去年秋に取材したアフガニスタンの「地下学校」。
3日、東京都内で「地下学校」の生徒や校長と日本の高校生とのオンライン交流会が行われ、同世代の少女たちが将来の夢や日常生活について意見を交換し合った。
企画した日本側の高校生たちはみな高3で受験を控える中、寄付を募って「地下学級」に支援金を送ってきた。「地下学校」では、そのお金で文房具をまかなえたという。「支援もうれしいが、こうして私たちを気にかけてくれて、心が温かくなる」と感謝の言葉が寄せられた。
日本の若者もすごいなと彼女らの行動力に感銘を受けた。私たちの取材がこんなふうに、さまざまなご縁で人をつないでいくことは取材者名利に尽きる。
以下は『毎日新聞』の記事。
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最近の海外ニュースより。
ウクライナではロシアへの「併合」から1年を過ぎ、既成事実化が進んでいるという。
去年9月30日、プーチン大統領がウクライナ東部・南部4州(ドネツク州、ルガンスク州、ザポリージャ州、ヘルソン州)の併合を宣言した。これはロシア連邦議会が承認し、10月5日に4州をロシア連邦に編入するための「条約」の批准法案と国内法改正案にプーチンが署名し、ロシア連邦としての法的手続きを完了した。
それから1年たち、ロシア占領下の地域では、通貨はロシアのルーブルになり、「選挙」なるものが行われ、学校では完全にロシア式の教育が行われているという。厳しい統制下で住民は投票に行かないなどの消極的な「抵抗」を試みているが、指示に従わないと生活上の不利益を被ったり、拘束され拷問を受けるなどの非人道的な扱いをされている。
長期にわたって侵略国の「国民」としての生活を強いられる―どんなに辛いことだろうか。そんななか、アメリカや欧州に「支援疲れ」でウクライナへの支援を止めようという動きが出ていることを懸念する。
いまウクライナが反転攻勢をかけている地域は、11月には地面がぬかるみ12月には凍結して戦線は膠着する。冬を控えて、今月が今年最後の領土奪還の機会となり、ウクライナ軍は懸命に戦うだろう。引き続き支援を続けたい。
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ノーベル賞の季節。生理学・医学賞はカタリン・カリコ氏とドリュー・ワイスマン氏(ともにペンシルベニア大学)が受賞と決まった。新型コロナウイルスワクチン開発の基礎を築いたことが評価された。
カリコ氏はハンガリー出身で、研究予算の打ち切りで職を失い、夫と2歳の娘と共にアメリカに渡った。その後も研究が学会では長らく認められず、資金も得られなくなって、学内で降格されたり、2人が創業したベンチャー企業も失敗したりと挫折を繰り返したが、研究を諦めずに今回の受賞に至ったそうだ。
会見で「私たちは賞のために仕事をしているわけではありません。うまくいかなくても楽しみながら研究しました」と語ったが、彼女の経歴を知ると、心にひびく。
才能のある人を見ると、だいぶ前の「折々のことば」を思い出す。
才能は自然の賜物(たまもの)以上に社会の創造である。それは蓄積された資本であり、それを受取る者はその受託者たるにすぎない。
ピエール=ジョゼフ・プルードン
至言だと思う。以下に鷲田清一さんの解説。
「才能に恵まれた人といない人。その不平等が社会には厳然とある。が、どんな優れた天性も社会から与えられる援助と数多くの先行者や手本がなければ、稔(みの)る前に枯れてしまうと、19世紀の社会思想家は言う。才能は個人の特性=所有物(プロパティ)ではなく、社会の「希望」のために預かっているものである。『所有とは何か』(長谷川進訳)から。」
才能は社会から受託されたものだとの自覚を持つ人は、「オレは才能があるから金も地位も名誉も持つのが当然だ」と尊大になることもない。それが当り前の世の中になってほしいものだ。プルードンのこの本を読んでみたい。
急に寒くなってきたのでご自愛を。