先日、安田純平氏の解放には、過去のケーススタディが大事だと書いた。
同時に、シリアを含む周辺の動きとの関係にも注目したい。
最近の気になったシリアのニュースから。
アサド政権が、拘束していた米国人フリーランスを、数か月にわたる交渉の末、解放した。この人は、実に4年もの長きにわたって拘束されていた。
解放されたのは、ケビン・パトリック・デイウェス(Kevin Patrick Dawes)氏(33歳、サンディエゴ出身)は2012年、トルコ国境からシリアに入って拘束されていた。
米紙が伝えるところによると、シリア政府と交渉したのはチェコ政府(米国が2012年に大使館を閉鎖した後はチェコが米国の利益代表)で、解放にはケリー米国務長官自身が直接に関与した。デイウェス氏の身柄は、シリア政府からロシアに引き渡され、飛行機で国外に脱出したという。最近になって、デイウェス氏は米国の家族に電話をしたり、家族から荷物を受け取ったりすることが許され、近く解放されると期待されていた。
デイウェス氏解放の「見返り」が何であったかは不明だ。
実はアサド政権は、デイウェス氏以外の米国人も拘束している。
国務省スポークスマンのジョン・カービーは、《オースチン・タイス(Austin Tice)およびその他のシリアで行方不明になり拘束されている米国民》の消息に関する情報を得るために引き続きチェコと協力してゆきたいと語った。(ワシントン・ポスト4月8日)
タイス氏(35)は元海兵隊員でのちにフリーランス・ジャーナリストとして、ワシントン・ポストなど米国の新聞に寄稿していた。
2012年8月に誘拐され、シリア政府または政府系グループが拘束しているとみられるが、シリア政府は一切の情報を出していない。
シリアでジャーナリストを拘束するのは、「イスラム国」やヌスラ戦線などの反政府武装勢力だけではなく、政府側も複数の外国人ジャーナリストを誘拐し拘束してきた。「人質」が、あるグループから別のグループに身柄を移されたり、売られたりする場合もある。
また、ある勢力による「人質」の扱いが他の組織の動きに「連動」することもある。
2014年8月19日、「イスラム国」が米国人ジャーナリスト、ジェームズ・フォーリー氏を斬首刑にした動画を公開したが、その直後の8月26日、「ヌスラ戦線」は拘束していた米国人ジャーナリスト、ピーター・テオ・カーティス氏を解放している。
これはヌスラ戦線が、我々は「イスラム国」とは違うと、政治的なアピールを狙ったものと解釈できる。
http://d.hatena.ne.jp/takase22/20151226
デイウェス氏解放につづく今後の動きに注意したい。