その一画に古びたコンクリート製の建物がある。まるでシリアかアフガンの激戦地のような生々しい戦闘跡だ。
これは「旧日立航空機立川工場変電所」で、戦跡として市の文化財に指定されている。
1938)年、北多摩郡大和村(現在の東大和市)に軍用機のエンジンを製造する大きな軍需工場、「日立航空機株式会社」立川工場ができた。1944年には、従業員数13,000人を数えたほどの規模となった。この建物は、工場に電気を送るための変電所だった。
1945年の2月17日、4月19日、4月24日に受けた3回の攻撃で、工場の従業員や動員された学生、周辺の住民など111人が亡くなり、工場は8割方壊滅した。
ただ、鉄筋コンクリート製のこの建物は、致命的な損傷をうけなかったので、戦後も変電所として1993年まで操業を続けた。しかも外壁に刻まれた生々しい爆撃の傷跡や内部の一部にも痕跡を残したままの状態で使われていたのだという。
変電所を含む工場の敷地は、都立公園として整備され、地域住民や元従業員の方々の強い要望により、変電所の建物はそのままの場所で保存されることになった。
詳しくは東大和市のHPをご覧ください。
https://www.syougai.metro.tokyo.lg.jp/image/tbunka9905.pdf
東京の中心部や下町が空襲されたことは知っていたが、多摩地域でも大きな戦争被害が出ていたのか・・。
実は、多摩地域には軍需工場が集中していたので、繰り返し激しい空襲を受けたのだという。この変電所、毎月1回公開しているとのことで見に行こうと思ったら、9月から改修工事で見学できないとのこと。残念。
近隣の戦争の歴史をもっと学ぼうと思う。
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先日ここに書いた、ロシアの野党指導者アレクセイ・ナワリヌイ氏(44)が毒を盛られた疑惑。
いま彼はドイツで治療を受けているが、2日、メルケル首相が、事実上ロシア政府が犯人だと断定して激しく非難、大きな外交問題になっている。
NHKBS1「国際報道」が詳しく報じたので、紹介したい。
メルケル首相
「ナワリヌイ氏は神経剤ノビチョクと同じ種類の物質で攻撃された。
軍の検査によって、この毒物が使われたことが明白に立証された。
ドイツ政府を代表し、最大限に非難する。
ロシア政府だけが、この疑問に答えることができる」
一昨年、ノビチョクによる暗殺未遂が起きた英国のジョンソン首相はツイッターで
「化学兵器が使用されたのはとんでもないことだ。
何が起きたのか、ロシア政府は説明しなければならない。
正義が実現されることを確実にするために国際的パートナーたちと共に努力していく」
フランス外相も声明で
「最も強い言葉で非難する。
ナワリヌイ氏が置かれているロシアでの政治的な立場を考慮すると、彼に対する攻撃は重大な疑問を抱かせる」
EUの上級代表の声明は
「化学兵器使用は国際法違反。事件に関わった責任者は、裁きを受けなければならない」
ノビチョクというのは、旧ソビエトが冷戦期の1970~80年代に製造した化学兵器で、毒性の強さは、あのマレーシアでの金正男氏殺害に使われたVXの5~8倍とされる。
一昨年、英国で起きたスクリパリ氏とその娘の暗殺未遂に使われたのもノビチョクだった。
ロシアは政権に(というよりプーチンに)都合の悪い人間を場所を選ばずに抹殺してきた。ソ連時代に化学兵器として開発した毒物や放射性物質を使用したことで、「ロシア特有の毒物」が体内から検出され、犯行がバレてしまった。
先日のブログに書き忘れたが、ジャーナリストのポリトコフスカヤさんも毒物投与されていた。この時は一命をとりとめたが、その後、自宅アパートのエレベーター内で銃殺されている。
それにしても、メルケル首相をはじめ、欧州の指導者は立派だ。
実に毅然として対応している。そして、各国ともいろんな問題で角を突き合わせていても、英国などはEUから脱退するほど関係がぎくしゃくしていても、こと人権問題ではしっかり連帯して行動する。
人権問題に「国境」は存在しない。みな自分事として考えている。このあたりは見習いたいものだ。
「毅然として対処する」というフレーズをひんぱんに口にしながら、暗殺者プーチンに尾っぽを振ってウラジーミルなどと親しげに呼びかけ、30回も首脳会談をやったのは誰ですか。
その結果といえば、ロシアは憲法を改正して領土割譲を禁止し、完全にコケにされたのだった。
また去年、香港で民主化運動が盛り上がるなか、習近平を国賓に呼ぼうなんて言ってたのはどこの国の指導者でしたか。
ぜひ、もっと「毅然と」してください。