ブータンの幸せ

takase222011-11-18

国賓として来日しているジグメ・ケサル・ナムゲル・ワンチュク国王とジェツン・ペマ王妃が、毎日ニュースに登場している。どのニュースも好意的というかべた褒めと言ってもよい取り上げ方で、二人が画面に出てくると気持ちをなごませてくれる。
美男美女のカップルだということだけが人気の理由ではない。「誠意」を感じさせる。
国会のスピーチも印象に残るものだったが、きょうの被災地訪問の「龍」の話もよかった。
《18日の午後は、東日本大震災で被災した福島県相馬市の桜丘小学校を訪問しました。ここに通う児童の中には、仮設住宅での生活を続けている子どもたちもいて、児童の代表は「私たちの中には不自由な暮らしをしている人がたくさんいます。しかし、きょうお目にかかれて励みになりました」とあいさつしました。これに対してワンチュク国王は、ブータンの国旗に描かれ国のシンボルともなっている「龍」の物語を引用し、「龍は私たちみんなの心の中に居て、『経験』を食べて成長します。だから、私たちは日増しに強くなるのです」と述べ、児童たちを励ましました。このあと国王夫妻は、津波で多くの住宅が流された原釜地区を訪れ、立谷秀清市長から被害状況の説明を受けました。この辺りは、震災から8か月が過ぎた今も津波の深い傷跡が残っていて、国王夫妻はおよそ30人のブータン政府関係者と共に、手を合わせて犠牲者を追悼しました》(NHKより)
国王と王妃の話題に加え、ブータンのGNH(Gross National Happiness)=「国民総幸福度」に注目が集まっている。みんな「幸せ」を渇望しているんだな。
「幸せの指標」にはいろいろあるが、GNHは、精神的満足度を重視したもので、心の豊かさを目指すものと受け取られている。あえていえば、「物質的には貧しいけど幸せ」。
http://d.hatena.ne.jp/takase22/20100507
では、外国人が次のように評した国はどこでしょう。
《人々は幸福で満足そう》
《衣食住に関するかぎり完璧にみえるひとつの生存システム》
《素朴で絵のように美しい国
《地上でパラダイス(天国)あるいはロータスランド(極楽)にもっとも近づいている国》
これ、ブータンではなく、幕末から明治初期にかけて日本を訪れた外国人たちが日本を褒め称えた言葉だ。
http://d.hatena.ne.jp/takase22/20100116
そうして、こう日本を称賛した彼らの多くが、この日本人に近代的なヨーロッパ文明を押し付けることは、果たして幸せなことなのだろうかと自問し、ヨーロッパ化すれば、この牧歌的な幸せはおしまいになるだろうと見ていた。
入国者数を厳しく制限するなど、かなり閉鎖的な政策を採ってきたブータンだが、近年、開国・近代化を進めている。その近代化がGNHと両立させられるのかと懸念するむきもある。
近代化するとなぜ幸せは失われるのか、その幸せはどんな根拠に立っているのか、そして、それを取り戻すことは可能なのだろうか。
あらためて書いていきたい。