ボロ負けの3週間を終えて―日本が学ぶべき海外のコロナ対策

 豪雪被害の地域のみなさまにお見舞い申し上げます。
 山形県では米沢・最上・尾花沢で3人が死亡と報じられている。
 実家は誰も住んでいないが、屋根にどれだけ雪が積もっているのか、心配だ。雪下ろしを頼まなくてはならないかもしれない。

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 火曜15日も寒波で朝は冷え込んだ。
 中国地方であるプロジェクトをやっていて、新幹線で向かった。
 雪が降ったようで白い富士山が美しい。

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白銀の富士かと思ったら・・

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雪が積もったのは右側だけ

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裏側(南)はまったく雪がない

 ところが、新幹線が西に進むにつれ、富士山の積雪の部分が右側へと移動、南側はまったく雪がない。角度によってこんなに違う富士山を見たのは初めてだ。
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 17日、コロナ新規感染者がついに全国で3211人と過去最多。東京も800人を越え822人で最多となった。累計で19万人を超え、もうすぐ20万人に達する。
 そんなときに対策らしいものも国民に届く訴えもなく、国のトップが連日外で会食してたら、支持率が急降下するのは当然。17日の朝日川柳より。

平民は「密食」ダメよオレ例外 (鹿児島県 鎌田正三)

危機感の欠如という名の基礎疾患 (千葉県 姫野泰之)

何ひとつ収拾つかずブレまくり (大阪府 田中悟)

安倍よりはいいかもしれぬ思い消え (栃木県 大塚裕)

 17日朝刊に載った16日の「首相動静」によると、夜は会食のハシゴだった。

 「(午後6時)43分、東京・永田町のザ・キャピトルホテル東急日本料理店「水簾」で横浜銀行の大矢恭好頭取、大久保千行顧問と食事。7時37分、東京・日比谷公園フランス料理店「日比谷パレス」。小田尚読売新聞東京本社調査研究本部客員研究員、粕谷賢之日本テレビ執行役員、政治ジャーナリストの田崎史郎氏と懇談。9時13分、東京・赤阪の衆院議員宿舎。」

 「首相動静」を新聞の1面に移動してほしいとの冗談もでるほど、「菅首相っていったい毎日何してんの?」と呆れ果てた国民のまなざしが注がれている。

 何度もここで書いたが、コロナは世界共通なのだから、海外の使えそうな経験をどんどん取り入れればいいのに。

 例えば、下水調査でコロナ感染を知る方法は知られているが、具体的にどう役に立つのか。フランスのマルセイユで高齢者を感染から守る試みをテレビでやっていたが、これは使えそうだ。

 マルセイユでは消防署の中に新型コロナ対策チームを作り、下水検査を感染拡大阻止に役立てている。やり方はこうだ。

 まず、高齢者施設のトイレに蛍光塗料を流し込む。その蛍光塗料が流れてきた下水道でサンプルを採取。消防の対策責任者は「まったく接触せずに100人を検査できるようなもの」と評価する。そのサンプルを下水調査方法の開発企業に持ち込むとPCR検査で6時間でウイルスを検出。発症数日前からウイルス検出が可能だという。

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高齢者施設のトイレに蛍光塗料を流す

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蛍光塗料が流れてくる下水からサンプルを採取(NHK「国際報道」)

 この企業の社長によると、ウイルスは感染のかなり早い段階で尿や便に排泄されるので、下水道に残ったわずかなウイルスを検出できる高感度の検査をすれば早くウイルスを見つけられるそうだ。

 9月から10月にかけて、試験的に下水調査を行い、市内78の高齢者施設のうち15ヵ所でウイルスを検出した。

 ウイルスが検出されたある高齢者施設では、症状のある人はいなかったが、個別の検査をしてスタッフ2人、入所者10人の感染が判明した。急遽隔離する対策を採ったが、感染した入居者のうち3人は発症して亡くなった。

 しかし、施設の運営企業の責任者は「下水調査の結果がなければ感染はもっと広がりさらに深刻な影響が出ていたでしょう」と言う。

 鼻の奥の粘膜を採るPCR検査は入所者には苦痛で、個別検査を繰り返すのは大きな負担になる。下水調査は、高齢者施設の感染を、早い段階で、しかも痛くない方法で察知できる。

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 マルセイユ消防では、下水調査の本格導入を決め、市内100の高齢者施設で週1回実施しているという。
 下水調査は地域の感染状況を評価することに意味があるのかと思っていたが、マルセイユの実践で、ピンポイントで感染施設を突き止めることに使えることを知った。これはPCR検査数が少ない日本ではとくに有効だと思う。
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 次はシンガポールが新たに隔離施設を急ピッチで建設中というニュース。これからビジネス客を中心に外国人を受け入れるにあたり、大量のコンテナ状の部屋を用意することにしたという。

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まるでコンテナ集積場

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部屋のなかはホテルのよう

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会議もできる(NHK「国際報道」)

 内部はホテルのような快適な部屋で、会議室でグループでの打ち合わせもできる。これなら外出しなくても仕事ができる。1月後半から稼働しはじめ、1300部屋を作るという。

 これこそ日本でも求められる施設だ。というのは、日本の入国者の管理はゆるゆるで、しっかりしたコントロールがなされていないことを身近な例で知ったからだ。
 
 「全ての地域から入国・帰国する方は、検疫所長が指定する場所で14日間待機し、日本国内において公共交通機関を使用しないでください」と国土交通省は要請するが、コロナ禍以降、韓国と複数回往復した在日韓国人の友人はこう証言する。
 「日本も韓国も入国から2週間、自己隔離して外出しないよう要請される。韓国に入ると、2~3日に一回はラインか電話で、外出していないかチェックが入るが、日本では一度も問い合わせがなく放っておかれている」。

 隔離のための施設を作って入ってもらえれば、安心だし、コンテナ様のものなら安上がりにできるのではないか。
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 一方、注目されたスウェーデン・モデルは「失敗」に終わったようだ
 スウェーデンは大人数の集会を禁じるなどの対策は取ったものの、学校や飲食店は閉めず、マスクも推奨しないという独自の対策を進めてきた
 しかし、感染拡大が止まらず、感染者数は約36万7千人。死者数は7900人を超えている。人口10万人当たりの直近2週間の新規感染者数は、フランスやイタリアなど欧州主要国を大きく上回り、北欧の隣国ノルウェーフィンランドの約7倍に達する。

 《ロベーン首相は18日、混雑時の公共交通機関でのマスク着用を推奨すると発表した。新型コロナウイルス対策で同国がマスク着用を推奨するのは初めて。公共施設の閉鎖など新たな規制強化策も実施する。国内で感染者数や死者数が急増する現状を受け、厳しい規制を敷く方針に転換した形だ。(略)
 スウェーデン政府が18日に発表した新型コロナ対策では、規制を大幅に強化。マスク推奨のほか、来年1月24日まで図書館や屋内プール、博物館などの公共施設に閉鎖を要請し、高校でのオンライン授業の実施を促した。
 さらに、今月24日以降は飲食店で1テーブルに同席できる最大人数を8人から4人に制限するとした。》

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あのグレタさんもマスクをつけた(インスタグラムより)


 勝負の3週間がボロ負けに終わった日本。Go Toの部分停止ではとてもすまないはずだ。海外の経験を取り入れて早く有効な施策を打ち出すべきだろう。