ピケティの本が売れるわけだ

takase222015-01-18

かみさんと買い物に出る。
近くに野菜を自家販売する農家が何軒もあり、それを巡っていくと良い散歩になる。
ある農家で野菜といっしょに蝋梅(ろうばい)が売られていた。200円と安く、買ってきて家に飾った。
「蝋梅の黄色は、春の一番最初の色なのよ」とかみさんがいう。寒いなかでも春の到来を感じさせる花だ。
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ピケティの『21世紀の資本』が異例の売れ行きだという。
700ページを超す分厚い経済書の訳書が13万部も出ているそうだ。図書館によっては、100人の予約が入っているところもあるという。

私はまだ読んでいないが、新聞、雑誌の書評や解説によると、この本の大事なポイントは、

1. 経済成長率より資本収益率が高くなり、資本を持つ者にさらに資本が蓄積していく傾向がある。
2. この不平等は世襲を通して拡大する。
3. この不平等を是正するには、世界規模で資産への課税強化が必要だ。
第一次世界大戦までは極めて大きな不平等があったが、それを一気に縮小させたのは、2度の世界大戦と金融恐慌という暴力的な衝撃だけだった。
戦後の復興期には、著しい経済成長を皆が享受し、比較的平等な状態が続いた期間があったが、80年代に入ると再び不平等が拡大する傾向が現れた。今後を長い目で見ると、資産の不平等は、恐ろしいレベルにまで拡大する可能性がある。つまり、戦後の「いい時代」は資本主義の歴史では例外だったというのだ。
今急速に進行する格差拡大の背景にあるのは経済成長率の低さで、資本収益率はそれより確実に高くなり、時代を超えて不平等が維持、拡大していく・・・というのが『21世紀の資本』の中身のようだ。
(読んでもいないのに解説して恐縮です)
なお、ピケティという人はマルクス主義者ではなく、マルクスの『資本論』を通して読んだこともないという。

世界中ですごい売れ行きなのは、格差の拡大が多くの国で深刻な問題になっているからだろう。ピケティは、現在進行中のこの事態がこのままでは覆せない傾向で、ますます酷くなるよと警告しているのだから、見過ごせない。

ピケティがいうように、格差の拡大を経済自体が縮小することはできない。安倍首相がいう、「トリクルダウン」、つまり大企業や富裕層がもうかれば、そのおこぼれがトリクルダウン(したたり落ちる)するので貧困層も潤ってめでたしめでたし、などということは起きない。もし、2、3滴しずくが落ちたとして格差はどんどん開いていく。

格差縮小には、かなり強力な政治的施策(ピケティは累進課税を唱える)が必要だが、今の国政を見ると任せられない。
そこで、地域から市民が主権者として立ち上がろうと作られた「日本社会連帯機構」という組織に注目している。http://www.workers-coop.com/?page_id=124
この母体は、以前このブログで何度か書いたワーカーズコープ。
http://d.hatena.ne.jp/takase22/20121221

先週、「連帯機構」の新春記念講演会&賀詞交歓会に行った。
青井未帆学習院大学教授の日本国憲法についての講演会とコメディアン松元ヒロ氏の一人芝居「憲法くんがやってきた」の2本がメインなのだが、その前に登場した永戸祐三氏(連帯機構代表理事・ワーカーズコープ連合会理事長)の年頭挨拶がよかった。

オバマダボス会議も「格差の拡大と貧困」を非常に憂慮しているのに対して、日本では為政者も財界もほとんど問題にしていない。
それどころか、労組や農協をふくむ既存の組織をみな解体しようとしている。日本はとんでもないところにきている。
これに対抗できるのは「生活地域主義」だ。
これまで、我々の運動は、国や巨大資本に対して要求するというものだった。
しかし、もう国や資本に頼るわけにはいかない。その地域でもうからないとそもそも資本が来ない。いまの地域の共同体が解体・崩壊する速度はすさまじい。国家の財政配分がどうのとやっていては手遅れになる。
主人公は我々だと地域が立ち上がる、市民自身が解決の主体にならなければならない・・
・とぶちあげた。

今年は、政府が地方選挙向けにかかげる「地方創生」とは違った、都市部を含む「地域」が住民自身の手で活性化できる道筋を具体的に考えていかなくては。私自身がはっぱをかけられた。