沖縄の海兵隊に戦略的重要性なし、と米元高官

 これから、メディアでは、平成の世を振り返る特集が続くだろう。きのうのTBS「報道特集」の「偽情報で開戦〜イラク戦争15年」では、なぜ、イラク大量破壊兵器を持っているというウソの情報でアメリカのイラク侵攻がはじまったのかを追っていた。
 15年前、アメリカのコリン・パウエル国務長官は国連で、サダム・フセイン大量破壊兵器を所有している明確な証拠があると述べた。誠実なイメージのパウエルのこの演説は開戦を決定づけたが、後に彼は、この演説は自分の経歴の汚点だと語っている。


 「報道特集」では、当時のパエウルの首席補佐官だったローレンス・ウィルカーソン氏(Lawrence Wilkerson)にインタビュー。ウィルカーソン氏こそ、CIAの情報からの情報をチェック、分析してパウエル演説を準備した人物だ。ウィルカーソン氏は後に当時を振り返って、戦争をやりたくて仕方がないネオコンを率いるチェイニー副大統領がCIAを11回訪れて、戦争に踏み切るのに都合のよい情報を出せと「圧力」をかけたと見ている。
 彼はアメリカ政府の外交政策決定に対して批判し、暴露しているので、当時の状況を知るには恰好の取材対象だ。
 私もウィルカーソン氏を2回インタビューしている。自分がCIAに騙された経験を憤りをもって率直に語り、ウソが許せないとても誠実な人という印象を持った。http://d.hatena.ne.jp/takase22/20110220

 日米関係を検証するにも彼の証言は重要だ。きょうのTBS「報道の日2018 世界が激変した30年〜平成のアメリカと日本」では、イラク戦争を世界で最も早く支持したのが当時小泉氏が首相だった日本政府だったことを紹介していた。
 アメリカに盲目的に追随するのはやめなさいというのがウィルカーソン氏だ。彼は別の番組で、イラク戦争時、集団的自衛権が使えていれば、日本政府に参戦を要請していたとも語っている。
 さらに彼は今月、『琉球新報』の取材に沖縄の海兵隊駐留に戦略的意味がないと明言している。https://ryukyushimpo.jp/news/entry-852864.html
《同氏は1990年代初頭に米海兵隊大学校(バージニア州)の責任者を務めていた際に、冷戦終結に伴う米国内外の米軍基地再編・閉鎖に関する調査研究などを分析した。その結果、日本政府が多額の駐留経費を負担する在沖海兵隊カリフォルニア州での経費より米側の負担は50〜60%安く済むと指摘。「沖縄の海兵隊駐留に正当な戦略上の必要性はないことが示された。(駐留は)全てお金と海兵隊の兵力維持のためだった」と明らかにした。
 米軍の元高官が、沖縄の海兵隊駐留に戦略的な必要性はないと発言するのは異例。
 ウィルカーソン氏は、米国の識者や元高官らでつくる海外基地再編・閉鎖連合の主要メンバー。同連合はトランプ大統領マティス国防長官ら宛てに、米国外の米軍基地の閉鎖を求める文書を公表している。》
 トランプのようなムチャクチャな大統領が現れても、ウィルカーソン氏のような政権中枢にいた人が危機感を持って批判、告発できるのがアメリカのいいところだ。
 日本にもこういう憂国の士がたくさん現れればいいのにと思う。