中国、ノーベル平和賞に圧力

 東京は涼しくて過ごしやすかった。久しぶりにまる一日エアコンなし。
 街の街路樹、百日紅がどこでも目に入る。ぼんぼりのようなピンクの花。

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 きょうは幸田文生誕116年だそうだ。


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 一年前のきょう、私は香港で周庭(アグネス・チョウ)さんを取材していた。

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 8月30日に逮捕された2日後だった。

 自宅近くの大埔のレノンウォール(民主化を訴えるステッカーなどを張り付けた壁)で、これからも闘い続けると意気軒高だったが・・・

 

 中国はいよいよ香港の青年の洗脳をはじめる

 《【香港共同】香港の複数の出版社が9月からの新学期向けの高校教科書を改訂し、1989年の中国の天安門事件や2014年の香港の大規模デモ「雨傘運動」など、民主化運動を巡る内容を削除した。事実上の政府審査を経た規制とみられる。香港国家安全維持法(国安法)施行で強まる中国の統制強化が教育にも及んだ形で、民主派の教育関係者らは「洗脳教育だ」と批判している。

 昨年からの政府への抗議活動では逮捕者約9千人のうち中高生や大学生が約4割を占めたため、中国指導部が、若者に対する「愛国教育」の強化を要求。国安法も、香港政府が学校での国家安全教育を行うことを義務付けている。》

 ここまでくると、香港はもう中国の大陸と同じだ。6月末の国安法施行から一国二制度があれよあれよと破壊されて、今は見る影もないありさま。

 一方で、中国が各国にドスの効いた脅しをかけている
 チェコ上院議長らが台湾を訪問していることについて、中国の王毅外相は訪問先のドイツで、「1つの中国の原則に異議を唱えるということは、14億人の中国人の敵になることだ」と強く非難した。

 俺の後ろには14億人が控えてるんだよ、わかってんのかオイ!・・こんなこと言われたら、ちょっとブルってしまいます。

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NHKBS「国際報道」より

 さらに、「背後にいる反中国勢力を座視することはない。深刻な代償を払わせる」とも。

 

 王毅外相は欧州各国を訪問中だが、ノルウェーでは、こんどのノーベル平和賞、変なやつにやったら承知しないぞとここでも脅し。

 実は、今年2020年のノーベル平和賞には「言論の自由、民主主義、法の支配のために闘う香港の人々」が推薦されている。推薦したのはノルウェーの連立与党の中道右派政党、自由党のグーリ・メルビ教育・統合大臣。
 中国はこれをつぶしにかかっている。

www.venstre.no

 《ノルウェーを訪れた王毅外相は「一つだけ言う。過去と今日、そして未来において、誰でもノーベル平和賞を利用して中国の内政に干渉しようとする試みを断固として拒否する。中国はこの原則において確固としている」と強調した。ノルウェーの首都オスロには、ノーベル平和賞委員会がある。

 王毅外相はつづけて「我々は、ノーベル平和賞を政治化することをみたくない」とし「我々が引き続きお互いを尊重し同等に対することが出来るなら、両国の関係は持続的で健全な方式で発展し、両国関係の政治的土台が一層強固になるだろう」ともとめた。

 王毅外相はこの日、ノーベル賞委員会が2010年に中国の反体制人物である劉暁波氏に平和賞を授与したのち、15年ぶりに訪問した点を強調した。香港デモ隊に賞をあげれば、両国関係が以前に逆戻りし得るとして、圧力を加えたものとみられる。》
https://news.yahoo.co.jp/articles/18da2a03df73456e389a3adeb73c3cbe09a11ee7

 1989年にはダライラマ14世にノーベル平和賞が贈られている。10年前に獄中の劉暁波氏が授賞されたあと、中国との関係が緊張して窮地に陥ったノルウエー。今の中国の影響力はそのころとは段違いだ。ここまですごまれれば、かなりの圧力になるだろう。
 
 また人質をとって圧力を加えようという動きも。
 《中国の国営テレビ局の外国語放送で司会を務めていたオーストラリア国籍の女性が、中国当局に拘束されたことが明らかになり、新型コロナウイルスや香港情勢などをめぐって対立を深める両国の関係が、さらに悪化することも予想される。

 オーストラリアのペイン外相は、8月31日、声明を発表し、オーストラリア国籍の女性、チェン・レイ氏が中国当局に拘束されたことを明らかにした。》(NHK)

 「ならずもの国家」としての姿をむき出しにしてきた。さあ、我々はどうするか。
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 わけあって、皇室について調べている。

 天皇制の存続、撤廃が短期・中期の重要な政治テーマではないと思っていたので、皇室、天皇についてはさほど関心を持ってこなかった。調べ始めると、知らないことばかりで新鮮だ。

 とくに上皇の象徴としての自覚、民への心配りには感銘することが多い。アフガンで凶弾に倒れた中村哲医師が「天皇好き」だったのも素直にうなずける。

 ちなみに、中村哲さんが「ご進講」した際の記事。

 《アフガニスタンで医療奉仕活動を続けている福岡市の非政府組織(NGO)「ペシャワール会」は二十七日、現地代表で医師の中村哲さん(57)=福岡県大牟田市在住=が二十一日に天皇陛下と対面し、現地の実態を説明したことを明らかにした。

 同会によると、四月に宮内庁から要請があり、アフガンから帰国していた中村さんが二十一日に上京した際に皇居を訪れ、初めて陛下と対面した。

 中村さんは陛下や皇后さま、紀宮さまに対し、パソコン画像を使いながら「人々の暮らしは知られていない」として、砂漠化が進み水不足が深刻化しているアフガンの現状を説明。陛下は人々の暮らしや文化財について質問され、当初二時間の予定だったが三十分長くなったという。最後は、中村さんに「体に気を付けてこれからも頑張ってください」と声をかけ、玄関まで見送りに来られたという。

 中村さんは「陛下は皇太子時代に訪れたアフガンに特に思い入れがあり、現地の事情をよく理解されていた。熱心に聞いていただき、うれしかった」と語った。》(2004.05.28 西日本新聞朝刊 )

 中村さんは、国会のテロ対策委員会に参考人として呼ばれ、「(アフガン戦争への)自衛隊派遣は有害無益、飢餓状態の解消こそが最大の問題」と発言して鈴木宗男氏ら自民党議員からの強烈なヤジを飛ばされたが、両陛下はその「札付き」の彼をわざわざ皇居に招いたのだ。これはすごいことである。

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 上皇が何をめざしていたのか、またその人格形成の背景をさぐりたい。
 
 おもしろかったのは1996年から2007年まで侍従長だった渡邉允(まこと)氏池上彰氏と対談した際に披露したエピソードの数々だ。対談は2017年4月にBSフジで「天皇家の執事が語る皇室の素顔」として放送された。当時は明仁さまは現役の天皇だった。

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BSフジより(右が渡邉氏)

 以下、発言者は、渡邉允氏。

(普段の生活がとても質素なことについて)

 《陛下の書斎に行くと机があって、そのひきだしには、古い書類の紙がいっぱい入っているんです。つまり、パソコンや手書きで原稿を書かれるときには、古い書類の裏紙を使っておられるんですね。それを見たときは、少し驚きました。
 あとは、背広やコートなどに関して、まわりの人が「そろそろ新しいものになさったらどうですか」と言っても、「まだいい」とおっしゃってね。》

(食事の好みについて)

 《まず、両陛下とも、お酒はほとんどお飲みになりません。ちょっと口をつける程度です。食べ物も特別に、あれが食べたい、これが食べたいということはありません。御所にいらっしゃるときは、宮内庁の大膳(だいぜん)の人たちが作ってお出しするものを、そのまま召し上がっていらっしゃいます

(地方を訪問するとき)

 《両陛下はわりに小食なんです。でも、地方や外国にいらしたりするとき、万一残されたりすると、まずかったんじゃないかとかお口に合わなかったんじゃないかと心配する人がいるから、出された食事は必ず全部食べようとなさるんです。だから、われわれが先遣隊で行くと、なるべく少量にしてほしいということをお願いするようにしています。》

(ご自分で運転することは?)

 《・・・以前は軽井沢や那須の公道も運転なさっていたようですが、今は皇居の中でしかされませんね。1991年製造の国産の中型車を大事にお使いになっています。・・・》

(免許証は?)

 《非常に真面目でいらっしゃるから、運転免許証は必ず持っておられます。2007年は免許更新の年で、70歳以上の高齢者は運転免許を更新する際、あらためて視力や反応能力のテストを受けますよね。陛下もその手続きをなさいました。・・・
 警視庁から、ゲームセンターにあるような運転席の形をした機械を御所に持ち込んでもらったんです。実地試験は東御所の地面に目印を立ててお受けになりました。

 免許証については、陛下らしいエピソードがあります。元侍従の一人から聞いた話ですが、皇太子の時代に那須御用邸にいらしたある夏の日、陛下がご自分で運転してどこかに行ってくる、とおっしゃった。そこで警察に連絡して、先導してもらうようにしたんですね。
 準備が整ったあと、陛下はご自分で車に乗られて、門から出ていかれたんですが、少し行ったところで急に陛下が車から降り、走って御用邸に戻ろうとなさる。お見送りをしていた侍従が、何事かと思ってお尋ねすると、「免許証を忘れてきたので、取ってくる」と。・・・
・・・そもそも警察が先導するわけだから、誰も車を止めて、「あなた、免許証を持っていますか」と言う人はいないですよね。》

 裏紙を使うとは、意外なほど質素な暮らしだ。しかも自らの意思で身を律している点に感じ入った。
 免許証のエピソードなど、失礼ながら、あまりの生真面目さにおもわず噴き出してしまった。

 こんなに真面目な人、みなさんの周りにいますか?
 私たちの天皇、皇后が、このような方々だったと知り、もっと突っ込んで調べてみなければと思った。
(つづく)