放射能による健康被害7-ホルミシス効果

takase222011-06-21

琉球月見草。
あっけらかん、という感じで咲く、初夏の花だ。
自分で育てたことはないが、強くて世話のかからない花だという。原産地が北アフリカと知って驚いた。内戦状態のリビアにも咲いているのだろうか。
15日のブログで、有田芳生参院議員の勉強会に招かれたことを書いた。
そのとき、私は、チェルノブイリの立入り禁止区域に住む人々を取材して、土地を捨てて移住することのストレスの大きさと、将来のがんの可能性が多少増えることを天秤にかければ、年配の人で、そこの汚染度が極端に高くないかぎり、そのまま住み続けるほうがよいと思うと発言した。
これについて、会場から反発の声があがった。
長期にわたる低レベル被曝、内部被曝の問題を軽視しているという意見だった。
たしかに、私の発言の前提は、ICRP(国際放射線防護委員会)の「累計で100ミリシーベルト放射線を浴びると、将来的に、がんや白血病のリスクを0.5%増やす」という外部被曝を中心にした知見を前提にしていた。
私の発言は、がんのリスクがちょっと上がるくらい大したことないじゃないか、というふうに聞こえたと思う。
低線量被曝、内部被曝については、たくさんの議論があって、決着していないようだ。
一方には、低線量被曝は、体によい「ホルミシス効果」があるという考え方があり、岡山大学ラドン温泉の三朝(みささ)温泉にホルミシス効果を治療に応用する医療センターを置いている。
他方、低線量被曝の方が、むしろ危険だという立場がある。
代表的なものとして、「長時間、低線量放射線を照射する方が、高線量放射線を瞬間放射するよりたやすく細胞膜を破壊する」とする「ペトカウ効果」の学説がある。
肥田舜太郎/鎌仲ひとみ『内部被曝の脅威』ちくま新書、P91)
CRPは両者とも認めないが、ヨーロッパの「緑の党」をバックにしたECRR(放射線リスク欧州委員会)は低線量の内部被曝を非常に重視してICRPと対立している。
先日、とても興味深いドキュメンタリーを観た。
“Chernobyl−A Natural History?”(チェルノブイリ、一つの自然史?)で去年、フランスで製作されたものだ。NHKのBSで「チェルノブイリ、被曝の森はいま」というタイトルで放送された。
チェルノブイリ一帯は、「急性被曝期」から「慢性期」になり、放射線量ははるかに低くなったが、食物連鎖を通してあらゆる生物が体内に放射性物質を取り込む時期に入っている。
このチェルノブイリの森で、二つの対照的な研究結果が出たという。
一つは、米国テキサス工科大学と国際放射生態学研究所の共同研究で、まず、チェルノブイリの森に住むネズミを調べると、予想に反して、突然変異した遺伝子の割合が非常に低かった。何の問題もなさそうに見えた。
低線量被爆した動物は、放射線に適応するための新たな能力を獲得するのではないか。
そこで、こんな実験をした。
原発事故の放射能の影響で、松が赤くなったことで知られる「赤い森」にマウスを45日間、置き、別のマウスを汚染されていない区域に置いた。
「赤い森」のマウスは、γ線を毎日通常の1千倍浴び続けたことになる。1千倍は「高い!」と思うかもしれないが、これは低線量被曝だ。
そのあと、両方のマウスに1.5グレイという大量の放射線を数分の1秒、浴びせた。これは、普通なら細胞の分子、特にDNAが破壊される量だ。
「赤い森」で低線量被爆させておいたマウスとそうでないマウスとで違いは出るのか?
結果は、低線量被爆させたグループは、DNAの損傷レベルが低かったのだ。
放射線に強い「スーパー・マウス」ができたのか。
ホルミシス効果を実証するかのようなこの結果は、どういうことなのか。
(つづく)