オーストラリアに出張していた。
この国は初めてだ。オーストラリアには、これまであまり関心がなく、カンガルー、コアラ、アボリジニといったありきたりのイメージのみだったが、今回の旅でとても良い印象を持ち、大いに魅せられた。
大陸北東部、クイーンズランド州ケアンズの空港に着く。気温は20度台後半か、気持ちのよい暑さ。空港から150キロ離れた田舎町に向かう。
サトウキビ畑が延々と続く。ときおり途切れてバナナ園になる。道路端にはヤシの木が、、
恥ずかしながら、こんな風景がオーストラリアにあるとは知らなかった。ここは熱帯なのだ。
(見渡す限りのサトウキビ畑が)
(ホテルの部屋の前にはココナツヤシ。すぐそばがビーチだ)
ここクイーンズランド州の東海岸には2000キロにも及ぶ珊瑚礁の連なるグレートバリアリーフがある。日本列島がすっぽり入る大きさだ。日本人もたくさんダイビングに来るそうだ。
陸地の方には、国立公園がいくつもある。世界最古の熱帯雨林がここにあるそうだ。多くの固有種の動植物が生息する。陸も海も豊かな自然に恵まれた土地である。
でも、今回最も心に沁みたのは、これまで経験したことのない、人々の親切さだった。
目的地の小さな町に着いて困ったのが「足」がないことだった。タクシーは高すぎるので、バスの便がないか、通りにいた中年の婦人に尋ねた。
その日は町から20キロほどのホテルに行きたい。そして翌日は150キロ離れたケアンズに戻る用事があった。
ジェーンという名の彼女は、ちょっと待ってと言うとすぐにスマホからバス会社に電話してくれた。バスは1日1便しかなくすでに出てしまっていた。
すると通りかかった住民が次々に立ち止まって、「困っている日本人」を何とか助けようと知恵を出してくれる。これには感激した。
すぐ近くの宝石店のオーナーが私のホテルの近くから通っていることがわかり、店を閉めたあとこころよく私を車に乗せてくれた。
問題は翌日のケアンズ行きである。ああだこうだと4、5人で議論した後、ジェーンが、ケアンズまでの「足」を求むとネットの掲示板にだしてくれることになった。遠いのでタダというわけにはいかず、私からはそれなりの謝礼を申し出た。
電話番号を交換して別れたが、2、3時間後、ジェーンから電話がかかってきて、友人の息子が車をだしてくれるという。
ケアンズまでの2時間のドライブの途中、いろいろ話をした。とても素直な高校3年の男の子で、ちょうど日曜なので私のドライバーをかってでた。高校を出たら観光関係の仕事につきたいという。この辺は海外からのツーリストも多いが、オーストラリア国内からも特に冬場は避寒の滞在客が押し寄せるとのこと。
とにかく人々が驚くほど開放的で親切である。
もちろん、どの国にも意地悪な人もいれば優しい人もいることはわかっているが、何度もこうした親切に助けられたので、ほんとうにありがたく、私の中では「オーストラリア人は親切」という一般化ができてしまった。
何がこういう人間を形成するのだろうか。考えると、おもしろいテーマである。