後藤健二さんの処刑現場を特定

 ここ数日、酷暑がつづく。暑さが被災地を狙い撃ちしたかのようで、きのう岐阜県(多治見と美濃)では40度に達した。日本で40度を記録するのは5年ぶりだそうだ。この暑さのなか、被災した各地でがんばっている方々、ほんとうにごくろうさまです。
 みなさんのご苦労を思うと、エアコンの入った室内にいるのが申し訳ない気持ちになる。東日本大震災以来ご縁のある「RQ市民災害救援センター」が被災地で本格稼働しはじめたと知り、わずかな金額だが支援金を振り込んだ。それにしても、時間がたつほど被害の大きいことが分かってくる。メディアは継続して報じてもらいたい。
・・・・・・・・・・・
 番組放送予告です。

 「シリアはどうなっているのか? 日本人ジャーナリストが緊急潜入取材〜IS旧支配地域の現状、後藤健二さんの足跡を追って」
《先の見えない戦いが続くシリアに、ジャーナリスト遠藤正雄さんが潜入取材。
ISの旧支配地域の現状を取材するとともに、ISに殺害されたジャーナリスト後藤健二さんの最後の足取りを追った。
 後藤さんを処刑したのは、ロンドン出身のISメンバー、ジハーディ・ジョン。遠藤さんは独自のルートでジョンの同志を直撃。地元での聞き取りを重ね、後藤さんが処刑された現場をはじめて特定。さらに遺体が埋葬された場所も割り出した。処刑前、後藤さんが拘束されていたと推定される施設には、なまなましい拷問のあとが・・。渾身のスクープ取材に津田大介さんが突っ込む50分。ご期待ください。》
 FBに載せた放送告知だが、後藤健二さんの処刑現場や埋葬場所を突き止めたのは遠藤さんがはじめてだ。もちろん、さらなる検証が必要だが、遠藤さんの取材映像をチェックした私の心証は、まずこの場所で間違いないだろうというものだ。資金もバックもない個人のフリーランスが、独自にここまでディープな取材をしたのはすごいの一言につきる。
 なお、遠藤さんは19歳で大学を中退してベトナムの戦場に飛び込んで以来、世界中の危ない現場を歩いてきたもっとも経験ある国際ジャーナリストの一人。アフガンで地雷を踏んで亡くなったフリーの南條直子さんの遺体の埋蔵場所を探し当てたのも遠藤さんで、不幸にも現場で命を落とした同業者の「骨でも拾ってやらないとかわいそう」との思いで、今回も赤字の取材をおこなってきた。義の人である。
 放送は7月23日(月)深夜0時〜0時50分「津田大介 日本にプラス」(テレ朝チャンネル)で。ご期待ください。
・・・・・・・・・・・・
 このところ、ハートネットTVがおもしろい。
「人間を撮る 自分を見つめる〜元町プロダクションの人々〜」(7月12日放送)
https://www.nhk.or.jp/docudocu/program/2272/1716088/index.html
《今年2月、神戸に「一般の人がドキュメンタリーを作るプロダクション」が誕生した。メンバーは20代から80代までの主婦や学生など約25名。主催するのは数々のドキュメンタリーを手掛けてきた映画監督の池谷薫さん。「何を撮りたいのか、どうして撮るのか」問いかけられながら、撮影に臨むメンバーたち。そこには震災で娘を喪った夫婦や、カメラを通して母と向き合おうとする娘がいた。彼らが撮影の先に見つけたものとは。》
 私は、池谷さんの『延安の娘』(2002年)を観て以来のファンでお付き合いさせてもらっている。2006年には日中戦争で中国に送られた元日本兵の物語『蟻の兵隊』を、2013年には東日本大震災で息子を亡くした年老いた父親が自力で家を再建する『先祖になる』を世に送り出し、3年前はチベット人焼身自殺をテーマにした『ルンタ』が公開された。http://d.hatena.ne.jp/takase22/20150824
 池谷さんからのメールには、「番組のタイトル『人間を撮る 自分を見つめる』は、僕がドキュメンタリーをつくる上で、いつも自分に言い聞かせている言葉です。「他者にカメラを向けることで自分を見つめる」「カメラがあるからこそできることがある」そんな命題に真摯に向き合ったこの番組を、一人でも多くの人にご覧いただきたいと願っています。」とあったが、登場人物と一緒に、撮影することにどんな意味があるのかを考えさせられる、すばらしい番組だった。

 きょう観たのは、ハートネットTV「ひとりひとりに向き合って〜写真家・大西暢夫が撮る精神科病棟〜」
https://www.nhk.or.jp/docudocu/program/2272/1716097/index.html

《写真家・大西暢夫さん(50)は、18年前から全国の精神科病棟の入院患者を撮影している。統合失調症などの患者の、生き生きとした表情やありのままの生活を収めた写真の数々。撮影では一人一人に声をかけ、会話をしながらシャッターを切る。病気について聞くことは少ない。最後まで病名を知らない人もいる。「病気の○○さんではなく、その人本来の人間らしい姿や表情をとらえたい」とシャッターを切る大西さんの日々を追った。》
 番組のはじめ、精神病院の中にカメラがどんどん入っていき、モザイクなしで患者さんたちが登場。これには驚いた。たくさんの精神病の人が素顔を晒すのは、映画『精神』(想田和弘監督)しか観たことがない。大西さんは18年という長きにわたって信頼関係を築いてきたことを知り、やっと理解できた。番組に、入院期間がなんと60年という人が登場した。その間一度も病院の外に出ていないという。大西さんは考える。患者さんを忌避し危険視する私たちが、世界に類を見ない患者さんの長期入院を作りだしているのではないかと。そして我々に迫る。「治すべきは患者か、私たちか」。
 懐かしくなって大西さんデビュー作『僕の村の宝物〜ダムに沈む村 山村生活記』を本棚から取り出した。この映画と本も素晴らしかったなあ。節を曲げずに、いい仕事をしていることを知り、励まされた。それにひきかえ、自分はちゃんと仕事をしているのか?
 26日に再放送があるので関心がある人はどうぞ。