フォトジャーナリストの険しい道を歩む人たち

takase222018-02-24

 ゆうべ、仕事上の相談で、在京テレビ局に勤務するSさんと酒を飲んでいたら、テレビで女子のカーリング準決勝日韓戦をやっていた。Sさん、オリンピック報道に応援に駆り出されてカーリングのルールを勉強したとのことで、彼の解説を聴きながら、だんだん夢中になって見入った。もうだめかと思った第10エンドで韓国のスキップ、「メガネ先輩」がミスして同点、延長に。結局負けたが、ハラハラの試合を楽しんだ。
 カーリングはかろうじて知っていたが、オリンピックではじめて知った競技も多い。日本が金メダルをとったパシュート、きょう高木姉妹の姉の方、奈那が金メダルに輝いたマススタートなど、こんな種目でがんばっていた選手がいたんだなとあらためて感心した。若い人たちが真剣に取り組む姿はいいものである。
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 きょうは一日、自由時間。

 昼過ぎ、井の頭線池ノ上駅近くのQUIET NOISEというコーヒーも飲める洒落たギャラリーで、美術家、市川孝典(こうすけ)さんの個展slip outを観る。
 先日、銀座で写真家、鬼海弘雄さんとの2人展Sprinkling A-sideで、市川さんを知り、個展の方も観たいと出かけたのだった。https://www.fashionsnap.com/article/2018-01-21/slip-out-sprinkling-a-side/

 市川さんの経歴がおもしろい。13歳で家出同然にアメリカに渡ってしまう。
《13歳の時に、鳶職で貯めたお金をもって、あてもなく単独でニューヨークへ渡る。
アメリカやヨーロッパ各地を遍歴する間に、絵画に出会い、後、様々な表現方法を用いて、独学で作品制作に取り組む。また、音楽や映像など表現の場を変えながら各界の奇才たちとの交流を通して、活動や表現方法の幅を広げていく。
帰国後、線香の微かな火をつかって絵を仕立てる新しいスタイルで発表した作品は、「現代絵画をまったく異なる方向に大きく旋回させた<線香画>」と称され、メディアに大きく取り上げられる。
現在は、60種類以上の線香を、温度や太さなどで使い分け、一切の下書きなしに少しずつ紙を焦がしながら絵を描いている。(略)》http://www.ichikawakosuke.com/profile.html
 今回の個展slip outでは、さらに独特の手法の作品を発表していた。これらは写真でもなければ、筆で描いたのでもない。私の理解したところでは、和紙にインクやパステル、水彩などで色を層状に塗り、その表面を電動サンダー(紙やすり)でこすって色を表出させて描いたというもの。しかも下絵なしに。すごい!どういう頭の構造をしているのか。たぶん天才なのだろう。

 テーマは「記憶と時間」だそうで、難しい能書きが書いてあった。それはよく理解できなかったが、イメージが立体的に、もわもわ〜と匂いたってくるような感覚を覚える。実に不思議な作品群だ。3月9日までやっているので、関心のある方はどうぞ。
https://www.fashionsnap.com/article/2018-01-21/slip-out-sprinkling-a-side/
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 そこから、「トウキョウドキュメンタリーフォト2018」を観に井の頭公園のそばにある吉祥寺ギャラリーに。1期(2月13日〜19日)、2期(20日〜26日)それぞれ4人づつの展示で、きょう会場にいた川畑嘉文(かわばたよしふみ)さんと柴田大輔さんに話を聞きながら写真を観た。

 
(展示写真の前で 川畑嘉文氏)
川畑さんはミャンマーの難民キャンプの子どもたちなどのテーマで、柴田さんはコロンビアの内戦の写真を展示していた。雑誌がどんどん廃刊になり発表の場が狭まる一方で、スマホの普及などで紛争地からは当事者による迫力ある動画が大量にネットにあふれるなか、フォトジャーナリストが生活の糧を得るのは大変だ。それにもかかわらず、二人とも、真剣に自分の道を追及している。

(柴田大輔氏の投降間近のFARCの兵士)
 絶滅危惧種と揶揄されるほど、若いフォトジャーナリストの成り手が減少するご時世、がんばってもらいたい。
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 寒い日が続いたあと、きょうは久しぶりに気温が上がって井の頭公園は人が多かった。「いせや」で焼き鳥を買い、昼から一杯呑んでいい気持ちに。そばで外人の男性が大道芸をやって人の輪ができていた。芸を終えた彼に近づいて話をすると、芸名は「ばんざいミック」。元はジャパンタイムズに籍を置く記者だったという。日テレのBSで自分の冠番組を持っていたこともあるそうだ。最近までNHKで働き、二足のわらじを履いていた。

 世の中にはいろんな人がいるものだなと感心。いい休日でした。