6日から取材でカンボジアのシエムリアップに行ってきた。
東南アジアに10年住んだせいか暑い気候が好きだ。ホテルの庭でハイビスカスを見て、ああ南国に来たんだなと思う。毎日30度を越える暑さだが、かえって体調はいい。寒冷じんましんも治った。当たり前だが。
取材の合間に、森本喜久男さんが作った絹織物の村「伝統の森」を訪れた。トゥクトゥク(カンボジアのトゥクトゥクは、バイクで台車を引っ張る形のもの)で1時間。
森本さん亡きあと、村がどうなっているのか心配だった。森本さんの幽霊が出るとの噂も聞いた。
(デスクに笑顔の遺影が)
森本さんは村の創設者にして村人の庇護者、デザインを決め、織物の全工程をコントロールする偉大な「独裁者」だったから、村が喪失感に包まれているのではないか・・・。だが、うれしいことに、そんな私の予想は裏切られた。村はいま、以前より活気づいているという。誰にも頼れない今、布づくりを自分たちでしっかりやっていかなければ、という自覚が一人ひとりに生れているのだという。おもしろいものだなあ。
村には大阪の高校からスタディツアーが50人来ていて、ガイド役の岩本みどりさんは大忙しだった。染めの体験もあって、布を糸でくくって模様を描いていた。くくったところは染料が浸透せずに地の色が残る。染めて乾かす作業を2回やると3色が布にのる。私も若い頃、自分でTシャツを絞り染めにしてカッコよがっていたものだ。
村のなかにはたくさんの動物がいる。ネコの楽園でもあり、近くNHKの「岩合光昭の世界ネコあるき」という番組がロケに来るという。
母ニワトリがこんなにたくさんのヒヨコを連れて歩くのを見たことのない日本の高校生たちは、大興奮でずっと眺めていた。子どもの遊ぶ声、アヒルの鳴き声などが聞こえる中、ゆったりと時間が過ぎていく。わずか3時間の短い滞在だったが、私もずいぶん心が癒された。
若い頃に異文化に触れる経験ができるのはすばらしい。心に引っ掛かるものが土産になるだろう。