日本でなぜPCR検査が増えないのか2

 近所の古墳シリーズ3回目は、国立市の四軒在家公園にある古墳

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もとは塚状の盛り土のあった円墳。朱色が「周溝」という溝で、当時の大きさが分かる。残りの9個は宅地や畑になって、これ一つだけが「展示」されている。

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被葬者が安置された石室。南が入り口になっている。これらの石は多摩川の河原石だそうだ。

 20年ほど前にここで、10個もの古墳が隣り合わせるように集中して発掘された。これほど多くの古墳が一度に発掘された例は都内ではないそうだ。武器や装飾品が多数出土し、作られたのは7世紀前半だという。学問的には“青柳古墳群”の一部とされている。

 7世紀前半といえば、17条憲法が制定されたのが604年(推古12年)で、645年の「乙巳(いっし)の変」(大化の改新)以降、律令制へと移行していく時代。

 多摩川沿いのこのあたりには、古墳が数百も造られた。
 古墳というと天皇や大豪族のお墓だと思っていたが、このあたりでは、集落の長くらいの身分の人なら、古墳に葬られたようだ。これだけたくさん古墳を造るとなると、相当の労働力を必要とする。それを可能にするほど大きな生産力があったのだろうか。

 古墳に葬られた人も建設に携わった人も(DNA的には)みな私につながっている。ご先祖たちがどんな暮らしをしていたのか、いろいろ思いめぐらすのは楽しい。
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 米国のニューヨーク州では、ネット検索すれば、自分の住む地域でPCR検査、抗原検査を受けられる施設の場所が地図に表示される。そして、予約なしで何回でも無料で検査を受けられるという。そのほか、韓国など検査を簡単に受けられるような制度設計をしている国はいくつもある。

 一方、わが日本では、国が手をこまねくなか、医師会や大学、クリニックなどの奮闘で、検査能力が多少大きくなったとはいえ、ではどこで具体的に受けられるのか、どういう手続きなのかなど、肝心な情報がない。
 PCR検査を拡充しますというのであれば、政府、自治体が、検査を受けたい人はこうすれば受けられますよと告知すべきだろう。
 国も東京都も、本気で検査数を増やそうとしているとは思えない。
 東京の一日の感染者200人超が連日続いているのに、何の対策も講じないのはどういうことか?成り行き任せか。

 雑誌『選択』の記事は、PCR検査が増えないのは「公衆衛生ムラ」が、検査を増やすことを「カネと情報を独占するため、あえてやらなかった」せいだと指摘する。

 この雑誌にはちょっとご縁があり、昔、記事を書かせてもらった。原稿料が高かった記憶がある。「3万人のための総合情報誌」を標榜する月刊誌で、書店では売っていない。いまは6万部だそうだが、年間予約で、すべて自宅直送で届けられる。読むと、他誌と違って、書き手がかなりの情報通であることがわかる。

 この雑誌では《日本のサンクチュアリー》シリーズとして、「国立感染症研究所」(3月号)、「新型コロナ専門家会議」(4月号)、「厚労省結核感染症課」(5月号)、「PCR検査」(6月号)、「コロナ『日本モデル』」(7月号)と連続してコロナ対策の問題点を追及している。

 振り返れば、患者や主治医が希望しても検査を受けられない「検査難民」があふれた3月、3月1日~7日までの1週間に、6万5814人が検査を希望したが、検査が受けられたのはわずか2,181人(3%)だったという。
 そのころはテレビでも堂々と、PCR検査は不要だという識者が何人も出てきたし、専門家会議の「リスク管理チーム」リーダー押谷仁氏は、Nスペ(3月22日)で「全ての感染者を見つけなければいけないというウイルスではないんですね。クラスターさえ見つけていれば、ある程度の制御ができる」「PCRの検査を抑えているということが、日本がこういう状態で踏みとどまっている(理由)」などと正当化していた。
 「検査難民」たちのなかには、何か所もの医療機関で肺炎の疑いを指摘され、医師も検査が必要と認めても検査を受けられず、何日も後になってようやく「陽性」が判明した人もいる。その間、どれだけの人に感染させたか分からない。早い検査で陽性者を割り出すことの重要性はWHOも強調したいわば定石だった。

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 この日本の異常な状態が改善されないわけを『選択』6月号はこう指摘する。
 感染症関連の予算と情報はこれまでも「公衆衛生ムラ」が独占してきたが、今回のコロナ禍でさらなる莫大な予算(緊急包括支援交付金など)等を独占しつづけることを狙っており、その結果、PCR検査も「ムラ」で独占しようとするのだ、と。さらに・・ 

 《「公衆衛生ムラ」にとって、最大の心配は感染者数が増えて、保健所・地衛研の処理能力を超えてしまうことだ。具体的にはPCRの検査能力だ。37.5度以上、4日間の発熱が続く場合などの基準を設けて、PCR検査の数を絞ってきた。新型コロナの感染を心配する患者や、彼らを診療する医師たちからは検査能力拡充、さらに民間検査会社の活用が切望されたが、無視し続けた
 「公衆衛生ムラ」にとって、民間検査会社の活用は禁忌だ。資金力に勝る民間会社は、検査費用さえ払ってもらえるなら、短期間で体制は整備できる。医師や患者にとって、保健所・地衛研とクリニック・民間検査会社のいずれが利用しやすいかは言うまでもなく、保健所を中核とした独占体制が崩壊してしまう。ここに、臨床検査技師たちがPCR検査拡充反対を掲げて登場した。》

 臨床検査技師とは何か?

 《臨床検査技師という国家資格は、医師や看護師などの業務独占と異なり、いわゆる名称独占に過ぎない。つまり、資格を取れば、「臨床検査技師」と名乗れるだけで、検査業務自体は誰でもできる
 PCR検査の需要が高まれば、検査会社は人件費削減のため、外国人労働者を含めた無資格者を雇用する。また、韓国で有名になった検査システムの自動化などの技術革新も進んでいる。日本でもプレシジョン・システム・サイエンス社などが、ボタン操作で全自動で行えるPCR検査機器を開発した。田島秀二社長は「検査技師でなくてもできる」とアピールする。
 これは臨床検査技師にとって死活問題。彼らの平均年収は男性515万円、女性425万円だ。PCR検査が増えれば、検査会社経営者は年収200万~300万円の大学や研究所の実験助手を雇用することになるからだ。検査技師と「公衆衛生ムラ」の利害が一致した。彼らは手を取り合って、PCR検査を抑制した。これこそ安倍総理が指摘した「人的な目詰まり」の真相だ。その象徴が3月6日のPCR検査の保険適用だ。厚労省は「実施医療機関の医学的判断に基づき、保健所を経由することなく検査依頼を行うことができるようになる」と説明した。にもかかわらず、いまだにクリニックから直接、検査会社に検査を発注することができない。それは検査会社が依頼を断っているからだ。最大手のみらかグループは2月12日に医療機関宛てに「本検査は厚生労働省及びNIID(感染研のこと)のみから受託するもので医療機関からの受託は行っておりません」という通知を出しており、現在まで方針は変わらない。
 クリニックからの受託拒否は表向き、検査会社の判断だが、もちろん「厚労省の意向を受けたもの」(検査会社社員)だ。厚労省は許認可権を握るし、「公表していないが、地衛研は、検査会社に多くの検体を出してくれるお得意様」(同前)でもある。保険適用後、PCR検査数に占める検査会社や大学などの割合は53%で、保険適用前の54%と変わっていない。》

 

 すでに2月下旬の「モーニングショー」で、上昌広医師が、民間の検査会社を活用し、検査を国民健康保険に入れるよう提言。
 そのうえで、国内大手の臨床検査会社では、国からの(新型コロナウイルスの)PCR検査を受託しはじめたが、民間の医療機関からの検体は受け付けていないのはなぜか理解に苦しむと疑問を呈していた

takase.hatenablog.jp

 これは「公衆衛生ムラ」の圧力だったのか・・・

(つづく)