知られざるインド北東部

山火事が燃えさかる中ピクニック (神奈川県 藤田秀樹) 21日の朝日川柳より

 観光需要喚起策「Go Toトラベルキャンペーン」がスタートしたきょう、新型コロナ感染者が新たに795人出て、1日当たりではこれまで最多だった4月11日(743人)を上回り最多を更新
 大阪府では121人で、1日当たり初めて100人を超え過去最多。埼玉県で62人、愛知県で64人、福岡県で61人の感染が確認され、いずれも最多を更新した。
 日本医師会の中川会長は23日からの4連休を「我慢の4連休」と位置づけ、不要不急の外出や県境を越える移動を避けるよう呼びかけた。
 政府はいったい何を考えているのか。感染への対応が混乱を極める中、安倍首相は1ヵ月以上、国会答弁にも記者会見にも出てこない。

安倍さんの休業届はいつ出たの (大阪府 佐藤毅彦) 22日の朝日川柳

 そして文春がまたスクープ。
 Go Toの事業を1895億円で受託した「ツーリズム産業共同提案体」なる団体に名を連ねる観光関連の14団体から、自民党幹事長の二階俊博氏をはじめ自民党の議員37名に対し、少なくとも約4200万円の献金が行われていた。「少なくとも」だ。

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「ツーリズム産業共同提案体」に名を連ねる団体のひとつ、「全国旅行業協会」(ANTA)の会長をつとめる二階幹事長@文春

 これでは利権と国民の命を引き換えにしたと言われても仕方がない。
 自民党の腐敗極まれり。
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 一昨日、喉が痛くなり鼻水も出はじめた。ひょっとして・・と大事をとって休んでいたら治ってほっとした。晴れ間をぬって自転車で調布市にでかけた。
 調布市北部公民館で、延江(のぶえ)由美子さんの「行雲流水~インド北東部への旅」と題する写真展が開かれている。延江さんは獣医師でありながら米国で看護師免許を取り、2007年以来、カトリック教会をベースにインド北東部で医療支援、人道支援をしている

 大学時代、マザーテレサと会ったことが機縁になったという。

 民衆の暮らしに深く入って撮影した写真は、民族学文化人類学からみても貴重なものだ。

 私は東南アジアの少数民族を数多く訪ねて取材している。
 昔、京大の研究者が唱えた「照葉樹林文化論」に入れ込んでいた私は、ネパール、ブータンからインド北東部、ミャンマーおよびラオス北部、雲南省、台湾、日本の西日本へと連なる半月弧こそ日本の古層文化の基盤だと考えていた。
 実際ミャンマーラオスで、ハレの日のモチ食や納豆、コマ回し、歌垣など日本になじみの深い風習を目撃してますます関心を深めていったこともあり、またインパール作戦にも関心があったので、インド北東部には前から行ってみたかった。しかし、そこはインド政府が10年ほど前まで観光や取材に開放していない秘境だった。

 インド北東部はネパール、チベットバングラデシュブータンミャンマーと国境を接し、非常に多様な民族が住む民族学の宝庫のようなところだ。8つの州に分かれているが、その中にも多くの民族がいる。
 例えば比較的知られたナガランド(日英軍の激戦地コヒマが州都)にいるナガ族とひとまとめに呼ばれる集団の中に16もの民族がいる。

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カシ族の民族服の女性たちと。中央の延江さんはボド族の民族服を着ている。

 展示された写真に写るほとんどが初めて見る民族で、実に興味深い。大きな市場には、言葉も服装も異なるいくつもの民族が集まるという。一度見てみたいものだ。

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アディヴァシ族の女性。足に入れ墨をしている。古い中国の歴史書倭人は入れ墨をすると書かれてあるのを思い出した。

 延江さんはどの民族にも分け隔てなく支援を行い、個人的な深い関係も取り結んでいる。歴史への批判的な観点をもちながら、彼らを人間として尊敬していることに感銘を受けた。「かわいそうな人たちを助けてやっている」というのではなく。

 「人種としてはモンゴロイドですから、顔つきは、中国人、韓国人、日本人にとても良く似ています。公的にはインド国民ですが本来はインドとは全く関係のない先住民族です。イギリスとインドという大国に振り回され、『血と涙』にまみれた壮絶な独立闘争の歴史を持っています。女性も男性も大変に逞しく、生命力の強さは尋常ではありません。『石と土以外はなんでも食べる」と自ら豪語するくらい、どんなものでもなんとか工夫を凝らして食べるその姿は、まさにあっぱれ、です」(写真展解説より)

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水汲みに行くナガ(マオ)族の少年。

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客人をもてなすためのニワトリの毛をみんなでむしる。いい表情をしている。

 丘のてっぺんに家が写る写真のキャプションに、敵を早く発見するために高いところに集落を作ると書いてあった。戦いが多かったのですねと尋ねると、部族間の血なまぐさい争いが近年まであったとのこと。
 少数民族の写真展というと、「平和で心豊かに自然と共生して暮らす人々」というイメージになりがちだが、それがリアルな姿でないことは私も取材で何度も経験している。戦闘で血が流れなくなったのは「最近」のことなのだ。

 社会構造もさまざまで、母系社会のガロ族などでは、結婚すると男は女の村に住み、子どもは母親の名字を引き継ぐ。娘たちは結婚してからも親元で暮らし、年老いた親の面倒は一番下の娘が見る。東南アジアの母系民族と同じだ。

 人々の表情がとてもおもしろく、人物ポートレートとして観ても楽しむことができる。

 写真展は8月8日(月曜は閉館)までやっているので、関心のある方はどうぞ。また、8月1日(土)10時~12時には講演会「知られざるインド北東部~そこに住む様々な民族と文化と複雑な現実」がある。定員18名(先着申し込み順)
 調布市北部公民館
 調布市柴崎2丁目5番地18/電話:042-488-2698

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会場にて筆者と

 延江さんは、さまざまな民族と付き合うため、各民族の挨拶語を覚えようとしたという。
 それを聞いて私が、特別な挨拶語はなくて「メシ食ったか」と声かけするのではないですか、と尋ねた。
 東南アジアのほとんどの地域で「メシ食ったか」が挨拶で使われているからだ。
(つづく)