やった!入管法改正案の今国会での成立断念が決まった。
与党は当初、強行採決も辞さないというかまえだったが、事実上の撤回に追い込まれた。
支持率急落で菅内閣が弱気になり、都議選を控えた公明党がビビったことが後押ししたが、直接の要因は入管法の酷さが市民に広く知れ渡り、反対の声が大きく広がったことだ。支援者らが反対運動を盛り上げ、収容経験ある外国人も「帰国したら殺される」とカミングアウトして反対をアピールした。
来日中の、名古屋入管で亡くなったスリランカ女性のウィシュマさんの妹さんたちはきのう18日午後6時、法務省で上川陽子法相と面談した。上川氏は「心からお悔やみ申し上げたい。最終報告が出たら責任を取りたい」と言葉をかけた。一方、これに先立ち面談した佐々木聖子出入国在留管理庁長官は「最終報告後も(ウィシュマさんが収容中の様子を映した)ビデオは開示しない」と伝えた。遺族は納得しておらず、ビデオが開示されるまで日本での滞在を延長する方針だ。(東京新聞、望月衣塑子記者)
政府は法案を次の国会に持ち越すとしている。
改正案の内容を抜本的に変えることとウィシュマさんの死亡の真相解明は、今後も要求していかなければならない。
次の闘いへのスタートだ。
・・・・・・・・
ウイグルでの迫害を暴露したドキュメンタリー「中国 デジタル統治の内側で~潜入・新疆ウイグル自治区~」(原題:Undercover: Inside China’s Digital Gulag)のつづき。4回目。
サデルデン(男性)
「妻と連絡が取れなくなってもう2年がたちます」
彼はサデルデン。カザフスタンに住んでいます。
妻のムヤッサルは中国にすむ両親を訪ねたさい、中国政府が「教育訓練センター」と呼ぶ施設に収容されたと見られています。3人の子どもたちは、もう2年以上、母の帰りを待っています。
拘束された直後、ムヤッサルは主要施設らしき場所から短い動画を密かに送信しました。
家族へのメッセージも録音されていました。
「子どもたちをお願い。体を大切にね」
カザフスタンでウイグル族の人権活動に取り組むサデルデンは、妻の情報を求めて、中国との国境地帯へ向かいます。
携帯電話のカメラで目立たないように撮影しました。
「中国のSIMカードが必要なんだ。向こうに友達がいるものでね」
中国の知人に電話するには中国のSIMカードが欠かせません。
国外の番号からの通話は、当局に盗聴される可能性があります。
「もしもし、お元気ですか?」
妻を知る人に連絡がつきました。
「サデルデンです。ご家族もお変わりありませんか?」
中国の監視システムが特定の単語に反応するため、暗号を使って話します。
「ムヤッサルは?」
―「勉強」してる
「いつごろ終わりますかね?」
(電話が切れてツーという音)
「もしもし?」
勉強とは施設への収容を意味します。
「理由も言わずに電話を切られた。彼の声からは、明らかな恐怖が伝わってきました」
国境の向こう側は、中国の新疆ウイグル族自治区で、イスラム教徒のウイグル族が多く住んでいます。
彼らは固有の言語や文化を守って暮らしてきました。
いまカザフスタンのウイグル族が中国の親戚を訪ねるのは危険です。
拘束される恐れがあるのです
・・・・・・・・・
ドイツ ミュンヘン
彼女はグリジラ。ドイツに住むウイグル族の女性です。1年半前、妹から恐ろしいボイスメッセージを受けとりました。
妹のグリギナ
「私が実家に戻ったあと、姿を消しても、誰にも、何も言わないで。どこにいても盗聴されてる。誰もが見張られている。」
妹のグリギナはマレーシアに住んでいましたが、新疆ウイグル自治区に残る両親との連絡が途絶えたため、帰国することにしました。
「帰国する時、妹は約束しました。毎週、SNSの画像を更新して無事を知らせると」
「2018年1月、SNSの画像が薄暗い部屋の写真に変わったんです。私は妹を捜し始めました。
グリジラは故郷の友人から、妹が収容施設にいると告げられました。
「妹からの最後のメッセージは47秒。
声:グリギナ「メッセージがあれば送っておいて。あすの朝、友達の携帯で聞くから。じゃあお姉さん、元気でね」
「妹を近くに感じます。声を聴くたび癒やされるけれど、悲しくてたまらない」
同じころ、海外に住む多くのウイグル族が故郷の親族と連絡が取れなくなりました。
・・・・・・・
【カザフスタン】
カザフスタンを訪れた私たちは、収容された経験をもつ2人のカザフ族の女性から、施設の実態を聞くことができました。
「拘束の理由は、アメリカの対話アプリを入れたこと。
ラヒマ 12か月拘束
「施設では、ゾンビみたいに無感覚になっていき、解放される日のことしか考えられなくなる」
グリズラ 17ヵ月収容
「宿舎の室内には、回転式の監視カメラが5台。教室にも同じカメラが。
鉄格子と金網だらけ。2分以上トイレにいると棒で頭を殴られる。暴力を振るわれ、どなられた。」
ラヒマ
「あの連中を許せない。精神を病んでしまった女性もいました。
グリズラ
「固い椅子に24時間座る罰を2回受けました。水を飲めるのは一度だけ。排泄もその場でさせられました。」
ラヒマ
「追い詰められて、自殺を図った若い人たちも。実際に死んだ人もいます。
新疆ウイグル自治区には両親を収容施設に送られた子どもたちもいるようです。
この写真はそうした子どものためにつくられた養育施設と見られる場所を撮影したものです。
【カシュガル市職業技能訓練センター】
主要施設の存在すら否定していた中国政府は、2019年の1月、一部の施設に欧米メディアを招待しました。
「試行を重ねたうえで、実施に至った『職業技能訓練』活動は、目覚ましい成果を上げました。
生徒やその家族、社会全体から好評を博しています。
取材のために選ばれた施設ですが、記者には政府の役人がぴったりはりついていました。
「センターでは中国語、法律知識、職業技能などの講習が行われます。」
中国のテレビは、人民を助けるための教育センターとして放送しました。
《中国のテレビ》「私は法律を守る市民です」
「共産党のおかげで施設で学び、生まれ変わりました。感謝の心を行動で示したいです」
【ドイツ・ミュンヘン】
グリジラは妹を待ち続けていました。もう一年半がたちました。
「妹の精神状態が心配です。勇敢で芯が強いけれど、施設で、人々への理不尽な扱いを見続けるのが苦痛なはず。
とても苦しい状況です。
21世紀の今、愛する家族と自由に会えないなんて」
100万人以上が施設にいるとみられていますが、いつ解放されるのかは誰にも分りません。
・・・・・・・・・・
グリジラの妹グリギナや、サデルデンの妻ムヤッサル、その他数多くの家族が再会を待ち続けているのです。
「体に気をつけて、連絡するから待っていて」
「姉さん、元気でね」(グリギナ)
「子どもたちはどうしてるかな。会いたくてたまらない」(ムヤッサル)