桜、特に‘染井吉野’が花盛りだ。通勤電車の窓から外を眺めていると、視野に次々と桜が現れる。立っているのが苦にならない。街を歩けば、満開の桜の樹の周りが、ぱあっと明るい。東京では早くも散り始めだが、しばらく雨が降らずに花を長持ちさせてほしい。
きのうフジテレビに打合せに行ったさい、台場の空き地にたくさんタンポポが咲いている。春に明るいイメージがあるのは、黄色の花が目立つせいもあるのでは。一緒に生えている紫の花はカラスノエンドウだ。正式にはヤハズエンドウ(矢筈豌豆)といいソラマメ属。食用になって、うまいそうだ。こんど試してみよう。
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先日、シリア映画を観てのシンポジウムがあった。「国境なき医師団」MSFの看護師、白川優子さんがパネラーと知り出かけることに。
映画は『シリアは静かに虐殺されている』(原題はCity of Ghosts)で、IS(イスラム国)支配下のラッカで市民ジャーナリスト集団RBSS(Raqqa is Being Slaughtered Silently=意味は日本名タイトル)が命がけで戦い続けるドキュメンタリーだ。市民ジャーナリストといってもほとんどが普通の市民。スマホでISの残酷な統治を撮影し、世界に知らせようと、トルコやドイツに避難した同志たちに映像を送る。しかし、ISは検閲を強化しスマホを摘発、何人ものRBSSメンバー、さらにはメンバーの家族までが処刑される。中心メンバー、ハムードとハッサンの兄弟は弾圧を逃れて国外に脱出したが、父親と兄が捕まって処刑される。父親が、RBSSメンバーの父親として罪がある旨の告白をし、処刑される瞬間までの動画をISはネット配信している。兄弟はその残酷な動画を繰り返し見る。ISは映像のプロに動画を作らせて流し始め、ネット空間の映像という場での熾烈な情報戦が戦われるようになる。外国に避難したメンバーにもISは暗殺者を送り込み、RBSS創立の立役者がトルコで殺されてしまう。さらに、残ったメンバーには、自宅玄関の写真が送られてきて「いい玄関の家に住んでるんだな」と脅迫される。RBSSメンバーは超人ではなく普通の市民である。異常な緊張のなか、精神的バランスを崩しかけることもある。そんな息詰まる戦いの日々にあって、励まし合いながら仲間や家族と生きていこうとする人々の姿は気高かった。彼らこそほんとうの英雄だ。
「ドキュメンタリー史上、最も緊迫した90分」というキャッチは大げさではなかった。近年では、3年前に観た「ルックオブサイレンス」と並ぶ傑作ドキュメンタリーとして自信をもって推薦できる作品だ。
(会場とマシュー・ハインマン監督とをスカイプで結んで質疑応答があった)
会場で、シリア人ジャーナリストのナジーブ・エルカシュさんと十数年ぶりに再会した。映画をほめると、「でも、一番観てほしいのは『カーキ色の記憶』なんですよ」という。
実はこの春、3本のシリア映画が公開されるのだ。
4月14日(土)から『ラッカは静かに虐殺されている』と『カーキ色の記憶』(山形国際ドキュメンタリー映画祭最高賞受賞の傑作)。そして5月12日(土)から『ラジオ・コバニ』とシリアを舞台にした本格ドキュメンタリー映画が立て続けに公開される。またここで紹介しよう。