていないが、多くの自治体では「在来植物の生育に影響を与える可能性がある」として注意を促しているという。

 すっかり悪者にされているのだが、勢いよく繁殖して生息域を広げているということは、「進化論」的にいうと、この植物は日本の環境によく適応しているわけだ。

 一方、やはり今がさかりのムラサキハナナ(ハナダイコン)。これは中国から入った植物だそうで、戦後、「平和の花」として積極的に広められたこともあるという。

takase.hatenablog.jp

 同じ外来種の雑草なのに、悪者にされるのと好ましく受け入れられるのがあるのはなぜか?
 知りたい。ご存じの方、教えてください。
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 26日、チェルノブイリ原発事故から35年たった。

 ウクライナチェルノブイリ原発4号炉が、核分裂反応の制御に失敗して爆発、炎上した史上最悪の原発事故で、周辺住民16万人が避難した。
 放射性物質は風に乗って北半球の全域に拡散、日本にも到達して大騒ぎになった。

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事故現地の追悼式典。処理で「特攻隊」になった消防士ら30人が放射線にむしばまれて亡くなった。

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現地には内外からツーリストがたくさん訪れている。2011年に私が行った時もすでに観光地化していた。被災者がガイドをしている。


 ウクライナのゼレンスキー大統領は、観光のために立ち入り制限地域を観光客に開放するという大統領令に署名した。

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観光もいいが、被災者のことを第一に考えてほしいと批判する意見もある

 賛否両論あるが、人類の負の遺産として、ツーリズムを受け入れていくことには意味があると思う。

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チェルノブイリ事故資料館。たくさんの子どもたちが熱心に見学していた(2011年4月高世撮影)

 「トリップアドバイザー」の10 Best Japan Tourist Attractions 2021(外国人旅行者にもっとも人気の日本の観光スポット)はどこでしょう。たぶん日本人は思いつかないだろう。

 なんと広島の「原爆資料館」だ!
 6年連続1位だった「伏見稲荷」を去年抜いた。

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jw-webmagazine.com


 原爆の記憶が今も受け継がれているのには、被爆の歴史を積極的にアピールしてきたことが大きいと思う。しかし、ここまで外国人に名が通っているとは驚きだ。

 東日本大震災もその風化を防ぐ一つの方法として、広島の努力を教訓にしてもよいのではないか。外に開かれたものにしていくことが大事だ。

 ところで、私はチェルノブイリ現地を2回取材している。

 2回目は2011年の東日本大震災の直後だった。
 そこで発見したのは、放射能自体の人体への被害よりも、長年暮らした土地から切り離されるなど、「生活」が破壊されるダメージがはるかに大きいことだった

 私は帰国して、東日本大震災原発事故で避難する人たちへのケアを訴えた。じっさい、福島でチェルノブイリと同じことが起きた。

 長引く避難生活で体調が悪化して死亡した「震災関連死」と認定された人は、2011年の311から今年3月9日までに、全国で3775人に上っている。これには自殺なども含まれる。
 県別に見ると、福島県が2320人と最も多く、宮城県が929人、岩手県が470人で、やはり原発事故で故郷の暮らしを奪われたストレスが大きいことがわかる。

 もう一つ、チェルノブイリ取材で衝撃だったのは、当時すでに事故から25年たっていたのに、後処理がおどろくほど進んでいなかったことだ。

 チェルノブイリ原発は事故後、「石棺」と呼ばれるコンクリートの「箱」で覆って、放射性物質が漏れないように封鎖した。20年たって、ひび割れもでき、水も漏れてくるので、10年くらいかけて鋼鉄で新しいシェルターを造り、2016年12月に石棺の上にかぶせた。

 この建設には莫大な費用がかかり、日本も負担している。2011年はその工事中だった。工事担当者に聞いたら、新シェルターは〝100年もつ。そのうちもっと良い技術が出てきて何とかなるだろう〟というのだった。
 中に200トンもの放射性物質があって、これをどう取り出すのか。シェルターをずっとメンテナンスするコストも考えると気が遠くなる。

 原発とは、いったん事故になったら、とんでもなく高くつくものだなと教えられたのだった。

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  チェルノブイリ事故35年関連で、ひとつ、ホッとするニュースがあった。
 原発事故で被曝した親から生まれた子どもの遺伝子の変異を調べたところ、通常の人と変わらなかったとする分析を、米国などの研究チームがまとめたのだ。

www.sciencemag.org

 米科学誌「サイエンス」に載った”No excess mutations in the children of Chernobyl survivors, new study finds”によると、今回の結果では、遺伝子に異常はなく、人体への影響は「最小限」と結論づけているという。(朝日新聞記事による)

 当時の原発作業員や70キロ圏内にいた住民を親に持ち、87~2002年に生まれた130人を対象に、親の被曝と遺伝子に生じた変異の関係を調べている。すべての遺伝情報を調べる全ゲノム解析の結果、親の被曝線量の多さと子の遺伝子の変異の数に関係は見られなかったという。広島や長崎の原爆被爆者の研究でも、親の被爆が子の遺伝子の変異に影響するという結果は確認されていない。

 昔むかし、『若者たち』という映画があって、たしか主人公の山本圭が、被爆2世の娘と恋仲になり、結婚しても大丈夫か、放射能の影響があるんじゃないかと心配する兄弟たちを「親が被爆したって子どもには影響ない。医学的に証明されているんだよ」と説得するシーンがあったな。

 このニュースは、福島の人たちを安心させるだろう。