電力市場高騰で見えた日本の電力供給の問題点

 はじめにお知らせです。
 去年暮れ12月26日の「焚き火のある講演会」で「気づきの宇宙史138億年」を語りました。今年からその本論(各論)として6回にわたり宇宙史を語ります

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 これは新しい科学にもとづくコスモロジーを作るという目的で、岡野守也先生に教わってきたことを私流に敷衍したもので、私と宇宙が一体であることの気づきを重ねていきます。
 1月26日(火)の第1回は「宇宙のはじまり」で、ビッグバンから地球の誕生まで。関心のある方はぜひお聞きください。
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 16日、今年はじめて畑に行った。すると、畑に寝そべるようにオバケ白菜が!

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ここが畑。手前の背中の人が地主さんで手取り足取り教えてもらう

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頭しばりをやったのは来週あたり収穫になる

 年末に頭しばりをやったのだが、し忘れたやつが奔放に育ってしまったのだ。何枚かの葉をトン汁に入れて食べのだが、とても食べきれず、台所の床にドーンと鎮座している。
 来週あたり、ちゃんと丸い白菜が収穫できるだろう。

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 10日のブログに電力需給の逼迫で市場価格が高騰している問題について書いたが、マスコミも報じ始めた。日経の記事を3本紹介する。
 LNG液化天然ガス)のスポット価格は、去年4月の15倍にもなっているという。
 LNGが長期保存に不向きであることや日本の脆弱な供給態勢、太陽光の比重が高い再生可能エネルギーなど、日本の電力事情の問題点が露呈した。今後の政策に生かして欲しいが、2本目の記事のように、やはり原発は重要だという声も上がっている。
 今回の調達価格の急騰で苦しくなっているのが、600社にのぼる新電力だ。その多くは経営基盤が弱く、相当数が「淘汰」されるという厳しい見方も出るなか、政府が新電力への支援を検討していると3本目の記事は伝える。
 

【01/13・日経】LNG不足のなぜ 生産・物流混乱が壁 電力需給逼迫で
https://www.nikkei.com/article/DGXZQODZ129VO0S1A110C2000000

日本列島を襲った寒波の影響で全国で暖房の利用が増え、電力需給が逼迫している。要因のひとつとなっているのは、発電燃料となる液化天然ガスLNG)の在庫不足だ。想定外の寒波に加え、パナマ運河の渋滞問題などLNGの国際的な物流網に遅れが出ている。複合的な要因が重なり、LNGの不足につながった。発電電力量の約4割をLNG火力に頼る日本に及ぼす影響の大きさが顕在化した。

日本を含め、中韓や台湾などでも厳冬による調達増で需要は旺盛だ。特に厳格な防疫体制をしいた中国は、新型コロナウイルス拡大の影響からいち早く生産活動が回復した。企業活動が持ち直して電力需要も増し、LNGの輸入を増やしている。

一方、供給面ではLNGの生産・物流で混乱が生じている。米国産LNGをアジアに輸出する際に経由するパナマ運河は、アジア向けの取引増で通行に時間がかかっている。メキシコ湾岸に集積する生産地では「輸送に影響が出ている」(大手商社)という。

2020年に世界各地のLNGプラントが相次いでトラブルに見舞われたことも供給不安に拍車をかけた。オーストラリアの大型事業「ゴーゴン」は定期修繕で見つかった設備不良の修理が長引いており、完了が3月末になる見通しだ。マレーシアやカタールのプラントでも設備不調による生産減が続く。石油天然ガス・金属鉱物資源機構の白川裕調査役は「生産トラブルがここまで同時に起こるのは初めて」と指摘する。

LNGは20年秋頃まで長らく需要が低迷していた。三井物産三菱商事らが参画する「キャメロン」など、米国で大型案件が次々と立ち上がったうえ、コロナ禍で供給過剰になっていたためだ。足元では供給不安から、アジアのスポット(随時契約)価格は100万BTU(英国熱量単位)あたり30㌦前後と最高値を更新。底値を記録した20年4月の2㌦弱から大幅に伸びた。

LNGは在庫不足が生じてもすぐには調達ができない。産地との長期契約が主で、スポット調達でも届くのに2カ月程度かかる。半導体と同様に生産から調達までのリードタイムは長く、寒波で需要が急増しても、LNGサプライチェーンは需給の急変には対応しきれない。

冷却・液化して海上を運ぶ日本特有の調達方法も在庫不足につながっている。パイプラインによる調達や地下貯蔵が可能な欧米に対し、海に囲まれた日本はLNGをタンクで貯蔵する。タンクでの貯蔵は徐々に気化してしまうため、石油や石炭に比べて長期保存に向かない。今回は厳冬による一過性の不足との見方もあるが、原発再稼働がままならないまま、LNG火力に発電の大部分を依存する日本で、電力の安定供給をどう守るのか。寒波は日本の電力を巡る構造的な課題を投げかけた形だ。

(企業報道部 薬文江)


【01/13・日経】電力逼迫が突きつける脱炭素の険しさ 編集委員 松尾博
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGH12BL10S1A110C2000000

(前略)
この過程で電力供給体制に潜む課題が見えてきた。

まず、液化天然ガスLNG)頼みの危うさだ。電力各社は予期せぬ需要増への対応をLNG火力に頼らざるを得なかった。夏の需要増は夕暮れとともに低下するが、冬の寒波による需要増は長い時間にわたって高止まりする。持続的に稼働率を上げた結果、燃料のLNG消費が計画よりも早まった。

原子力発電所や石炭火力発電所は運転のスタートや停止に時間がかかる。しかも大規模出力が見込める原発は再稼働が進んでいない。LNG火力はフル出力に達するまでの時間が短く、急激な需要変動を補う調整電源としての役割も大きい。加えて化石燃料の中で最も二酸化炭素(CO2)の排出量が少ない。

脱炭素へ向かう過渡期の発電燃料として存在感を高めてきた。しかし、LNGは海外から輸入し、専用の受け入れ基地で貯蔵する。国内の在庫は2週間分しかなく、新規に調達して手元に届くまでには2カ月が必要とされる。

電力関係者は「石油火力が減っていることが事態を悪化させた」とも指摘する。原油重油を燃料とする石油火力はLNG火力に比べて発電コストは高いが、LNGに比べて国内外で容易に調達できる。輸送や貯蔵も簡単だ。

電力各社は急に需要が増えるピーク時の対応用に使っていたが、運転時間は少ない。電力自由化が進む中で、固定費が高く稼働率の低い石油火力を次々と廃止したことが、今回、円滑な調整力を欠く遠因になったというのだ。電力自由化が進めば供給力の維持が難しくなる懸念がかねて指摘されてきたが、これが表面化したともいえる。

再生可能エネルギーの出力低下も見逃せない。この冬一番の寒気が九州北部に流れ込んだ7日、九州全域の太陽光発電の供給力は324万キロワットと、晴天だった昨年12月17日の560万キロワットと比べて42%落ち込んだ。減少分の236万キロワットは単純比較で原発2基分に相当する。

悪天候太陽光発電の出力が大きく低下した。
太陽光発電は8日に同34%、9日に同24%減った。九州では晴天時には太陽光発電の電気を域内の送電網で受け入れきれず、九州電力が事業者に出力の抑制を求めることが常態化している。ところが悪天候でこの供給力がぽっかり抜け落ちた。

供給力の低下は太陽光発電の表面上の出力だけではない。九電は太陽光発電の余剰電力を、低い場所にある貯水池の水を高い場所にある貯水池に持ち上げ、電力需要が逼迫した際に放出して発電する揚水発電に使っている。太陽光の落ち込みで「揚水発電用の水のくみ上げが十分にできなかった」(九電関係者)ために、この出力があてにできなくなった。

太陽光発電の出力低下の影響は程度の差はあるが、どの電力会社も直面している。東京電力ホールディングスの供給域内では、冬場の晴天時には太陽光発電の出力が1000万キロワットを超える日もある。曇天が続いた12日は終日、出力がほとんど出ない状態が続いた。

18年9月の北海道の地震による全域停電や、19年9月に千葉県で起きた大規模停電など、自然災害によって安定供給が損なわれる事態が全国で相次いでいる。

脱炭素へのエネルギー転換や電力自由化がもたらす恩恵ばかりに目が向き、安定供給を置き去りにするわけにいかない。脱炭素、自由化、安定供給。この3つの要素をコストを最小限にとどめながら同時に実現する道を探らねばならない。

今回の需給逼迫は再生エネを使いこなす難しさを示した。再生エネの主力電源化には時間や天候による供給の変動を最小に抑える蓄電池の効率向上や大型化など、電気をためて使う仕組みが不可欠だ。

再生エネが主力電源に育つまで、火力や原発など従来型の発電所の役割は続く。LNG火力がその中心を担うとしても、今回明らかになった燃料確保の弱点を含め、安定的に使う環境を整える必要がある。電力自由化の競争下でも確実に発電や燃料調達の投資を促す仕組みが要る。

全国が10地域の送電網に分断されていることの限界も改めて示した。中長期では地域を越えて電力を柔軟にやりとりできる送電網へのつくりかえや、反対に送電線で電気を遠隔地に運ぶのでなく、発電した場所で利用する分散型のエネルギー利用への転換を促すことも欠かせない。


経産省、市場価格高騰で新電力支援 追加の料金負担に上限
https://www.nikkei.com/article/DGXZQODF149BC0U1A110C2000000

経済産業省電力需給の逼迫により電力の卸売価格が高騰している問題で、新電力など電力小売事業者の経営を支援する方針だ。例えば新電力が事前の計画よりも多くの電力を調達する必要が生じた際、購入先の大手電力に追加で支払う料金に上限を設ける。新電力の負担を減らすとともに、利用者に影響が及ぶ事態を避ける。

電力は需要と供給が一致しないと停電などのトラブルを招く。そのため電力を企業や家計に販売する小売事業者は需要計画と一致する電力の調達計画を立て、自前の発電所からの供給で足りない分を電力会社や企業などが電力を売買する日本卸電力取引所(JEPX)などで購入する。

実際の電力需給は事前の計画通りにならない場合も多い。そこで実需と計画の差である「インバランス」を調整する仕組みがある。実需が小売事業者の調達計画を上回った場合の「不足インバランス」は大手電力が穴埋めし、小売事業者はその分の料金を事後的に支払う。

インバランス価格はJEPXの市場価格と連動している。JEPXのスポット価格は全国の相場動向を反映する指標が1キロワット時あたり120円台まで上昇している。昨年12月初めの約20倍に達し、小売りを担う新電力の経営を圧迫している。インバランス価格の上限は1キロワット時あたり200円程度とする案があり、詰めを急ぐ。

大手電力には負担となりそうだ。本来であれば受け取れたはずの電力需要を穴埋めする際の対価が少なくなる。寒波と液化天然ガスLNG)の調達難による昨今の電力需要の逼迫に対しては電力各社が広域融通や企業の自家発電からの調達によって停電を避けるための対応を続けている。大手電力への一定の配慮も必要になる。