ブラックホールの研究は役に立つのか

 昨日は異例の冷え込みで、日中も息が白くなるほどだった。これが最後の寒波だそうで、「花冷え」どころではない寒さ。都心でも最高気温が5度だったという。関東北部で咲いた桜に雪が降る映像がニュースで流れていた。週末には暖かくなるらしい。風邪などめさぬようお気をつけて。
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 クラクフの旅から

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 ヤギェウォ大学。14世紀創建のポーランド最古の大学だ。名所の一つなのでツーリストがたくさん敷地に入り込んで大学らしくないが、建物は風格がある。
 地動説を唱えた天文学者コペルニクスが、ここで学んだそうだ。 

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コペルニクス

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    コペルニクスの地動説は、人々の「世の中」とそこにいる人間、そして自分についての考え方を大きく変えたことだろう。
 「今世紀最大のニュースの一つで、ノーベル賞級の業績だ」(大須賀健・筑波大教授(理論宇宙物理学))とされるのが、昨日発表されたブラックホールの撮影。
 《あらゆる物質をのみ込む巨大ブラックホールの撮影に、国立天文台などの国際研究チームが世界で初めて成功し、10日発表した。世界6カ所の望遠鏡で同時に観測して解像度を飛躍的に高め、真っ黒な穴を捉えた。ブラックホールの存在を直接裏付けたことになり、銀河の成り立ちの解明につながる。(略)巨大ブラックホールは宇宙に無数ある銀河の中心にそれぞれ存在すると考えられているが、誕生の仕組みなどはわかっていない。これまでは、周囲を回る星の動きなどから、間接的に存在を確認していた。》
 《今回捉えたM87銀河にあるブラックホールは、地球から5500万光年離れており、見かけの半径は地球から月面に置いたゴルフボールを見た時の大きさとほぼ同じだ。》(朝日新聞
 穴の中心にあるブラックホールの本体は、太陽の65億倍の質量を持つという。どんなものなのかイメージするのも困難で、それだけにすごい。
 宇宙は138億年前の「ビッグバン」からずっと複雑化、進化を続けてきて、今の私たちを生み出した。私たちがいる「天の川銀河」には太陽以上の恒星が1000億から2000億個あるという。1000万ではなくて1000億。そして、天の川銀河のような銀河が、全宇宙には1000億個以上あるとされる。すると恒星の数だけで1000億×1000億個はあるのか。気が遠くなりそうなスケールだ。そして、それぞれの銀河の中心にはブラックホールがあるのだという。なぜ?ともっと知りたくなる。
 ブラックホールやビッグバンの研究は、暮らしや社会に影響をもたらすというものではない。しかし、こういう学問にはぜひ予算を割いて研究者を育ててほしい。私たち一人一人ががみな、かくも広大な宇宙の一部であり「星の子」だということを深く知れば、人生をさわやかに生きる「気づき」を与えてくれるだろう。それは「有用」な学問ではないのか。
 今回の「撮影」に多くの日本の研究者、技術者が貢献していると聞く。日本の若い人たちがこれに続いてほしいものだ。