習近平体制で増える「スパイ」容疑の拘束

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 おとといの雪ウサギが一日経ったきのうは「フニャ」。今朝はもうあとかたもなかった。
 きょうは一日、買い物にも行かずに家でおとなしくしていた。
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 今朝のテレ朝「モーニングショー」。
 ドイツに学ぶべきウイルス対策を紹介していた。
 各国感染者の致死率は、イタリア11%、スペイン8.6%、フランス6.4%、イギリス6.2%、日本2.9%、アメリカ1.5%に対してドイツは0.9%と飛びぬけて低い。
 その理由の一つが、検査数の多さだという。診断検査を非常に大規模に実施しているので、死者の比率が低くなっている。
 ドイツでは週の検査数が50万件で、これをさらに増やし、4月末までに1日20万件にするという。
 これに対し、日本では、安倍首相が先日ようやく「医師が必要とすればPCR検査を実施するよう促している」(28日記者会見)と言ったものの、直近5日間の平均検査数はわずか1070件!
 「モーニングショー」では検査を一気に増やすべしと2月から提言していたが、いまだにこんなお寒い状況なのか。

 スタジオでジャーナリストの青木理さんが、「検査数を増やしたほうがいいかどうかで議論している国は、日本以外にないのでは」と言っていたが、そのとおりで、各国どこも多くの検査をして陽性者を一人でもはやく発見することに努力している。
 「首相が必要な人すべてを検査するよう促していると言っているのに、それができていないのはなぜか、わからない」(青木さん)とも。
 日本の検査数の少なさを正当化しようとしている識者がいるが、私はこれもなぜかわからない。
 たくさんの人に検査を実施すれば、多くの感染者が無症状の状態で見つかるし、クラスターも早い段階で発見されるから、効果的な手をうつことができる。

 志村けんさんが亡くなって連日大きく報じられているが、彼の場合も検査が受けにくいことが影響したのかもしれない。
 報道によると、志村さんは以下のような経過をたどったとされる。
 3月17日に倦怠感を覚え、自宅療養。
19日に発熱や呼吸困難の症状が現れたため、20日に主治医の診断を受けた結果、医師の判断で港区の病院に搬送され、緊急入院した。

 重度の肺炎と診断され、21日には意識不明に。23日に新型コロナウイルス検査で陽性と判明。

 倦怠感(異様なだるさだったという)を覚えた17日から23日に検査で陽性が判明するまで6日もかかっているではないか。他の国のように検査のハードルが低くて早く感染がわかっていれば、助かったかもしれない。
 ひょっとして志村さん、「かぜの症状があっても4日間自宅で経過観察してから医師に相談しなさい」という厚労省の指針を守って自宅療養していたのでは?

 ここはぜひ取材してほしいものだ。

 

 「モーニングショー」にもどると、ドイツの死亡率の低さには、もちろん高度な医療体制が貢献している。
 ICU(集中治療室)の数はドイツが人口10万人あたり29.2床、日本はわずか7.3床しかない。日本より多い12.5床あるイタリアが医療崩壊中というから、日本はこれからが心配だ。
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 私がお勧めの番組に、NHKBS1よる10時からの「国際報道2020」がある。https://www.nhk.or.jp/kokusaihoudou/bs22/

 日本のテレビニュースは、ほとんど横並びだが、この番組は名前のとおり地球を俯瞰した感じで報じるのがとてもよい。(ときどきコメンテーターに、安倍首相御用達といわれる岩田明子解説委員が出てくるのが玉に瑕だが)

 MCの池畑修平氏は、テレビキャスターの中では一押しだ。海外取材経験が豊かでバランスのとれたコメントをする。安心して観ていられるキャスターである。

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池畑キャスターは世界各国と結んでインタビューする。

 きのうは新型ウイルスの感染がアフリカで急増している現状を、南アフリカの取材を中心に伝えていた。
 2週に一度くる給水車に人々が群がる光景が映し出される。水道のない人が1800万人もいるという。汚職で水道システムの整備がすすまないうえ、干ばつで雨量が少ないため、水を得ることが難しく、手を洗うことすらままならないという。
 また、5人に1人がHIV陽性で、新型ウイルスに感染したら命取りになる。栄養を十分に取れず、抵抗力の弱い人が多いことも不安要因だという。

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6年前エイズウイルスに感染した女性

 アフリカで感染爆発が起きることを今から想定しておかないと。

 

 また、感染爆発でDV(家庭内暴力)が増加しているという興味深い情報も伝えていた。
 英国南西部での調査では、この2週間、DVが20%以上増加。パリとその周辺ではこの1週間で36%増加したという。
 自宅にこもっていることで起きる問題だが、感染拡大が先行する海外のこうした情報は日本でも役に立つはずである。

 きょうの「国際報道」では、ウイルス感染でドイツや韓国の生活支援策を紹介。
 韓国では全世帯の70%に現金支給が決まった。ドイツの小さなブティックは日本円で107万円支給されることになり、店のオーナーは政府のこの施策は「最高です」と語っていた。
 医療支援の施策の紹介も。
 英国では航空会社の客室乗務員1万3千人に呼びかけ、臨時の病院で医師や看護師のアシスタントとして働いてもらうという。客室乗務員の仕事がなくなっている現状と、ベッドのシーツ交換をしたり、他人の世話をするのは慣れていることを考慮した施策だという。なるほど。

 
 特集は見ごたえがあった。中国で日本人や日本に住む中国人が相次いで「拘束」されている問題。

 北海道教育大学の袁克勤教授(64)が中国に一時帰国したあと、去年6月に突然音信不通になった。母親の葬儀に参列するため故郷の吉林省長春を訪れた後、路上で何者かに連れ去られたという。その後まったく消息がなく、家族はじめ周囲が不安を募らせていた。

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 口を閉ざしてきた中国政府が10ヵ月たって先週26日、はじめて公式に拘束を認めた。
 「スパイ犯罪にかかわった疑いで取り調べを受けており、本人は犯罪事実を自供した。証拠は確かで、すでに検察に送られ、起訴に向けた審査を行っている」と。
 袁教授は84年に来日、一橋大学の大学院で学び、永住権もある。「スパイ」などありえないと同僚も家族も断言する。

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袁教授の長女は、父がスパイであるはずがない、声を上げるのは不安だが、リスクを負ってでも助けを求めないと闇に葬られてしまう。日本のみなさん、どうか支援してくださいと訴える。

 他にも去年9月には北海道大学の岩谷將教授が、中国の北京で、やはり「スパイ」容疑で拘束された。岩谷氏のケースでは、安倍首相が李克強首相に直接に言及して2ヵ月で解放されている。習近平の訪日が予定されていたので中国も政治判断したとみられる。

 袁氏の場合は、国籍が中国ということもあり、日本政府は動かなかったが、26日に中国外務省が拘束を認めた翌日、西村官房副長官が「事態の推移を注視している」と発言した。

 

 番組では、こうした異常な拘束事件の背景として2014年11月の「反スパイ法」の施行を挙げる。
 習近平政権が、国内での思想統制を強める中でできた法律で、「スパイ行為で国家の安全に危害を及ぼす」と認められれば、最高刑で死刑。

 この後に外国人でも拘束されるケースが明らかに増えている。
 主なものに以下。

2015年3月  アメリカ人女性実業家
2016年1月  スウェーデン人 人権団体
2018年7月  台湾 交流団体幹
   12月  カナダ人元外交官/カナダ人実業家
2019年1月  オーストラリア人作家
   8月  在香港英国総領事館 現地職員
   9月  アメリカ人 派遣会社運営/アメリカ人学生
   9月  アメリカ人物流大手パイロット

 

 2015年には去年10月のプログに書いた、香港の書店関係者5人が拘束された「銅鑼湾書店事件」も起きている。

 

 何が「スパイ」容疑にあたるか分からないまま拘束されるのでは、中国との交流などできない。
 番組では、共産党体制の司法のありかたに対する国際社会の懸念にも触れ、14分近くを使ってこの問題をくわしく扱った。 


 習近平体制になってからひどい人権弾圧が進んでいる。コロナ禍のなかにあってもこの問題は追及していってほしい。

 この番組では、ウイグルにおける人権侵害も何度か取り上げている。「国際報道」の続報に期待する。