すごいぞ!台湾のシビック・ハッカー

 14日、全国の一日あたりのコロナ感染者数が4000人を突破。大阪は1130人!

 14日の参院本会議で立憲民主党の杉尾秀哉氏から「こうした危機的状況でも、第4波ではないと言い張るのか」と問いただされた菅義偉首相、「全国的な大きなうねりとまではなっていない」と寝ぼけたことを言っている。

 先月、厚生労働省の職員20人余りが送別会を開いた問題で、その後、同じ部局で新型コロナウイルスへの感染が確認された職員が、少なくとも15人に上っていることが判明。クラスターが発生しているようだ。
 政権トップに危機感も当事者意識もないからこうなるんだよ。

 目を海外に転じると、台湾では感染を抑え込み続けていてすばらしい。
 最近、台湾のすごさに関心することが多い

 対コロナ政策では、台湾は入国規制などのいち早い初動とともにマスクマップの公開などユニークな取り組みでも注目された。

 このブログでも以下のように紹介していた。
 1月21日に台湾で初の感染。
 マスクの品不足を知った台南市プログラマー呉展瑋さんがグーグルマップを使ったマスク供給地図(利用者が店で見たマスクの在庫を入力すれば、サイト閲覧者は購入可能な店を見つけられる)を作り、2月2日に無料公開した。
 この取り組みに対し、唐鳳(オードリー・タン)デジタル担当相は当局のマスク供給計画を公開し、それを生かして地図を改良するようネット上で依頼。プログラマーたちが大挙して応じ、数日後には無料で使える地図が30種類以上ネット上に現れた・・。
https://takase.hatenablog.jp/entry/20201221

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いまや「偉人」といってもいい唐氏

 今朝の「おは日」特集「台湾 新型コロナ対策の裏で躍動する”シビックハッカー」で、この動きの背景を詳しく報じていた。

 先のブログに紹介した呉展瑋さんがマスク供給地図を公開すると、そのすぐ翌日に唐鳳(オードリー・タン)大臣が「公開はちょっと待って」と連絡してきたという。

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呉さんのマップ公開の翌日、2月3日に唐氏から連絡があった。Feb 3rd 9:29amとある

 呉さんのマップは市民からの情報だけでつくっているが、政府の情報を公開するから、それも使ってさらに信頼性のあるマップにしてほしいと要請してきたのだった。
 そこで呉さんはじめ多くの「シビックハッカー」が協力して、どの店に大人用、子ども用マスクがどのくらいあるかが一目でわかるマスクマップができた。

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呉さん。当局が情報公開したのでマスクマップの開発を進めることができたと語る

 シビックハッカーとは耳慣れない用語だが、「社会問題の解決に取り組む民間のエンジニア」だそうだ。
 台湾のコロナ対策がうまく言っているのは、政府と民間の信頼関係の強さがあるからだと納得した。それは政府が積極的に情報を公開し、大胆に民間への協力をもとめる姿勢を見せているからだ。
 これは今の日本政府にもっとも欠けている点だと思う。国民に隠すことばかり考えている菅首相、台湾政府に学んでください。

 私はITの方面には疎いのだが、台湾は、この「シビックハッカー」の数は世界でも3本の指に入り世界をリードしているという。

 「g0v 零時政府(gov-zero)」という台湾のシビックハッカーのコミュニティがある。g0v.asia

 

 サイトにはこうある。

 Ask not why nobody is doing this.

 You are the "nobody"!

 「なんで誰もこれをやらないの?」と問うのはやめましょう

  あなたがその「誰」なんです

 g0v is a decentralized civic tech community from Taiwan.

 We advocate transparency of information and build tech solutions for citizens to participate in public affairs from the bottom up.

(g0vは台湾発の非集中的な民間技術コミュニティです。
 我々は、市民がボトムアップで公共の事柄に参加するために、情報の透明性を提唱し技術的な解決策をつくります)

 こういうことをスウッと言えるなんて、いいなあ!しびれます。

 数字のゼロを使った〈g0v〉という名称は、政府の略称が、government に由来した〈gov〉であるのに対し、彼らは「政治をゼロから再考する」というスタンスを表したものだそうだ。

 呉さんも唐鳳大臣もg0vのメンバーで、先の「ちょっと待って」のやり取りもこのコミュニティのサイトで連絡し合っている。

 このコミュニティは隔月で「ハッカソン(hackathons)という集まりを開き、実践報告や政策提言を意見交換している。

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隔月のハッカソンでの報告

 また2年に一度Summitが開かれる。

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g0v Summit 2020

 世界がコロナ禍で大きな集会がままならない中、去年12月3日からg0v Summit 2020が台湾南部の台南で4日間にわたって開催された。
 台北から新幹線で片道約1時間半かけて来場した人の数およそ500名。そこにリモートによる参加者200名も加わり、全97の熱いセッションやワークショップが行われたという。https://www.imagazine.co.jp/g0v-summit-2020/

 NHK「おは日」の特集で、ああやっぱり!と納得したのが、g0vの発起人、高嘉良さんの素性だった。

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高さん「活動の継続には、ふだんから改革を進め、みんなに参加してもらうことが大切です。社会全体で考えると、改革できることはまだまだあります」

 高嘉良さんの活動の原点は、あの「ひまわり学生運動」だったのだ。2014年台中間の「サービス貿易協定」の批准に向けた審議をめぐって、学生たちが立法院(国会)に突入して占拠したことから始まる一連の運動だ。

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2014年学生たちが国会を占拠した

 高さんは連日、国会からネットで運動を中継していたという。いわば「学生運動あがり」の経歴。あの運動はこういう人物を排出していたのか・・。大きな社会運動は、社会全体を成熟させるのか。

 台湾に驚かされることは数えきれないが、リベラルな意識が市民に根付いていることにも感心させられる。
 台湾は、同性愛者の権利運動の先頭に立っており、2019年5月にはアジア初となる同性婚の法制化が実現
 去年10月31日には台北で恒例の、性的少数者LGBT)のパレード「台湾LGBTプライド(Taiwan LGBT Pride)」が行われ、14万人が市内を練り歩いたという。1400人じゃなくて、14万人!ですよ。

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LGBTパレード(台北

 唐鳳(オードリー・タン)というトランスジェンダーにして35歳の若さで(しかも中卒)入閣するなどということが日本で考えられるだろうか。

 また、いつのまにか世界一の半導体生産国になった、ものづくりの実力も大したもの。

 「民度が違う」と言われそうだな。いや、民度の高い国民はそんなこと言わないか。