横田家の家族写真公開の背景(5)

舛添さん辞任。
しかし、百条委員会もなくなり、結局真相は不明なまま幕引きだ。私した公金はどうするのか。
江川紹子さんがこんなツイートを。
《「ジャーナリズムの役割は権力の監視」とかゆっているわりに、舛添さんのことはノーマークだったんじゃないですか?落ち目になってから叩くのが、「権力の監視」ってやつですかいな?》
たしかに。
この間の会見では、記者たちが厳しく舛添さんに迫った。「どうやったら辞めていただけるんですか」なんてすごい質問まで出た。でも普段の記者会見ではとてもお行儀のよい質問をしていたのではないか。
舛添さんのお金の問題はいろいろ取りざたされていた。例えば、都知事選公示前、「政党助成金で2億5000万円の借金を返済した」疑惑を共産党が暴露した。
http://d.hatena.ne.jp/takase22/20140121
猪瀬さんがカネの問題で辞めて行われる選挙なのだから、この情報は決定的だと思ったのだが、不思議なことに後追いがほとんどなかった。
舛添さんは週刊誌というメディアにつぶされたが、かつて「総理にしたい人」ナンバーワンにもなるほど人気を押し上げたのもメディアだった。
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きのうの続き。
北朝鮮による拉致問題をどう解決するか。
あの国は普通の独裁ではないから、ミャンマーのようなソフトランディングは期待できない。完全解決は、旧ソ連圏の体制崩壊に近い事態が起きるのを待つしかない。
今の体制が続く間は、部分的な譲歩を少しづつでも勝ち取っていく努力を続けることだと思う。
その譲歩を北朝鮮から引き出すにはどうしたらいいのか。
こうやれば必ずこういう結果になります、という処方箋を出せる人はいない。
ただ、5人の拉致被害者を帰国させたときには、一方で強烈な圧力を北朝鮮にかけながら、水面下での交渉を粘り強く模索することで成果を得ている。この構図は教訓になる。
小泉首相が、一方で「拉致問題の解決なくして国交正常化なし」と突っ張りながら(ブッシュ大統領が「悪の枢軸」をやっつけると宣言してもいた)、外務省のアジア大洋州局長、田中均氏を直接指揮して、ほぼ1年、20数回におよぶ隠密交渉の結果、2002年9月の首脳会談につなげたのだった。この間、交渉に関する情報は全く洩れなかった。見事だったと思う。
もちろん大前提として、官邸が覚悟を決めなければ、この大きな問題は動かせない。
一昨年のストックホルム合意にもとづいて北朝鮮が調査委員会を設置したとき、国内では拉致問題解決への期待が大きく膨らんだ。私は調査委員会がそのまま成果をもたらすとは思わなかったが、こういう「表」の動きが水面下での本格交渉につながる可能性に期待した。一つの大きなチャンスだったが、結果は、何も生み出さずに時間だけが過ぎていった。
今は、「表」も「裏」も全く動いていないのではないか。安倍政権の「本気度」については、またいずれ書こう。

特定失踪者問題調査会」代表の荒木和博さんは、写真公開についてこう言う。
《(略)今大事なことは突破口を作ることであり、それには北朝鮮側が動くようにしなければなりません。今回の写真は世論喚起にはつながっており、すでに参院選モードで拉致問題への関心がさらに低下している中ではそれなりに意味のあることだと思います。北朝鮮 の意図に巻き込まれるという心配もあるでしょうが、ある程度のリスクを負わなければ事態は前に進められません。ストックホルム合意以来の2年間の浪費を考 えればなおさらです。
 単に制裁をかけて、あとは待っていれば良いとでもいうようなやり方では拉致被害者は取り返せません。14年前も、日本政府と北朝鮮に「国交正常化をしたい」という意志があったから、結果的に金正日が拉致を認めて5人が帰ってきたのです。当時渦中にいた者としてはほとんど綱渡りに近い状態でした。一つ間違えば国交正常化だけが進み拉致は蓋をされるところでした。しかし、結果的とは言えそうだったからこそ事態は前にすすんだのです。その危険を冒す覚悟が今の 政府にあるのかとなれば疑問だと言わざるをえません。
 あの写真の笑顔をめぐみさんとの再会でもう一度見たい、お会いしてきた特定失踪者のご家族のああいう笑顔を見たいと、切に思います。そのためにはできることは何でもしていかないと。》
http://araki.way-nifty.com/araki/2016/06/news222228612-a.html

同感である。この意見は、運動にかかわる多くの人の共感を得ているようだ。
何をどうチャンスに結び付けていくか、例えば横田夫妻と孫との交流をきっかけに何をしかけていくか、相手は「命がけ」だから、こちらがしてやられるリスクもある。そこに一国の外交力が試されるのだと思う。
http://d.hatena.ne.jp/takase22/20140610

自分たちと意見の異なる人々を排除し、被害者家族を囲い込むことは、拉致問題への関心そのものを萎えさせる。憂慮する人々を代弁するつもりでこの拙文を書いてみた。
(とりあえず終わり)