夜9時からNHK BS1でドキュメンタリー「山本五十六の真実」を観る。
夏の「戦争もの」の一つで2時間の大作。見ごたえがあった。以下、番宣。
《連合艦隊司令長官・山本五十六の実像を明らかにする資料が公開された。山本の親友、堀悌吉が保管してきた多数の書簡。そこには三国同盟に反対しながらも、真珠湾攻撃を立案していく山本の苦悩がつづられていた。一方、アメリカは真珠湾攻撃を教訓に航空兵力の拡充を進め、ミッドウェー海戦で日本を破る。公開されたアメリカ太平洋艦隊司令部の報告書からはアメリカ軍の戦略が浮かび上がる。新資料で山本五十六、波乱の生涯に迫る。
http://www.nhk.or.jp/bs/t_documentary/
堀悌吉あての書簡は、大分県の高校教師、安田晃子さんが発見したもので28通あり、60年以上トランクの中に眠っていた。これを、映画『山本五十六』で堀悌吉を演じた坂東三津五郎が朗読するという趣向。
堀悌吉は、小田島の海軍兵学校で山本の同期。兵学校では、堀はトップの成績で、海軍の将来を背負って立つと期待された逸材だった。だが、1930年のロンドン海軍軍縮条約をめぐり、海軍は賛成する条約派と反対する艦隊派に分かれて対立した。「戦争は悪」と考える堀は条約派で、強硬派の艦隊派により粛清され予備役に追いやられた。このとき山本は、海軍上層部のバカさ加減にあきれ、海軍を辞することまで考えたという。
山本五十六は、ドイツ、イタリアとの同盟に強硬に反対し、英米と戦争をすることの無謀さを訴えたが、その意に反して連合艦隊司令長官として戦争遂行を担う立場になってしまった。
書簡には同志にして親友である堀にしか明かせない山本の率直な気持ちがつづられている。
《個人としての意見と正確に正反対の決意を固め
其の方向に一途邁進の外なき現在の立場は変なもの也
之も命といふものか》
番組には半藤一利氏がコメントで登場したが、「命」(めい)という字を見て涙が出たと言っていた。
この戦争はやるべきではないと信じているのに、戦争遂行の先頭に立たされ、真珠湾攻撃を計画した山本。そのつらさは尋常ではなかっただろう。苦悩のなかで、これも運命なのかと自分で自分に言い聞かせているのだろうか。
声高に強硬論をぶつ軍人が主導権を握り、合理的な思考をする人々を排除していく日本の軍に、暴走と敗戦の必然を見る。
まともな軍人は、戦争の大変さを知っているから、開戦には慎重で、文民の方が無謀な場合があると聞いたことがある。
ブッシュ政権時代、軍人出身のパウエル国務長官がイラク戦争に反対してチェイニー副大統領と対立したことを思い出す。
強硬姿勢の言辞ばかりが目立ついまのご時勢だからこそ、こういうドキュメンタリーを見て、戦争のリアリティに学ぶことが必要だと思った。