ヌスラ戦線に拘束されたあるジャーナリストの証言

フジテレビが夜7時から『来日緊急スペシャル!』でホセ・ムヒカ氏(ウルグアイ前大統領)の特番を組んだ。
一つ一つの言葉が魅力的で思わず見入ってしまった。

「みんなが質素に暮らしたら、経済が失速してしまうのでは?」との質問にどう答えるかなと待っていると、
「経済ねえ・・経済は何のためにあるのでしょうか。不足するものがあるからです。
100年前、水には経済は存在しませんでした。水は豊富にあったからです。でも今はその経済が存在しています。水が不足しはじめたからです。
経済というのは、不足している財をいかに配分するにかということです・・・

うーむ、なんとラディカル(根底的)な答え!
テレビの前から離れられなくなる。
フジはMrサンデーで撮りためた映像があり、先行の有利を十分に生かした番組づくりだった。うちの母も観ていたくらいだから、視聴率も良かったのではないか。こういう「ためになる」番組をもっとやればいいのに。
それにしても、このムヒカフィーバーはすごい。中国や韓国など他のアジア諸国にも伝染するのでは。
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おととい、シリアのヌスラ戦線に拘束されている安田純平氏のジャーナリズム論を紹介したが、きょうは、彼の解放の条件について書いてみたい。
そのためのケーススタディとして取り上げたいのが、ヌスラ戦線に拘束されて最近解放された、ポーランド人のジャーナリスト・映画監督のマルチン・マモン氏だ。

【Marcin Mamon氏】

彼が最近、ポーランドのメディアに拘束と解放の経過を語っている。
マモン氏は、去年11月初旬にシリアでヌスラ戦線に拘束され、6週間後の年末に解放された。
これまで、ヌスラ戦線は捕えたジャーナリストは全員解放しているが、解放までの期間はまちまちだ。2年以上に及ぶ場合もあれば、マモン氏のように短期間で自由になった人もいる。
マモン氏は2012年に「自由シリア軍」を取材するなど数回シリアに入ったことがある。今回はトルコ側からシリアに密入国した。カメラクルーとともに国境を越えると、シリアに招いてくれたチェチェン人の友人を待った。ところがなぜか、その人は現れず、別なグループが来てマモン氏らを車に乗せ目隠しをした。そこから車でアレッポに送られ、さらに別の場所に移された。

彼らが行方不明になったことを家族らが知り、ポーランドにいる別のチェチェン人の友人が追跡をはじめ、あらゆるコネクションを辿ってマモン氏らの行方を探した。チェチェン人グループだけでなくトルコ人らも動いた結果、解放につながったという。
交渉の経緯は詳しく明かされていないが、マモン氏がチェチェン人と強いコネクションを持っていることが重要な役割を果たしたようだ。
調べると、彼は2005年に、チェチェンを取材した"Dirty War"(汚い戦争)という作品を作っている。
チェチェン人の戦士たちはシリア内戦に義勇兵として加わり、ヌスラ戦線内に一定の勢力をもつほか、いずれの系列にも与しない独立の部隊も活動している。非常に勇猛果敢で一目置かれる存在だという。
身代金についてマモン氏は触れていないが、身代金は支払われなかったと思う。常識的に考えて、1ヵ月ちょっとで身代金交渉を妥結させるのは無理だろう。また、ポーランド政府が巨額の身代金をポンと出すとも思えない。
チェチェン人コネクションが、ヌスラ首脳部に圧力をかけてマモン氏らを身請けしたというシナリオを想像しているが、どうだろうか。チェチェン人勢力に一斉に離反されてはヌスラ指導部はたまったものではないから要求を呑んだ、と。
NHK大河ドラマ真田丸」みたいな駆け引きだが・・・

証言にひとつほっとさせられたことがあった。マモン氏らは生活条件は厳しいものがあったが、拷問されたことはなかったとはっきり言っている。
根拠のない憶測が飛び交うなかだからこそ、実際に解放されたケースの分析は重要だ。