「貧困対策」でチベット人を醇化

 きょうは土曜だが用事があって出社。JR御茶ノ水駅の聖橋口から出てくると、私より少し年上かと思われる年配の男性が路上でバイオリンを弾いていた。ここは夜、よく若いシンガーソングライターやジャズバンドが演奏するポイントだが、朝からとは珍しい。

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 この男性は、バロックスタイルのバイオリンで古い時代のヨーロッパの音楽を奏でているという。寒いなか、みな足早に通り過ぎるなか、ひたすら演奏する。こういう人には興味を引かれる。いつか話しかけてみよう。

 昨夜、NHKBS1「国際報道」で「現地取材・中国チベットの人たちは今~“貧困対策”の現実」を観る。http://www6.nhk.or.jp/kokusaihoudou/bs22/feature/index.html
《2020年までに農村部の貧困人口をゼロにする公約を掲げる中国・習近平指導部。その実現のカギを握るのが55民族・1億1000万人の「少数民族」への対策。多くが貧困地域に暮らしその生活改善が重要な政治課題とされている。このうち、四川省ガンゼ・チベット族自治州では急増するチベット文化圏への旅行者の玄関口として急速な近代化が始まり、「脱貧困」のモデルケースとして注目されている。これまで詳細な現実が明らかにされることがなかった少数民族が暮らす地域の変化を通して、共産党が目指す貧困対策の現状に迫る。》

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 最近、この「国際報道」は、世界でも最悪の人権侵害と言われているウイグル族弾圧を扱も複数回特集を組んでおり、注目している。
 中国政府のチベット政策は、厳しい弾圧策をとる一方で、投資による地域開発で「恩恵」をほどこすというもの。かつての伝統的な村落は、交通網が整備され、高層ビルの建設で風景が一変していた。ある地域では貧困対策と称して遊牧民強制移住させ新たな仕事を与え、立派な学校を作って子どもを漢族化する教育を行っている。全員寄宿舎生活で、授業はすべて中国語、愛国主義教育も徹底される。

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 最近では、チベット語を話せない若者も増えてきたという。こうした醇化策の結果、表立った反抗は抑え込まれ、チベット人の抗議は、個々人の焼身自殺という手段に追い込まれている。
 中国が国際的影響力を著しく増した結果、外からの圧力の効果は限定的で、習近平政権のやりたい放題を止める手はすぐには見つからない。ダライラマ亡命以来、半世紀にわたって共産党政権に抑圧され続けてきたチベット人たちを思うと暗澹たる気持ちになる。