子どもたちの行動の裏にあるもの

takase222014-08-03

もう8月。猛暑が続く。
私は東南アジアで10年過ごしたせいか、夏の方が調子がいい。もっとも、きょうの暑さはバンコクをしのいでいるようだ。
ゴーヤやアサガオなどを緑のカーテンにしている家をよく見る。いかにも涼しそうだ。こうして日本の家の風景も変わっていく。
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いまニュースになっている高校生の殺人など、子どもたちの理解しがたい反社会的な行為に直面すると、いったいどう考えたらいいのか、とまどってしまう。
アドラー心理学で見ると原理的にはどうなるか。

アドラー心理学では、行為の「原因」を遺伝や過去や環境に帰する「因果論的なアプローチ」をとらない。
例えば、よくニュースで聞く、「いじめが原因で自殺した」あるいは「就活に失敗したので引きこもりになった」という見方はしない。
いじめを受けたり、就活に失敗しても99%の人はそういう行動をとっていないのである。
(ただし、いじめを社会問題として提起し、対策を求める場合に、「自殺のきっかけの一つにいじめがあった」という言い方はできると思う。誰かが自殺しようがしまいが、いじめはなくすべきである)
新聞記事で、放火犯が「むしゃくしゃして火をつけた」という表現をよく見るが、暑くて寝苦しい夜だったことが、放火の「原因」だと言っても意味がないことは誰でも分かる。

アドラー心理学では、人間の行動にはすべて目的があると見る。「目的志向性」が最も重要だとするのである。問題は、人生で遭遇する否定的な出来事を、その人がどう受け止め、どう目標を設定したのかという、価値観や判断にある。
いわれてみれば、当たり前で、とてもリーズナブルな考え方だ。

アドラー心理学では、「子どもの基本的な目的または狙いは、自分の居場所を獲得すること」だとされる。
これがうまくかなえられないと、子どもは「注目」「権力闘争」「復讐」「無力さを示すこと」という4種の不適切行動に出ると言う。
「注目」―わざと悪戯や人に嫌われる行動、場合によっては犯罪を行って注目を得ようとする。罰や恥を受ける方が、無視されるよりましだと思うからだ。
「権力闘争」―周りにいる「重要な他者」(親、先生など)を支配しないと居場所を獲得できないと思い、暴力を含む手段で挑戦する。
「復讐」―権力闘争に負けたと感じると、今度は親や教師の弱みを狙って仕返しに出る。子どもは社会規範に縛られないので、とんでもない行為をすることがある。結果、社会に参加することを否定するようになる。
「無力さを示すこと」―自分はダメなんだと能力もやる気もないことを装って、要求されたり期待されたりすることを避ける。参加しないことで、もっと恥をかいたり困ったことにならなくてすむからだ。
こうした構図で、ドラッグに依存したり、援助交際にはまったり、引きこもったりと現れ方はさまざまだが、子どもたちの「不適切行為」を考えようというのだ。(つづく)
(以上はアレックス・チュウ『アドラー心理学への招待』(金子書房)を参照した)