ウイルス禍で立ち往生するシリア難民

 近所のゴミ集積所にある桜の古木。

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 普段は住民もその存在を忘れている、半分枯れかかった木だが、今年も見事な花を咲かせた。

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 「もう一花咲かせる」という言葉が思い浮かんで励まされる。
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 いま新型ウイルス感染で世界の注目を集めるのがイタリア北部だ。その北部の町ミラノに知人の日本人が住んでいる。


 話を聞くと、映画、美術館、コンサート、見本市などは、すでに3週間、閉鎖かキャンセルが続いている。会社に出社しなくなって2週間。幸い正社員なので、有給休暇扱いになっているという。
 食料品を扱うスーパーと薬屋に行くとき以外は外出禁止。散歩やジョギングもできない。だが、なぜか犬の散歩は許されているという。(ただし、散歩させる人は一人だけで複数はダメ)
 散歩もジョギングも禁止とは、戦時よりはるかに厳しい行動制限である。

 イタリア北部に関するニュースは見聞きしていても、直接に知っている人からリアルな話を聞くと、あらためて大変なことが起きているのだなあと感じられる。

 今回のウイルス禍は、今後の各国の国づくりから個々人の人生観まで大きな影響を与えるだろう。

 世界がここまできているのだから、東京五輪が延期されるのは当然だ。
 「人類が新型コロナウイルスに打ち勝つ証しとして完全な形で実現する」(安倍首相)などと意気込んでも、常識で考えれば、五輪が通常の形でやれないことは、すでに2月には明らかだった。
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 日曜朝のTBS「サンデーモーニング」で、シリア内戦9年のニュースを取り上げていた。
 いま、シリア北西部のイドリブ県では、アサド政権軍の攻撃で大量の死傷者と避難民が出ている。 
 「こういうニュース、コロナの影に隠れてしまって・・」とMCの関口浩がふると、フォトジャーナリストの安田菜津紀さんがこう答えた。

 「これ(シリアの情勢)はコロナのことと密接にかかわっている。し烈な状況から逃れようとする人たちが、各国が国境を閉ざすなか、逃れられない事態になっている。
 ウイルスの問題では移動しないことで救える命がある一方、戦争では移動しないと守れない命がある。各国は検査体制を敷くなどしながら対応を求められる。
 同時に9年間のあいだ、これだけ多大な犠牲を積み重ねながらも人権を脅かす政治体制が依然としてシリアに残っている。その犠牲の責任はだれも取らずに、ゆるされていいのか。難民を生みだす要因を、国際社会は許していいのか」

 ずばりと本質をつくコメントだった。
 避難民の立場からは、先進国の我々が見過ごしがちな風景が見えてくる。

 

 トルコは欧州諸国に圧力をかけるため、いったん国境を開いた。そこでシリア難民がギリシャ国境に殺到したが、ギリシャが国境を閉じて7万人もの難民が立ち往生。
 19日になってトルコは一転国境を閉鎖、混乱が極まっている。

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ギリシャ国境に殺到したシリア難民

 《【イスタンブール時事】トルコは19日、欧州各国への渡航を目指して数万人規模のシリア難民らが殺到していたトルコ西部の対ギリシャ国境を閉鎖した。現地メディアが伝えた。地元当局は「世界的に拡大する新型コロナウイルスから国民を保護する取り組みの一環」と説明している。これにより、トルコ国内の難民らは越境できなくなった。
 トルコ西部のブルガリアとの国境も閉鎖する。両国との国境は、トルコ人が帰国を求める場合など一部の例外を除き、人の通行は認められなくなった。》

 トルコはじめ各国が難民を政治的に利用することで窮状を悪化させている。

 シリア難民の人道危機はもっとニュースで取り上げてほしい。