指導者によって生死が分かれる時代

 今夜は満月がきれいだ。心が洗われる。

 しばらく前からよく見る、タツナミソウ(立浪草)の花。

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 花の姿が、北斎の波がしらのように見えることから名づけられたという。
 かわいいが、花言葉は強烈で「私の命を捧げます」。薬草にもなるという。
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 いまだにテレビはじめメディアで「日本ではなぜ検査が進まないのか」を報じている。
 政府が増やす増やすと言ってもなお、増えるスピードがあまりに遅い。
 途上国ができることを、一応は先進国、しかも医療では一流と自負する日本ができないのは、技術や設備などではなく、もう政治だというしかない。
 古い友人が、いろんな資料から、感染症対策の中心になるべき厚生労働省が自らの権益と縄張りにこだわり、政治家も思い切った決断ができなかったとまとめているが、このあたりが真相だろう。
 《厚生労働省国立感染症研究所(感染研)を中心にして、都道府県の衛生研究所が検査を担う、というこれまでの感染症対策を踏襲した。中国が1月中旬に公表した新型コロナウイルスの遺伝子配列を基にして、感染研は自前の検査方法を開発し、各地の衛生研究所に検査のやり方を伝授した。そのうえで、検査受け付けの窓口を都道府県の保健所に一本化した
 これが「PCR検査の目詰まり」を引き起こし、検査の拡充を阻害する結果を招いた。
 世界規模の感染症対策において、PCR検査技術の先頭を走っているのはメガファーマと呼ばれる巨大製薬会社だ。(略)
 今回も、ロシュはいち早く検査の試薬を開発し、1月末には効率のいい検査装置を製造して売り出した。その後、24時間で4000人分の検体を全自動で解析できる最新式の装置も市場に投じた。欧州各国は速やかにこれらの装置を購入して検査に投入し、感染症対策に活かしている。
 ところが、前述したように厚生労働省は自前の開発にこだわり、国立感染症研究所に検査手法を開発させ、これを全国に広めようとした。(略)
 未曾有の事態には「前例にとらわれない決断」をしなければならない。マンパワーの面でも資金面でも、感染研が世界の大手製薬会社に太刀打ちできないのは自明のことだ。自力での検査手法とキットの開発にこだわった結果が「先進国で最低レベルのPCR検査状況」となって現れた、と見るべきだろう。
 検査の窓口を都道府県の保健所一本に絞ったことも、PCR検査の拡充を阻むことになった。これも「前例踏襲」の結果だ。非常時には「前例のない対応」を決断しなければならない。前例や縄張りにこだわらず、大学の医学部、民間の検査会社などあらゆる力を総動員しなければならない。なのに、厚労省はその決断ができず、前例を踏襲した。》(長岡昇さんのブログ)
http://www.bunanomori.org/NucleusCMS_3.41Release/index.php?catid=11&blogid=1

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 お勧めのニュース番組「国際報道」(NHKBS1でよる10時から)がきのうもよかったので紹介したい。
 特集は、アマゾンの先住民族に拡大する新型コロナ感染。

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 いま、医療にアクセスのない、ヤノマミなど奥地に住む先住民にも広がり、憂慮されているという。特集では、感染拡大の理由をいくつかあげていた。
 まず、情報が行きわたらない。先住民は300万人ほどいるが、それぞれ言語もしきたりも異なり、広報が難しい。
 意外だったのは、去年来の記録的な森林火災も影響していること。森という生活基盤が失われ、食料や生活用品を入手するため、ひんぱんに町に出るようになっているという。
 大企業や富裕層の利益のみを重視するボルソナロ大統領は特別な行動規制をしないことで知られるが、先住民などには全く関心を払わない。これも事態を悪化させているという。政治の問題も大きいことが分かる。


 池波キャスターの論評「池波’s VIEW」は、フィリピン政府がテレビ局に放送停止命令を出したというニュースに関して。

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 フィリピンでは政府が大手放送局ABS-CBNに対し、放送免許が失効したとして放送停止命令を出し5日夜放送は停止した。25年間の放送免許が期限を迎えるため、議会で免許更新の審議が進んでいたがコロナの影響で議会再開が遅れ、免許の期限切れを迎えた。
 同社はドゥテルテ大統領の薬物対策を批判し、大統領は免許更新を拒否する意向を示していた。
 池波氏は、「ショックドクトリン」という言葉をあげ、災害や紛争など危機的状況に便乗して火事場泥棒的に、人権を侵害するなど問題の大きな政策をとることに私たちは警戒しなければならないと語った。良識あるコメントだと思う。

 アメリカのニューヨーク支局からは、「助けてほしい」とのニューヨーク市長の呼びかけにボランティアを志願した、500キロ離れた町に住む小児科医、ボルクさんの5日間密着リポート。
 病院で看護師と同じようなサポート役の仕事をふられたボルクさん。患者が目の前で急に容体が悪化し、亡くなっていく。親しくなった医療スタッフも亡くなった。インタビューに答えるボルクさんは涙声だ。

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 こうした医療関係者の精神的なケア、バックアップが必要だと研究者が言う。通常経験しないような痛みや死を目のあたりにすることが心に大きな傷を残す。それは戦場からの帰還兵と同じだという。実際、先日、ニューヨークの医師が自死している。
 ニューヨーク医療崩壊の現場の厳しさを知ることができた。

 ついで、北朝鮮に新たなミサイル関連施設建設の疑惑が浮上したとのニュース。

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 衛星写真の分析から、今年後半か来年前半は運用可能になるとシンクタンクCSISは予測している。

 中国が次世代ロケット「長征5号B」打ち上げ成功のニュースも。これは、中国独自の宇宙ステーションを2022年ごろに完成し、宇宙開発を加速させるためだという。

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 いまは、米国、ロシア、日本、カナダ、欧州宇宙機関 (ESA) が協力して運用する宇宙ステーションがあるが、これは2024年まで。宇宙開発でも中国の存在感は大きくなりそうだ。

 それにしても、ブラジルの大統領といい、フィリピンの大統領といい、また米国のトップといい、常識を疑う言動で大きな影響が国民に及んでいる。
 危機におよんで、どんな政治家を選ぶかが生死を分けるということを実感させられる。