「しあわせ」の濫発2

 今夜はすばらしい満月だ。スーパームーンだという。もの思いに誘われる。
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 きょうは上野公園に行った。アメ横も人がいっぱいで、安寧な正月風景がうれしい。

 水族館劇場の《さすらい姉妹・寄せ場 投げ銭芝居》「ちょっと見るだけ―百貨店の迷子たち」を科学博物館前で観た。http://www.suizokukangekijou.com/sasurai/
 地べたに敷かれたボール紙に腰を下ろしての野外公演。すぐそばで、強制立退きに反対する路上生活者の餅つきと炊き出しをやっており、彼らも観に来て、100人近い観客で盛況だった。故郷から都会へと流れてきた者たちの心情を受け止める世の中であってほしいとアピールする劇(と私には思えた)を寒空のなか1時間にわたって熱演した。この劇団は建設労働者を主体にした役者が演じており、去年、横浜の寿町で野外芝居「もうひとつの この丗のような夢」を観てからすっかりファンになってしまった。資金もなく、劇団の維持も大変そうだが、とにかく面白いので、ぜひがんばってほしい。http://d.hatena.ne.jp/takase22/20170906
 一緒に観劇した写真家の鬼海弘雄さんとそのあとアメ横で「新年会」。いっぱいやりながらいろいろお話を聞いた。
 鬼海さんの写真展が先月から北京で開かれ、オープニングの記者会見には21社がきたという。熱心な質疑応答が2時間あまりも続いたそうだ。
 「使っているカメラの機種が何かなどと聞く記者はおらず、どうやって問題意識を持続させることができるのかといった本質的な質問ばかりで、感心させられた」と鬼海さん。
 大気汚染対策も進んで、空は青く晴れ渡り、快適な滞在だったという。中国を見直したとのこと。最近の報道でも、キャッシュレス化や再生可能エネルギーの促進など中国の変貌ぶりには驚かされる。
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 近年、「しあわせ」は社会政策上のキーワードになってきた。
 ブータンの「国民総幸福量」(GNH:Gross National Happiness)が注目されて久しいが、日本でも2010年、内閣府菅内閣)が「新成長戦略」策定にあたって「幸福度」という言葉を入れた。(我が国が目指すのは、こうした経済・環境・社会の3つが相互に高め合い、人々の幸福度に寄与する「三方よし」の国である。)
http://www.kantei.go.jp/jp/sinseichousenryaku/sinseichou01.pdf
 東京都荒川区ではGAH(Gross Arakawa Happiness荒川区民総幸福度)の取り組みが始まり、高知県ではGKH(Gross Kochi Happiness)の検討がなされるなど、この動きは自治体レベルで加速し、「ハッピネス」が大流行なのだ。http://rilac.or.jp/?page_id=307
 GDP至上主義を反省して、生活の質的な満足度に重点を置きましょうという意味で、社会政策に「しあわせ」を組み込むことには賛成である。ところで、幸福度をどう計るのか。
 世界各国の幸福度ランキングは種々あって、ある調査ではブータンや小さな島国がトップにくるが、別の調査ではデンマークはじめ北欧の国々が上位を占める。「しあわせ」と感じるかどうかという主観的な指標を重視するか、医療や教育のレベルなどの生活環境を重視するかで幸福のイメージは全く変わってくる。
 では、個々人にとっての「しあわせ」はどう定義できるのか。
(つづく)